「何とかなるって、お前、そんないい加減な……」
困ったように恋次に言うルキアの目の前で、チャッピー恋次とチャッピールキアは相変わらずひしと抱き合って、潤んだ瞳で互いの目を見詰めている。
何かを囁くチャッピー恋次。
照れたように笑うチャッピールキア。
その姿は、よく駅のホームや改札口にいるカップルと同じ。
周りの事など無視して、相手だけをじっと見詰め。
くすくすと笑い、視線を絡め、腰に手を回し、愛の言葉を囁きあう。
ホント多いよね、こーゆうカップル。
今朝もさ、出勤前に駅の改札の前でさ、柱にもたれていちゃいちゃしてるカップルいたんだよね。
朝からすごいよね。ってかあんた達仕事は?え?何で朝から一緒にいる訳?
その後、仕事場近くの横断歩道で信号待ちしてたらさ、二人乗りした高校生のカップルが、止めた自転車の上でちゅーしててさ。
……朝から元気だよねえ……ってか勉強しなさい。君たち。
なんで目撃した私の方がバツの悪い思いをしなくちゃいけないんだろう。
……あ、ごめん。
話の続き。
あ、別に羨ましい訳じゃないよ?ホントだよ?ほ、本当だってば。
あ、話の続き。
「大好きだピョン」
「俺も大好きだピョン」
「私の王子さまだピョン」
「俺の愛するただ一人の女だピョン」
髪に触れ、頬に触れ。
チャッピー’sは二人の半径1メートル内をピンク色に染めていく。
「……どうするんだよ?」
「いや俺に振るなって」
力尽くで引き離すか、それとも強制的に義魂を抜き取って自分の身体に戻ろうか、と考える恋次と一護の耳に、「ああああっ!!」というルキアの切羽詰った悲鳴が届いて「如何した!?」と振り返った。
「あ、莫迦、見るな!」
「「…………」」
「こら止めろお前達!!離れろ、何をしている!!」
駆け寄ろうとした途端、背後から腕を掴まれてルキアはその手の持ち主を睨み付けた。
「放せ恋次!」
「いやもうちょっと見てぇな俺」
「莫迦なこと言うな、莫迦!」
「いや俺もちょっと見……」
「一護まで何を言う、恋次に毒されるな阿呆!」
三人の視線の先、そこには。
唇を重ね―――しかも、フランス映画さながらの、深く激しいディープなくちづけをかわす、チャッピー’sの姿があった。
「うわ……すげ……」
「これが大人ちゅー……」
「こら莫迦者共っ!見るな、お前ら!……お前達も!公衆の面前で何をしている、離れろ、莫迦!」
勿論愛の世界を築いているチャッピー’sにはルキアの声は聞こえない。
唇を離し、抱き合い、再び口付ける。
チャッピー恋次の手が、チャピールキアの制服のスカーフを外す。
チャッピールキアの手が、チャッピー恋次の制服のボタンを外す。
「……お前ら、な、何をする気だ……」
蒼ざめるルキアとは逆に、恋次と一護は赤くなっていく。
「おいおいスゲーな」
「うーん、勉強になるぜ」
「と、止めろ!あいつらを止めろ!恋次、一護!!」
「いやあ、なんか勉強になるし。俺達主演のAV見てるみてぇでおもしれぇ」
「(……何でAVなんて言葉知ってるんだろう)」←一護
「うあああ!や、やめろお前達!何処を触っている、や、やめ……!!」
「「うおおおおおおお!!!!!」」
チャピー恋次が、チャッピールキアのブラウスのボタンを外し、胸元に唇を寄せ吸い上げると、チャッピールキアの口から、甘い、切ない声が上がる。
縋るように持ち上げられたチャッピールキアの白い手が、チャッピー恋次の髪に触れ、愛しげに抱き寄せる。
仰け反ったチャッピールキアの身体の動きに合わせ、細い足が、チャッピー恋次の体の横でびくんと跳ねた。
チャッピー恋次の身体はチャッピールキアの両足の間に割って入るように位置している。チャッピールキアの身体を支えながら、チャッピー恋次の手が、制服のプリーツスカートのひだの下をくぐり、その拍子に夜目にも白いルキアの足が、太腿まで露わになる。
チャッピー恋次の指が、奥の、下着に包まれたそこに触れた。
チャッピールキアの声が、一際大きなすすり泣きに変わる。
「う」
意識を目の前に集中していた恋次は、ルキアが妙な声を上げた事で我に返った。
掴んでいるルキアの腕が、小さく震えている。
腕だけじゃなく、身体全体が震えている。
「ルキア?」
名前を呼ぶと。
「うええええええっ」
「うわ、泣いてるし!」
「や、やなのに、こんなの、私は、いやなのに、恋次の莫迦……っ!」
「わ、悪かった!な?悪かったから泣くな!」
「止めて、って、言ったのに……私が、止めて、って言ったのに……っ!」
「止める!今すぐ止める!泣くな、な?……ほら一護!!さっさとあいつら止めて来い!!」
「ああ?」
「いいから早く止めて来い!!」
「何だよ全く」
「わ、私の言う事、お前は、全然聞いて、くれ、なくて……いやだ、って、言ったの、に……!う、うえええええん」
「悪かった!ホント悪かった!!謝ります、ホントごめんなさい!!」
子供のように泣きじゃくるルキアを胸に抱きしめてひたすら謝る恋次と、その胸の中で駄々をこねるようにしがみついて泣くルキアと、大人の愛の世界を繰り広げつつあるチャッピー恋次とチャッピールキアに挟まれて、一護は呟いた。いや、叫んだ。心から。
「やってられるか!!!」
翌日。
恋次とルキアは揃って校長室へと呼ばれていた。
義骸は一般人の目に普通に映る。
あれだけ堂々と道端で破廉恥行為を、しかも制服で行っていれば、目撃者は耐えかねて学校へと通報するだろう。
即ち。
停学一週間。
「恋次の莫迦ッ!」
「俺の所為かよ!?」
二人の口論は、果てしなく続いた。
拍手用に書いたのですが、思いのほか好評で(笑)続きを、というリクエストが結構ありまして、私もその気になったのでこちらにもアップ。
そのうち続きを書きますのでー。
2005.12.29 司城さくら