昨日の暖かさが嘘のような、冬らしい冷たい風の吹く中、ルキアは恋次を待っていた。
 ルキアは恋次に直ぐにも逢いたかったが、白哉がそれを止めた。ようやく白哉の許可が下りたのは、あの日から2日過ぎてからだった。
 明日は日曜日、当番の者以外は勤務も休みだ。ルキアも休みになっていて、結局3日も休む事になってしまい、ルキアは浮竹と海燕に申し訳ない気持ちで一杯だった。しかし明日が休みだから、白哉もこの日の外出を許可したのだろう。
 逸る気持ちを抑えて、ルキアは通常勤務だった恋次の帰宅時間に合わせて、恋次の家へと訪ねた。
 けれど―――恋次は帰ってこない。
 夕日が沈み、オレンジ色の空が黒く夜の色に侵食されても、恋次は帰ってこない。
 冷たい風の吹き荒ぶ中、ルキアはそれを気にする事もなく恋次を待つ。
 ―――昔に戻ったようだな……
 子供の頃、こうしてよく恋次の帰りを待っていた。
 冬の寒さの中、他の子供達が家に入るようルキアに勧めても、ルキアは恋次が帰って来るまで待ち続けていた。
 怖かったのだ。
 もしかしたら帰ってこないのではと。
 何かあったのではないか、と。
 だから、一瞬でもはやくその無事な姿を確認したくて、ルキアはいつも家の前で、恋次が帰って来るのを待っていた。

『よお、待たせたな』
『遅いぞ、莫迦恋次!どっかで行き倒れてるかと思っただろう!』
『あのなあ、俺がそんなヘマする訳ねえだろうが』
『ふん、私とお前が初めて会ったとき、あの時の醜態はどう言い訳するのだ?』
『お前はいつまでも同じ事を……っ!あれはなあ、あん時だけだって言ってんだろーがっ!』
『どうだかな、お前の莫迦さ加減は相当な物だからな!』
『……んだと手前ェ!』

 そうしていつも喧嘩に発展した。
 だから家の中に入る時は、いつも口論しながら入っていたので、その度に家の中にいた彼らに笑われたものだった。

『ホントに仲がいいよね、れんちゃんとルキア』
『うん、羨ましいよね』
『仲がいいっ!?お前らどこ見てそんな事言ってやがる!』
『そうだぞ、私は嫌いだからな、こんな単純猪莫迦』
『きーさーまーっ!』

 懐かしい、あの日々。
 もう一度戻れるだろうか。
 あんな風に、自然に喧嘩して、自然に笑って―――
 自然に、
 あの言葉を―――言えるだろうか。



 暗闇の中、ここへ向かってくる人影が一つ。
 それは、途中から急に走り出して―――それでルキアはそれが恋次だと気付く。
 『お前の気配なんざ目ぇ瞑ってても解るんだよ』
 その言葉通りに、恋次はルキアに気が付いたのだろう、ルキアへ向かい一直線に走ってくる。
 
 謝ろう、全てを。
 自分が犯した間違いを、全て。

 そうして許してもらえるのならば、その時は―――


「莫迦か、手前ぇはッ!」


 ルキアに届いた恋次の第一声は、本気で怒っている怒鳴り声だった。





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