この白一色の閉ざされた空間で、私は過去の夢を辿る。
残された時間はあと僅か……しかし、記憶の世界に浸るには充分過ぎるほどの時間はある。
何時しか失っていた、心の記憶。
私はひとつひとつ、全てのことを思い出す。
出逢った時のこと。
毎日の生活。喧嘩した事、ふざけあった事、笑いあった事、泣いた事、驚いた事、嬉しかった事、怒った事。
戌吊での事、真央霊術院の事。
怒鳴り声、照れた声、笑った声。
……優しい声。
その全てを思い出す。
そうして私は夢を見る―――幸せな、昔のままの日々を。
現世を二人で歩く夢。
現世の学校に通ってみる。
いや、あの眉毛では現世の学校はあまりに無理がありすぎる―――そこで私は小さく笑った。
二人で共に虚を倒すのはどうだろう?
あいつはすぐに怪我をするから、……私は恐らく、奴の怪我を鬼道で癒すのが主な仕事になりそうだ。
一緒に買い物をして、現世の「食事」を一緒に作る。文句を言いながら二人で食べるのだ。
笑い合う日々。喧嘩も毎日。私からは絶対に謝らない。きっとあいつから謝ってくるだろう、そうしたら私は笑って許してやるのだ。
……幸せな日々。
夢を見る。
叶わないからこそ、私は夢見る。
もう、とうに諦めたはずの――――