手放しで泣くチャッピールキアを放っておくことも出来ず、恋次は困ったように「おい」と声をかけると、チャッピールキアはしゃくりあげながら「酷い、酷いピョン!」と更に泣き崩れた。
「私の運命の人だと思ったのに!あんなに胸がどきどきしたのに!あのどきどきが違ったら、もう私は何を信じればいいのか解らないピョン!私の運命の人はいないのかもしれないピョン……!」
うわあああん、と、ぺたんと座り込んで天を仰いで泣くチャッピールキアに、恋次ルキア一護の三人は途方に暮れたように顔を見合わせた。
「どうするよ?」
「お前が泣かせたんだからお前が何とかしろよ」
「俺の所為かよ?!」
「うむ、お前の所為だな」
埒も無い事を言い合う三人の前に、「遅くなったピョーン」という能天気な声がして三人は振り返った。
「恋次様置いていくなんて酷いピョン」
「「「………………」」」
無言。
三人が三人とも無言。
ただ、恋次の無言は「何でここに来るんだ手前」という怒りの無言で、ルキアと一護の無言は、必死に笑いを堪えている無言。
ルキアと一護の肩が小刻みに震えている。<笑いの為
恋次の肩が小刻みに震えている。<怒りの為
「どうしたピョン?」
「どうしたじゃねえ、なんでここに来るんだ莫迦野郎!!」
「莫迦野郎は酷いピョン、俺は恋次様の身体を護る義魂なんだから、闘いの終わった恋次様を追うのは当然だピョン」
「ピョン言うな!!!」
ここで、耐え切れなくなったルキアと一護が、辺りに大きな笑い声を響かせた。
「ピョン!恋次の顔して『ピョン』!!!」
「……か、可愛いではないか、笑うな一護!」
「ってお前が一番笑ってんじゃねーか!」
「……恋次が『ピョン』……い、痛い、お腹が痛い……」
腹を抱えて笑い転げる二人を忌々しげに睨んだ恋次の表情が驚きのものへと変わった。
気付けば、チャッピールキアの泣き声が聞こえない。
そちらへと目を向ければ、チャッピールキアは大きな目を見開いて、じっと恋次の義骸に入った義魂(便宜上、以下チャッピー恋次と表記)を見詰めている。
その視線に気付いたチャッピー恋次も、じっとチャッピールキアを見詰めた。
「……?」
何だ?と二人を見遣る恋次の視界の中で、チャッピールキアが立ち上がった。
チャッピー恋次が一歩を踏み出す。
「って、ええええええ!?」
愕然とする恋次の目の前で、チャッピー恋次とチャッピールキアは、ひし、と抱き合った。
「見つけたピョン……!」
「俺も見つけたピョン……!!」
「私の運命の人、たった一人の相手だピョン!」
「俺の片羽、マイスウィートハート……!」
「ま、マジですか!!!」
思わず驚愕の叫びを発する恋次のその声に、ルキアたちも今何が起こっているのか把握して驚きの表情を見せる。
「え、何、そうなった訳?」
「ど、どうするのだ恋次!?」
うろたえるルキアに、恋次は何となく疲れた表情で、「ま、なんとかなるんじゃねーの?」と投げやりに呟いた。
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