昔からあんたは掴みどころがなくて
その度に振り回されていたあたしは
いつからかもう、振り回されることに慣れている振りをして
あんたの言葉を聞き流して
あんたの心を見ない振りして
だから今あたしが
あんたが何を思っているのか
あんたが何を望んでいるのか
わからなくなってしまったのは
多分あたし自身の所為なのだろう。
振り回されたくなかったのは
あんたがあたしのことを何とも思っていないと
あんたがあたしを振り回すたびに
そう思い知らされたから
だから、あんたの言葉を聞き流して
あんたの心を見ない振りして
あんたの全てが見えなくなってしまった。
けれど、それは
あたしは
自分の言葉を聞き流して
自分の心を見ない振りして
あんたへの想いを無視して
振り回されたくなかったから
あたしがあんたへの想いで
自分を見失うのが
ただ怖かっただけなんだと
今更気付いたって
どうして謝ったりしたの。
永遠に離れるその瞬間に、
どうしてあんたは素直な言葉をあたしに送るの。
今更、そんなことを言ったって
もう、時は戻せないのに
あんたの言葉を聞かなかったあたし
あんたの心を見なかったあたし
あんたの言葉を聞きたかったあたし
あんたの心が欲しかったあたし
けれど
あたしはあんたに何とも想われていないと
あたしはあんたを囲む他の人たちと同列だと
知るのが怖くて
心を隠して
そんなあたしに
どうして最後に
謝ったりしたの。
その一言で
あたしをまた振り回して
あたしはまた振り回されて
あんたへの想いに
こうして
惑い苦しんで
心だけでなく姿すら
あんたはあたしに見せない気なのね
そうしてあんたは
あたしの心を縛り付けてしまう。
あんたの
声が、姿が、心が、
あたしの手の届かない場所へ行ってしまった
あたしは独り、ここであんたへの想いに打ちのめされる。
あんたが、見えない。
SIDE 「乱菊」
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