ルキアはルキアなりに我慢を続けてはいた。
 折角の、しかも久しぶりの逢瀬だというのに、家に着いたその時から話もろくにせず机を借りて書類を作成していれば、恋次でなくとも腹は立つだろう。しかし、朽木家に「書類作成に必要な資料を調べに図書庫に行く」と言って出てきた手前、書類は完成してから帰らなくてはならない。恋次との交際は未だ朽木家には秘密なのだ。口実に使った事はきっちり事実として残しておかないと、どこからどう真実が漏れてしまうかわからない。
 ルキアとて恋次と一緒にいる時間にこんな事をしていたくはない。だからなるべく早く集中して書類を片付けてしまいたいのに、当の恋次が邪魔をする。ルキアの事情は知っているから表立って邪魔はしないが、まず最初にルキアを自分の上に乗せた。足を組んだ恋次を椅子にして書類を書くのははっきり言って落ち着かなかったが、恋次もつまらないのだろうと思い我慢した。肩越しに書類を覗き込む恋次を意識しながら、なんとか集中して書類を作っていく。が、次いでどうやらわざととしか思えない頻度で耳に息を吹きかけられ、更に首筋を唇で辿られ、大きな手が太腿をなぞった時、ルキアの我慢はとうとう限界に達した。
「いい加減にしろ、恋次!!」
 足に張り付いていた手を剥ぎ取って立ち上がったルキアに恋次は、
「つまんねー」
「私だってこんな事したくはない!しかし仕方がないだろう!だから早く終わらせようと必死に集中しているのに、お前は邪魔するような事ばかりを……」
「いや、俺だって手伝おうとしてるんだぜ?けどよ、やっぱお前のうなじが目の前にあるとつい」
「……お願いだからもうしばらく静かにしていてくれ」
「ああ、わかった」
 生真面目に頷く恋次を、胡散臭そうにルキアは眺めたが、気を取り直して書類へと向き直る。
 しばらく、ルキアが走らせる筆の運ぶ音だけが聞こえていた。
 そう、しばらく。つまり、わずかの間。
「……恋次っ!!!」
「いやあ、お前を乗っけたまんまじゃ静かにしてんのは無理だ」
「乗っけてくれと頼んだ覚えはないっ!」
「頼んでなくてもお前の身体全体で言ってるのが聞こえるんだよ、『恋次に触れていたい』ってな」
「………」
 ルキアのその目つきは、明らかに「莫迦かお前は」と冷たく言い放っていたが、ふう、と一つため息を吐くと、
「自壊せよロンダニーニの黒犬、一読し、焼き払い、自ら喉を掻き切るがいい…」
「お、お前!!」
「縛道の九、撃!」
 詠唱が終わった途端、恋次の腕は見えない何者かに捻り上げられたように後ろ手に回り、身体の自由が利かなくなった恋次はそのまま床にどうと倒れこんだ。
「こら!何しやがる、解け!」
「いいからそこで静かにしていろ、莫迦者」
 ルキアの鬼道は、真央霊術院に在籍中は一組の人間すら凌ぎトップクラスの腕前だった。そのルキアが本気で恋次に術をかければ、恋次に解ける筈はない。口だけは自由なのでぎゃーぎゃー叫ぶ恋次に、更に口封じの術をかけると、部屋は理想的な静けさを取り戻した。
「少しの辛抱だ。そこで静かに待っておれ」
 ルキアはそう恋次に言うと、机に向き直り一気に書類を仕上げていった。





 集中すればルキアの仕事は速い。20分程度で全ての書類を作り終えた。これで後は自由な時間だ。
 ―――恋次の機嫌が治れば、だが。
 ルキアはため息を吐きつつ、立ち上がって後ろを見た。恋次はこちらに背を向け寝転がっている。
「待たせたな。もう終わったぞ」
 言葉と同時に術を解除する。同時に恋次の怒鳴り声がするかと思い身構えたが、恋次は暴れる事も叫ぶ事もせず、静かに身体を起こした。何となく不安になりつつ、「恋次?」と声をかけてみる。
「決めた」
「何を?」
 微笑む恋次に嫌な予感を覚えつつ、ルキアがそう聞き返すと、案の定恋次はとんでもないことを言い出した。
「今日の俺はお前の下僕だ」
「はあ?」
 呆気に取られてルキアは聞き返した。倒れた拍子にどこかを打ったのだろうか。ルキアの瞳に僅かだが不安の色が混じる。
「いや、縛られてる最中、こんなのもたまにはいいか、ってな。新たな楽しみ発見?っつーか」
「……何を言ってるのかさっぱり解らぬ」
「つまりだ。お前が主人、俺が下僕」
「だから解らぬ」
「何でもお前の言う通りにするって事だよ。命令すればな」
「何でそんな事をしなくてはならぬのだ。命じる事などないぞ」
「まあまあたまにはいいじゃねえか。それもまた一興、って奴だよ」
 恋次の言葉にルキアはしばし考え込む。
 恋次にはいつも振り回されてばかりだ。海燕との関係を誤解されて明るい中でされるわ、兎の格好をさせられた挙句されるわ、外に行けば外でしようとするわ、思えばルキアは恋次に本当に振り回されっぱなしだ。
 たまには私が恋次を振り回すのも悪くはない。
 ルキアはそう考え、「確かにそれも一興だな」とにやりと笑った。




「恋次、甘いものが食べたい」
 早速そう命じてみると、「はい、お嬢様」と恋次は慇懃に頭を下げる。
「何だ、それは」
「何がでしょう?」
「喋り方と呼び方」
「私はお嬢様の召使ですから」
「…………まあ、いいが。とにかく甘いものを持ってきてくれ」
「はい、お嬢様」
 つい、と立って台所へと向かう恋次の背中を見送って、ルキアは「さて」と考える。
 焦らして焦らせて、弄んでやる。
 いつも振り回されている鬱憤を、今日ここで晴らしてやる。
 ルキアが来ると言う事で用意していたのだろう、恋次は小皿に彩りよくあんみつを盛って、ルキアの目の前に置いた。そうしてまた一礼する。
「呆、とするな。何をしている」
「何か?」
「私に食べさせろ。お前は召使だろう」
 机に肘をついて、ルキアは悪戯っぽく恋次を見上げる。「私は重いものは持てないのだ」と言って匙を指差した。
「早くしないか、私は気が短いのだぞ」
 あーん、とルキアは目を瞑って小さな口を開く。ほんの僅か、恋次がたじろいだ気配に気付いて内心にやりと微笑んだ。
「……どうぞ」
「ん」
 匙が口に運ばれる。ルキアはぱく、とあんみつを口にした。
「うむ、美味いぞ」
「ありがとうございます」
「しかし、この座布団は座り心地がイマイチだ。……そうだな、お前、私の椅子になれ。先程もしていただろう、ただし今度は私にちょっかいを出すなよ」
 返事を待たずに恋次の膝にちょこんと座ると、ルキアは再び口を開ける。その口へと、恋次は親鳥のように甲斐甲斐しく匙を運ぶ。ぱく、と匙を咥え様、上目使いに恋次を見れば、柄にもなく恋次は照れているようだ。わざと身を摺り寄せると、恋次の腕がルキアの腰に回された。
「椅子は動かない!」
「………はい」
 くくく、と意地悪く笑いながら、ルキアは両手を合わせて「ご馳走様でした」と行儀良く挨拶した。恋次椅子に座ったまま、うーん、と伸びをする。
「ずっと同じ姿勢で書き物をしていたせいか、なんだか身体が痛い。少し横になる故、膝を借りるぞ」
 ルキアは恋次の膝から降りると、その膝へ頭を乗せてころんと横になった。真上にある恋次を、殊更挑発するように見上げて笑う。
 今までルキアが恋次に、こんな風に煽るような態度をした事はない。勿論ルキアは恋次が手を出さない、という前提で挑発的な態度をしているのだろう。普段、こんな誘うような目をして恋次を見たのなら、その場でルキアは押し倒されているに違いない。
 これ程蠢惑的に魅惑的な表情をルキアが浮かべる事が出来るとは、正直恋次は意外だった。妖しげな色香、と言っていいだろうその媚態。
 こっそり笑みを浮かべる恋次だった。
 ルキアの魂胆は見え見えだ、けれどそれに乗せられ負ける気もない。
 元々この「お姫様と下僕」を始めたのは恋次にも魂胆があって、つまりは鬼道で縛り付けたルキアへのお仕置き行為の前振りなのだ。
 そろそろ始めるか、と恋次はほくそえむ。
 
 お仕置き開始。





「お飲み物は如何ですか、お嬢様」
 何気ない風を装って、恋次はルキアにそう尋ねた。気持ち良さそうに横になっていたルキアは、
「ん?……そうだな、もらおうかな」
 そう答えた。
 失礼します、とルキアの頭をそっと持ち上げると、恋次は再び台所へと立つ。グラスと氷を用意、そこに注ぐのはルキアの好きなフルーツジュース。
 ちょこん、と素の様子で座っているルキアを見て、恋次は「やっぱ普通のルキアも可愛いよなあ」と思う。結局どんなルキアもルキアというだけで愛しいのだ。
「ありがとう」
 受取ろうと手を伸ばすルキアを恋次は制した。「?」と疑問符を浮かべるルキアの前で、恋次はグラスの中身を自らの口に含む。
「ああーっ!私の……っ!」
 抗議の声は、抱き寄せられて止まった。不意打ちに驚くルキアの唇に恋次の唇が重なり、そこから冷たい液体が口移しにルキアの喉へと流れ込む。
「もっとですか?」
 既に先程までの蠢惑な仮面はない。赤くなった顔を背けてルキアは無言だ。
「そうですか、もっとですか」
「何も言っていないだろう!」
「いやこれだけじゃ足りないでしょう、どう考えても」
 再びグラスの中身を口に含んで、ルキアの唇に重ねる。今度は全てを流し込んだ後も、唇を離さずに舌を絡めた。ルキアが「んんっ……」と甘い声を上げる。
 氷で冷やされた冷たい飲み物はルキアと恋次の口内の温度を低下させ、その後に絡めた舌の熱さをより明確に二人に伝える。いつもと違う感覚。いつもと同じ激しさ。それだけで身体が震えてしまう、恋次とのくちづけ。
 恋次の手がいつの間にか腰に回って引き寄せているのにも、ルキアは気がつかない。意識は全て恋次の与える刺激に向いている。うっとりと目を瞑り、時折漏れる吐息も甘い。
「ご満足頂けましたか」
 つ、と不意に身体を離して恋次はルキアの顔を覗き込んだ。ルキアの目元はほんのりと赤い。熱に浮かされたような目の色、僅かに開いた唇、微かに震える身体。……既に見慣れた、ルキアの欲情している、姿。
 恋次の前でぺたりと座り込みながら、ねだるように恋次を見上げる。ルキアが恋次にどうして欲しいのかは勿論気付いているが、恋次はわざと無視して立ち上がり、空になったグラスを流しへと運んだ。
「れ、……」
 呼び止めようとするルキアの声も聞こえない振りをする。
 グラスを片付けてルキアの前に戻れば、ルキアは縋るように恋次を見上げている。恋次が煽るだけ煽って、不意にその与えていた刺激を止めたのだ、ルキアの身体は自分では制御できない震えに、欲望に支配されている。
「どうしました?様子がおかしいですよ、お嬢様」
 ルキアの髪を撫でる。それだけでルキアは「ふ…っ!」と声を洩らして、ぴくんと小さく身体が跳ねた。
「なんだか熱があるようですが、……大丈夫ですか?」
「そうじゃないって解ってるくせに、お前は……っ!!」
 怒りと切なさを滲ませて、縋りつくようにルキアは恋次の背中に手を回す。
「お前が熱くしたくせに……!何とかしろ、莫迦者っ」
「何とかと申されましても、私はただの召使ですから」
 しれっと答える恋次に、ルキアは悔しそうにぎろりと睨む。
「貴様、何を考えている?」
「いえ、私はお嬢様の命じる事でしたら何でも致します。お嬢様が『命じる』のでしたら」
 かあ、とルキアの頬が赤くなる。対して恋次は余裕の表情でにやにやと笑う。
 つまり。
 ルキアから、言わなくては。
 恋次は何もする気はないのだ。
「この……っ!!」
 振り上げた手は掴まれて。「危ないですよ、お嬢様の手の方が傷めてしまいます」と恋次はルキアの背中へその両手を回して縛めた。
 ルキアの小さな手は、恋次の片手で易々と動きが封じられる。両の手を後ろ手に回した格好で、ルキアは恋次の弄るままに、髪に耳に瞼に喉に鎖骨に、恋次の唇を受ける。
「んんっ……」
 けれど、それ以上恋次は何もしない。
 触れて欲しいと主張する胸の桜色の頂も、既に潤って恋次を待っている場所も、恋次はわざと触れようとしない。
「お前……っ!やっぱり怒ってるんじゃないか……っ!」
「とんでもない、私はお嬢様の忠実な下僕ですから」
 ぺろ、と耳朶を舐め上げると、ルキアは「っ!」と息を呑んだ。
 呼吸が速くなるのをルキアは自覚する。そして、悟る。
 もう、限界だ。
 このままでは、おかしくなってしまう。
「れ、恋次……」
「はい、何でしょう?」
 意地悪く見下ろす恋次の顔を悔しそうに見上げながら、ルキアは小さく呟いた。
「………て」
「申し訳ありません、聞こえないのですが」
「して……っ!」
 恥ずかしさに涙を浮かべながら、ルキアは懇願した。
 その言葉を耳にして、恋次は嬉しそうに楽しそうに答える。
「喜んで」
 次の瞬間、ルキアの身体は恋次の身体の下にあった。




 散々に焦らされた身体は、求めていた刺激を与えられ、一瞬にしてルキアの思考を奪い取る。自分が上げている声の大きさも、ルキアは自覚がなかった。
 恋次がルキアの胸を軽く噛む。途端に身体を突き抜ける痺れるような快感に、ルキアは「あっ!」と身を仰け反らす。
 気持ちの良さに、自然、涙が零れる。快感の度合いは身体を重ねるごとに大きくなる。最初の頃に感じていた恐れも、今では全く感じない。逆に自ら恋次を望んで欲しがっている身体を、ルキアは持て余している。
 恋次の指がルキアの着物の裾を割って入り込み、殊更焦らすようにゆっくりとそこを撫で上げ、軽く叩き、その反応を見ながら、恋次はルキアの一番敏感な場所を探り当てる。
「や、……やぁっ……」
 恋次の指が触れるたび、恋次の指がルキアの中で蠢くたび、ルキアの身体はぴくんぴくんと痙攣するように跳ねる。その恋次の指はルキアの中から溢れる蜜で濡れていた。ぺろ、とその指を舐める恋次を目にして、ルキアの顔は更に赤くなる。
「莫迦、そんな所を私に見せるな」
 羞恥からか、ルキアの思考は正常に働き出す。立てた膝に力を入れて恋次の指の侵入を拒もうとするルキアに恋次は頷き、恋次はルキアを抱え上げた。
「……やっ!な、何っ!?」
「見たくないと仰ったので」
 恋次はルキアの身体を壁に寄りかからせ、ルキアの右足を持ち上げると自分の肩に乗せた。そのまま恋次は床に膝をつく。
「莫……っ!やめろ、何をしている……っ!」
 確かに自分では見えない。ルキアは恋次を見下ろす形になっている。恋次はルキアの前にひざまづき、高々と足を持ち上げられたルキアの……その場所を、目の前にしている。
「莫迦、下ろせ!」
 恥ずかしさに暴れようとしたルキアの腰を、恋次は掴んで固定する。恋次の頭が沈み、自分に近づく、そう認識した次の瞬間。
 強烈過ぎる感覚が、頭の芯を直撃してルキアは硬直した。何かと悟る前に、声が溢れる。再び思考回路はショートし、ルキア自身も何を言っているのかわからずに、頭を左右に激しく振りながら、言葉にならない喘ぎ声を溢す。
「うあ……っ!やあっ、なに、いやだ……っ!いや、れんじ……っ!」
 ぴちゃ、という音と共に暖かいものが自分に触れている。それが恋次の舌だとようやく悟って、ルキアは「いやだ!」と―――叫んだつもりだったが、実際に口にしたその響きは、ひどく小さなか弱い声だった。
 恋次の舌が、中まで侵入する。その上の一番敏感な―――ルキアの羞恥心とは反して、触れて欲しいと震えているその部分はわざと舌では触れずに、恋次は周囲を愛撫する。
「ぁ……あぁ……ぁ……」
 波のように、大きく、小さく。
 ルキアは途切れ途切れに声を上げる。
 行為を止めさせようとルキアが押さえた恋次の頭は、今では逆に、恋次の行為を求めているようにしか見えない。
 その、小さな悲鳴のような声に、恋次はルキアの絶頂が近いと悟り―――
 舌を離した。
「や、いやあっ!!やめないで、いやだあ……っ!!」
 錯乱したようにいやいやと首を振るルキアに、恋次は愛しそうに意地悪く笑みを向ける。
「どうぞご自身で」
「………え?」
「お嬢様の望むままに動いて下さい、お嬢様ご自身で」
「………!!」
 立ったままのルキアを抱き上げて恋次は腰を下ろした自分の上に座らせる。目の前に上気した顔のルキア、その瞳に浮かぶ熱の色。
 理性を駆逐され、本能だけの存在にさせられて。
 ―――この男は……っ!
 それでも、僅かだけ、ルキアは恋次を睨みつける。
 ―――『自分に命じろ』と恋次は言いながら、事実は私に命じているのだ。
 その思惑は見越せている、けれど今はもうそれに従うしかない。
 狂いそうな身体を鎮めるには、もうそれしか方法はないと解っていたから。
「………見るな、よ」
 そう恋次に命じると、ルキアは自ら恋次の上に身体を沈めた。
「………はあっ……」
 充分潤ったルキアの内部は、抵抗なく恋次をルキアの奥まで導く。重力のままにルキアの身体は沈み込み、恋次を深く感じ取る。
 恋次の両肩に手を乗せて、ルキアの身体はぎこちなく動き出す。―――それも最初の内だけで、すぐに快感を得るために積極的に動き出した。
「私を見るな……っ」
 懇願しながら、ルキアは動く。こんな自分は見られたくない、恥ずかしくて死にそうだ。
 けれど、もう制御が利かない。
 快感を、快楽を貪る自分を見られたくなくて、ルキアは恋次の頭を胸に抱え寄せる。恋次の手が腰を支えているのがわかった。ルキアの動きを助けるように。
見るなと言われて恋次が見ない訳は勿論なかった。元々このルキアの顔が見たくて、自ら動くルキアが見たくて考え付いた事だ。
 目の前に、上気したルキアの顔がある。堅く目を瞑り、小さく開いた唇からは、絶えず喘ぎ声と恋次の名前が零れ落ちる。
 ルキアの内部は、軟らかく絡みつくように恋次を包み込み、締め上げ、貪欲に恋次を欲した。そのルキアが容赦なく与える刺激に恋次も思わず達しそうになって唇を噛む。まだ終わらせたくなかった。もっとルキアを、乱れるルキアを見ていたい。
 背中に手を回して、下から上へと撫で上げる。「あんっ!」と声を上げ、ルキアは口に自分の右手を持っていき、声を洩らすまいとしたのか、握った人差し指を噛んだ。その手を恋次は掴んで口元から離す。替わってルキアの口に自分の指を挿れた。ルキアの両手は恋次の右手を掴み、忘我の表情で恋次の指を口に含む。弄るようにルキアの口中で指を動かすと、ルキアは音を立てて恋次の指に舌を絡める。
「ん……っ、ん、……」
 その口元から銀の雫が溢れて、恋次の腕を伝って落ちる。
 充分にそのルキアの猥褻な表情を楽しんで、恋次は指をルキアの口から引き離した。「あ、」と引き止めるようなルキアの奥の更に奥へと、恋次は己を突き立てる。
「れんじ、れんじ……っ!!」
 仰け反った胸元に恋次の唇を感じて、さらに高みへと駆け上った。悲鳴のような声が漏れる。恋次の肩に置いた手が、きつく爪を立てる。
「なまえ、よんで……」
 近づく最後に、ルキアはうわ言の様に呟いた。
「ルキア」
 愛しげに、頭上で乱れる愛しい女の顔を、普段からは想像も出来ない程の、蕩けるような表情を浮かべるルキアを恋次は見上げる。
「ルキア……」
 ルキアにこの表情をさせているのは自分だと。
 ルキアのこの表情を目にするのは自分だけだと。
 恋次は心ゆくまで確かめる。
「もう、………!」
 ルキアは一際大きく身体を震わせ、それに合わせて恋次は自らを解放し、
「………っ!!」
 内部に放出された熱を感じ、声にならない声を上げて、
 ルキアは恋次の上に崩れ落ちた。








「…………詐欺師」
 ぐったりと身を恋次の上に横たえて、ルキアはまだ荒い息の下、そう呟いた。
「何が私の言う事を聞く、だ。―――結局自分のしたいようにしたくせに」
 ルキアは恋次の胸に顔を埋めて決して恋次を見ようとはしない。
 ―――恥かしくて恥ずかしくて恥ずかしくて、もう二度と恋次が見られない。
 そんなルキアの胸中を知らず、恋次はいたくご機嫌だ。
「お前が悪いんだぜ、俺を放っておくからよ」
「子供か、お前は」
 悔しそうに悪態をつく今のルキアは、声だけ聞けば普段通りのルキアだが、目を向ければ余韻のままに乱れた髪のルキアが腕の中にいる。
 本当は、いつでもこうしていたい。
 閉じ込めてしまえばいいのだろうか。
 抱きしめて、逃がさない。離さないで、腕の中にずっと。
「……無理だよなあ」
「……何がだ?」
 微かに不安そうな声が胸でする。ルキアはそういった言葉に敏感だ。離れている時間が多いせいで、負の響きを持つ言葉には過剰に反応する。
「いや、……俺、死神辞めてお前ん所で働こうかと思ってよ」
「………は?」
「さっきも結構俺、上手く出来てたろ?召使。だからお前付きの召使になろーかと」
 ルキアの肩が揺れた。どうやら笑っているようだ。
「………無理だな」
「そっかあ?」
「大体、私付きに男はいない。男はみんな兄様付きだよ」
「げ」
「それでよかったら来るがいい。家に口は利いてやるぞ」
 くくく、と喉を鳴らして笑うルキアを力任せに抱きしめる。
「こら、苦しい!」
「やっぱお前が来い。俺が隊長になったらな、遠慮なく貰いに行くし」
「―――何時になる事やら」
「なめんなよ?あっと言う間だからな、その時は―――」
 恋次は胸に頬を寄せているルキアを引き上げて、まだ恥ずかしそうに顔を背けるルキアのその耳に囁く。
「―――今日以上のことをしてもらうぜ」
 あーんな事や、こーんな事。
 まだまだ見たいルキアがたくさんあるのだ。
「絶ッッッ対行かない!!!」
「何だとコラ!」
「……莫迦、ちょ…っ!!やめろ、莫迦恋次!」
「仕置き第二段」
「何でお前はそう、体力ばかり……っ!」
「体力ばかりぃ?失礼な奴め、超絶技巧を見せてやる」
「見たくない!莫迦!こら、やめろ!」




 ルキアの抵抗の声はまたすぐに甘い声へと変わる。
 逢えない時の切なさを埋めるように、ふたりはいつまでも甘い時を過ごしていた。
  







どうだ―――っ!!(爆笑)

のっけから失礼致しました、まずはお礼を申し上げなくてはなりませんね。


この度はアンケートにお応えいただきまして、ありがとうございました!!!
本当にたくさんの方にお応えいただきまして、とても嬉しかったです。


実はこんなにお答えいただけると思っていませんでした(笑)
具体的に色々記入していただいたり、感想いただいたり、ネタを貰ったり(笑)
ありがとうございますー、またぜひやってみたい!!


さて。
アンケートお礼SS。

「お姫様と下僕」です。
私、このお題を見たとき、素で「女王様と下僕」だと思ったんですよ(笑)お姫様だったのね(笑)
で、下僕。下僕恋次(笑)彼は結構豆々しいと思うのですが…。
それなのに何故かこんな展開に。
やっぱり私は恋次×ルキアで、ルキア×恋次ではないんだ!!(笑)


そして今回の私的テーマは
「騎乗位」
ああまた大きな声で(笑)
あれは恥ずかしいでしょう、思いっきり顔見られるもん。だから男の人は好きなのだろうか…。
他にも書きたいテーマは多々あります、「フ○○」やら「バ○○」やら。ああ、ヨゴレな自分が愛しいわ(笑)あ、でももう他に浮かばないわ……あ、拘束とか監禁とか?
あ、待って、引かないで!!(笑)


パスワードがなくては入れない、という事でまあこれは一種の隠しページですね(笑)
なので思いっきり羽目を外して見ました。
……どうでしたか?
やりすぎ、まだまだ、OK!、何でもいいのでご感想くださいませ。
掲示板、メール、拍手、どれでもOKです。
よろしくお願い致します。感想いただけるのはすごく嬉しいので!



しかし、このレベルの話を私はやっぱり普通に置けないよ(笑)恥ずかしくて!(何を今更)



では、本当にありがとうございましたv
このSSが、ちゃんとお礼になっていたらよいのですが……。


2005.4.9  司城 さくら


y+」のユメ様より、「お姫様と下僕」の続き創作を頂きましたv
その後のらぶらぶな二人です、ありがとうございますー!!
→「仕返し





















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