「他人に言ってみたい言葉、というのはたくさんあるな」
天気のいい昼休み、ルキアは六番隊副隊長を引き連れて、ルキアは見晴らしのよい丘の上に腰を下ろしている。膝の上には竹の皮に包まれたおにぎりが2つ。隣に座る恋次の膝にも同じように竹の皮に包まれたおにぎりが4つ。名門朽木家の令嬢と護廷十三隊の副隊長にしては質素だが、二人は特に気にした様子もなく美味しそうに食べている。
「例えばどんな言葉だよ」
竹筒のお茶を口に含んで恋次は問い返した。ルキアは「ん」と首を傾げてから「そうだな」と口にした。
「どうしたらそんなに無駄にでかい身体になれるのだ、とか」
「…………へー」
「なんでそんな変な眉毛にしたんだ、とか」
「…………」
「なかなか言えぬな、本人には」
「言ってんじゃねーか!!」
突っ込む恋次の言葉など聞こえないように、ルキアは「他にも」と視線を空へと向ける。
「あの卍解の衣装はいただけないな、とか」
「知るかよ俺が考えたわけじゃねえ!」
「150も歳下の一護と随分気が合うな、とか」
「それはあれか?精神年齢が低いって言いてえのか?」
「戦闘では負けた数のほうが多いのはどういうことだ副隊長殿?とか」
「はっきり言いやがったな畜生!」
「……可哀想だな」
「一転哀れまれた!!」
「……と、まあこんな風に言いたくても言えぬ言葉がたくさんあって、何となく胸がもやもやとするのだ、私は」
「今日で随分すっきりとしただろーよ!」
草の上に不貞寝する恋次の耳に、「いや……」というルキアの溜息混じりの声がする。
「一番言いたくて言えぬ言葉があってな……それを言えずに私はずっとすっきりせぬ」
「あーもう言え言え言っちまえ」
「ふむ……戌吊の頃から言いたかったことなのだが」
「もうどんな罵詈雑言でもかまわねーよ、こうなったら全部言っちまえちくしょー」
ルキアに背を向けてぶつぶつと呟く恋次へ「そうか、では」と頷きルキアは小さく息を吸い込む。
「私はお前が―――」