08/30(Sat) 20:28:44 えせばんくる
ジオ…サイド…――。
そんな言葉が右から左に通りぬけた。
聞いた事があるようなないような。
誰かがつぶやいていたような――。
そう、誰かが。
そんな風に思考を巡らしたって身体の方はそんな脳の動きについていかない。
だるくてだるくて、脳を動かすのも面倒。
細く目を開いて見ると天井がある――近い。
背中が安定してて、気分はいい。ただやっぱまだだるさが残る。
目蓋が重いから、もぅ自然にまかせて目をつぶろう。
次に瞳を開けた時、まわりは静寂につつまれた冷たい空間だった。灰色の、霧がたちこめる。そんな空間。
辺りには誰もいない。物静かなメルシーも、バカ五月蝿いハルも、小生意気なリズも、誰も。
ふと身体――首元に触れる冷たいモノに気づいた。
視界に黒い布切れの一部が映る。
――何?
そう思った次の瞬間骸骨がフードの奥からふたつのぽっかりと空いた眼孔を覗かせた。
自分に触れているモノは鋭く磨かれた鎌――人間界でいう、死神の象徴。
「…はっ、死神が死神に刈られるってか」
――あながちジョークに思えない自分が怖い。
「アホか、魔界の死神サマは んなベタな格好してねぇーよっ」
勢いよく相手から離れると相手に向き直る――が、
――!?
いないのだ。
先ほど自分の首に鎌をかけていた、奴の姿が。見当たらない。
「一体どこに―――・・」
鈍い音がする。
赤黒い、液が花のように宙を舞う。
「ぁ・・かはっ・・」
死神でもやっぱ死ぬときゃ死ぬんだ・・。
フードから覗く髑髏がぎこちなくこちらに向って微笑んでる。
突き刺さった鎌はそのまま自分の胸を鞘としている。
一向に止まる気配のない血液。
意識が遠のく。
死神デモ死ヌ時ャ死ヌンダ・・
[83] Re:エヌジアズ18。
ゆっくりと身体を起こす。
意識を失う前程のだるさはなくなった。
『あ、紫闇お姉さま。まだ横になられていた方がよろしいのでは…』
壊れかけた人形を腕にぶらさげた、小さな少女がこちらを心配げに見つめている。その小さな手には濡れタオルが握られていた。
紫闇はそんな心配そうにしている彼女に感謝の気持ちをこめて頭をポンポンとなでた。
「大丈夫、もぅ大丈夫だから」
――ありがとう。
08/30(Sat) 20:36:10 えせばんくる
[84] Re:エヌジアズ18。
辺りに他の人影が消えた頃。
今だ自分の目の前に残って、ティーカップを片手にしている人物がいる。
「毎度すみませんね」
そんな彼と逢うのは果たして何年ぶりになるのか。
『ぃや、うちにも血の気の多いのが1匹いるんでね。丁度いい運動になりますよ』
金色の細い髪の間から印象的な赤い眼がのぞく。
この赤い眼が好きだった。
懐かしい。
「そうですか、それならいいんですがね」
長髪の男は眼鏡の奥で微笑んだ。
08/30(Sat) 20:45:38 えせばんくる
[85] Re:エヌジアズ18。
皆、ジオサイドの仕業だと思っている。
でもきっと今回は違う。彼等じゃない。
少し信じられないけど、この匂い。
奴しか持ち得ぬこの魔道のにおい。
自然と身体が震えてくる。
嫌な感じだ。
近くにいる?
大陸そのものに溶け込んでいて、よくわからない。
あいつの特技だ。それとも名前の所為だろうか。
こんなことする奴だっただろうか。それとも自分の知らない面だったと言うだけだろうか。
解らない。
これは、解ろうともしなかった自分の罪?
相手の気持ちも知らずに呑気で側に居た自分の罪?
ワカラナイ
魔道によって惨殺された、無残な死骸が映像として頭に映る。
一見素手や爪などによる惨殺行為に見えて、実のところそうではない。
偽装工作。
次々と写る光景、最後に風にたなびく黒が映った。
長い、黒い髪。
「―――ッ!」
何も見たくない。
ナニモ、ミタクハナカッタ。
09/01(Mon) 17:47:21 闇空鴉擁躬
[86] Re:エヌジアズ18。
「リズ」
『―――え?』
「大丈夫かよ」
気が付くと目の前にハルが居た。立った位置からリズを見下ろして長い、長い前髪の向こうから目をこちらに向けている。
なんて―――間抜けな声を出したんだろうと。リズはハルと目が合うとすぐさま視線を落として暫し目を泳がせた。
『う、うん…』
大丈夫だよ、と言って下唇を少し噛む。
「…あの、だけどよ…」
『何?』
ハルはその場に座って胡座をかいた。
「俺、ディスポリスに行こうと思うんだけど」
ハルの目付きは妙にぎこちないものになっていた。
『…それは、クレインの転移陣が使えなくなったこと、考えていってんの?』
「あぁ」
“それでも行く”。そういう意味か。―――それとも。
『なんで?』
“だからこそ行く”。そういう意味か。
リズは真っ向から見たハルの顔を一寸離して俯瞰する。
それだけでも、その表情は見えなくなった。
青紫の瞳は色素の抜けた真白のそれに覆われている。
―――なんで?
リズはもう一度、そう口にする。
自分はその髪を見ている。
表情を、見ている。
ハル。
「――それは…」
なんとなくだよ、と一瞬間を空けてにんまりと笑って見せた。
―――なんとなく
『…嘘』
何ていったら、この笑みが崩れる。
その裏側の…その瞳が見える。
それを少し見てみたかった―――。
自分も、彼の、ように。
ハルは口元に寄せた歪みを元に戻す。
唖然 疑惑 驚異
それはどんな表情か。
リズは深く肺に空気を送り込んだ。
馬車がガコンとひとたび揺れた。
その間に一瞬ぐらついて瞳が――――…。
その瞳は
「お、俺は」
『嘘みたい』
「は?」
唖然
『嘘みたいに馬鹿みたい?』
「な!?」
焦り
『クラインが使えないとなるとすんごい苦労じゃん。それでも行くって―――』
―――信じらんないね。そう言ってリズは意地悪気に笑った。
馬鹿らしい…。
「わ、悪かったな!? ともかく俺は行くんだッ」
『ハイハイ、わかりましたよ』
―――怒り、か?
リズは薄く息をはき出した。
『考慮してみるよ』
立ちあがって今度はリズがハルを見下ろす。
通りすがりにその真白をくしゃりと掻き乱す。
『でも、まずは紫闇から』
彼女の疵が痛むだろうから。
――優先順位さ。
そう、今はすべき事がある。
『坊は待ってて』
待ってて
背後からハルの張り上げた声が聞こえた。
いつものように無闇に叫ぶ。
待ってて
今はまだ自分で居たい――――。
安心できる、この場所で。
09/02(Tue) 19:57:16 メケ太代理の闇空
[87] Re:エヌジアズ18。
『ほれ、お疲れさん』
――俺がお前さんらを運べるのはココまでだよ。
『おっちゃんありがとな』
『恩に着るわ〜』
『お世話になりましたわ』
お礼を述べると一人ずつ馬車を降りていく。
『すまんな、ココまでで。コレ以上行くと警備が厳しいものでな』
もうクレインまでは目と鼻の先ほどの距離。ここまでくれば歩いてだってそう遠くはない。
だがやはり先日の殺戮によって警備の目が一段と厳しくなっている。
「弥太郎殿恩に着る、おかげで随分と痛みがひいた」
――少ないがお礼のつもりだ。受けとって頂けまいか。
そういうと紫闇は手に握っていた小袋を差し出した。
『そんな気にせずともよかったものを』
遠慮にも聞こえる言葉だが、態度はいたってシンプル――ニッと笑うと紫闇の手から袋を受け取った。その袋は片手で握れるほどの大きさだったが、なかなかの重さがあった。
もらえるものはちゃっかり頂いておく。なかなか要領のよい男だ。
『じゃあ・・気をつけていけよ』
『ココまで連れてきて頂けただけでも十分ですよ。あなたこそ気をつけて』
リズが全員の代表で弥太郎にお礼をいうと、彼は微笑を浮かべ、そして馬車を東に向けて再び走らせた。
『!?』
“信じられない”
そういった表情をつくる弥太郎が荷台にいた。
弥太郎は一向と別れたのち、他の仲間に馬をまかせ自分は少し休憩がてら後ろの荷台に移動した。
そして彼は紫闇から受け取った小袋の紐を解いたのだがその中身に驚愕の声をもらした。
『こりゃ、また・・。すげぇもんを頂いちまったもんだな・・』
袋からこぼれ出したもの。それは親指の先から第1関節程の大きさの瑠璃だった。傾けるとその濃紺の中に大小のこがね色の細かな粒が散りばめられている。
瑠璃は色濃紺であれば濃紺であるほど、こがね色の粒子がたくさん含まれているほど高価な物だという話を耳にした事があった。その上この石の表面には傷ひとつみあたらない。
彼――素人が見てもそれが相当に高価な物だということはわかった。
だがあの連中――紫闇――が金持ち集団だとも思えなんだ。
『こんな石、何処で・・』
弥太郎は解決できぬ疑問を残したまま石を握り締めていた。
09/07(Sun) 21:50:46 えせばんくる
[88] Re:エヌジアズ18。
その頃はまだ雲も生まれぬ突き抜けるような空だった。
ただ、右端には暗い群青色を押し詰めて
右端には白とも、またオレンジとも謂える光を灯す。
これから空を占めるのは明ける早朝の陽光である
―――夜が明ける。
鳥が啼く。
風は少し冷たくてハルはフードをその頭にすっぽりと被った。ユネも風を含んで揺れる上着を途中まで占めて、開けた胸を隠していた。
目の前にはもう、彼の街が見えてきた。
広く、見通しの利く高原に不自然に陰る黒い塊
どことなく衰退して、その様が廃墟のように映るのは単なる思い込みからなのだろうか。主を亡くした街もまた、死んでいくかのように思えた。
――気が重い。
誰かがそう、呟いた。
『ちょっと君達、この先はまだ調査中で立ち入りは出来んぞ』
しかし、街に入る前に2人の人間に案の定、止められてしまった。腕にはGCPの腕章が見える。
GCP―――Global Criminal Police
世界刑事警察機構。
世界的な犯罪を取り仕切る捜査機構である。
『さっすが、こんだけのレベルになんとお偉いさんも出るもんねんなぁ』
『それにしても・・こんなところで・・?』
早すぎませんか?とメルシーは首を傾げた。
クレインがもう近いといっても、此処は門前でも、また目と鼻の先と言えるような距離でもない。クラインへの通行止めと言っては、些か不自然な場所ではないか――?
「おい、その調査ってやつは何時終わんだよ」
ハルは一群から抜けてその調査員の一人に歩みよった。
フードを被り、その身長も手伝ってか下から見上げるその様はいかにも柄の悪い様である。
『現場の状況はかなりの険悪さとなっているのだ。そう簡単には終わらん』
少々眉間に皺を寄せながら調査員の一人は答える。
せいぜい一週間は立ち入り許可はおりん、もう一人の調査員はそう横から補足した。
「一週間って――・・俺は早くここを通んなきゃいけねぇんだよッ」
『ならば調査の妨げにならんように大人しく戻るんだな』
「な・・ッ」
邪魔だ、そう口に含ませながらハルに一瞥をくれる。
さすがにGCPともなれば、人のあしらい方にも慣れているようだ。ハルは怒りを顔に表して、フルフルと震えたが一瞬、その表情は無へと戻った。そして―――・・
「―――遅っせー・・・」
皮肉を吐いた。
『は、ハルが皮肉を言いおったわぁッ!!』
怒りを抑えて、口を少し歪ませて。今まで鉄砲玉のように感情も行動も一直線だったハルにすれば、これは多いな成長である。ユネは思わず、その口を片手で覆った。
『さすがに揉まれて・・来ただけはあるよね』
ふと、二人は彼の3人を見る。
誰もことだとは・・云わないが。
『まぁ、此処は1つ、談判といきまへん?調査員さん』
ユネは愛想良く笑みを作って飄々とした言葉と軽い物腰でハルと調査員の険悪な間に入った。
談判――交渉というわけか。
これはユネの得意技である。
紫闇はその様を見て、少しだけ苦笑いを浮かべる。
『談判だと?そんな余地はない。帰り給え』
しかし、――これはハルのせいで――虫の居所が確実に悪くなりつつある調査員はユネの口先も見ようとはしない。
「何が、“給え”だ」
ハルと云えば横でまたそう、毒付いた。
どうやらハルも余程、この調査員達が嫌いらしい。
『どうしても?』
『どうしてもだ』
――無理だろう。
『どうしても?』
『どうしてもだ』
そう繰り返し応答を交わせ、その間もユネと調査員は凝視し合い、対立し合い、暫し―――
沈黙が続いた。
――もう、無理だ。
『おい、ユネ。これは諦めた方が・・』
紫闇がそう、ユネに語りかけようと、その肩に手を置こうとしたその時、ユネがフルフルと―――震えだした。
『ご免なぁ〜〜〜・br>
09/11(Thu) 17:34:45 メケ太
[89] Re:エヌジアズ18。
無理やってんッ』
そしてくるりと振り返ったユネの目には溢れんばかりの涙が溜まる。
『な・・・ッ!?』
これには紫闇も思わず仰け反る。否、それを直に目撃したハルもサプリも、皆、顔を引き攣らせ後退した。しかし、運が悪かった――のかハルは一人、ユネに抱きつかれるように捕まってしまった。
『俺は、俺は所詮無力な存在でしかあらへんねんッ』
「ちょ・・、ちょっとッ」
怪訝、嫌気、恥辱。ハルの表情はたちまち色々な感情の入り混じった複雑な表情と化す。それを気にせず、ユネはおいおいと泣いた。ハルの胴にしがみ付きながら情けなく泣いていた。他の者は、それを直視し――むしろ、目が離せなくなっていたが、決して干渉しない傍観体制であった。
――関係してはいけない。
そんな予感が本能的にそうさせたのだ。
「コラ!どうしたっていうんだよッ!!」
『しゃぁない一般人が、国家権力の前に楯突いて・・俺は情けない大馬鹿もんや』
「こ、国家権力?」
『ああ、どんなに足掻いたかて、俺らみたいな人間は騒ぎの起こさんようにのうのうと税金納めてそれなりに生きてたらいいんや。そんなことも忘れて・・俺は何してんねんッ!なぁ、調査員さん!!』
ユネはそういうとバッと、俊敏に調査員に向き直る。
その視線を受けた調査員も咄嗟に視線を逸らした――ように見えた。
『あ、あぁ・・』
そして曖昧に言葉を返す。
『だから、ハル。諦めよ?』
「はぁッ?!」
その言葉にハルは声のトーンを上げる・・が、一瞬にうっと声を詰まらせた。どうやらユネの顔を直視してしまったらしい。
『ここはな、俺等がしゃしゃり出れる場でもないんや。分かるやろ?』
――しゃしゃり出るって・・。
ハルは少しその表情に狼狽の色を見せて地を見つめた。間違っても、ユネの顔を見ないように。
――だからって
だからって諦めるのか?
『そうだよ、坊』
そこに後方から声が聞こえた。
この空間に勇敢にも立ち入ったのは――見なくても分かる。
リズである。
『者には区別っていうのがあるんだからさ。それも道理だよ。道理』
――道理
ハルはリズに視線を移すが、その顔はどことなく情けないものに映った。
権力
立場
『まぁ、そういうことだ。せいぜい――』
せいぜい
立場?
―――わきまえろ。
09/11(Thu) 17:59:18 メケ太
[90] Re:エヌジアズ18。
『こいつ等が本官に突如襲い掛かってきたのでありますッ!』
『私はやってないわよ!捕まえるのならこの白髪頭だけで十分でしょッ』
『やかましいッ!!』
少しばかり小さなテントの中、サプリは両腕を縛られつつも声を張り上げていた。身動きの出来ない状況の中でどれくらいこうしていたか。当然、それはサプリだけでなく、リズも紫闇も、当然ハルも。皆の腕には粗い、ささくれたロープが締め付けてある。
『こいつ等がこの事件に関与していないとも限りません!まず取り調べの必要があるかとッ!!』
『うむ』
―――その後の事である。
一行は引っ張られるようにしてクラインの門前に立てられた臨時のテントの中に連れ込まれた。本当に臨時であるだけの薄暗い、機材のいくつか置いてあるテントである。そこで調査員がさっきから自分の上司に血相変えて、必死に一連の事を申告しているのだ。なんとも――めちゃくちゃな内容ではあるが・・。
こんだけの事件をこんな面子が起こすものか。
たった10代半ばの集団が。
しかも、わざわざこんな派手なことをしておきながら自分から出向いてくると・・?
――阿呆が。
紫闇は心の中でそう、毒付く。
『まぁ、一応のことはあるからな。運びたまえ』
つくづく、阿呆な連中だよ。
紫闇は呆れながら溜息をついた。
調査員は射切りだったように声を張り上げ、敬礼をした。
『早く歩けッ』
そんな風に云われて一行はテントを後にした。
どうやら別の場所に建てられたテントに移動するようだった。テントを出て、その瞬間に見える外の景色、クラインの果てを紫闇は横目で覗いた。
陽のあがった今、確実にそれが鮮明に分かる。
―――あんな所に居た訳だ。
どうして、あんな中途半端な所に調査員がたっていたのか
それが分かる。つまりは、近付けなかったのである。
匂い。
近寄るだけで悪心のする程の強烈な悪臭である。
それは腐り始める肉の匂いであり、
どろどろに流れ出した血の匂いであり、
腐汁である。
各々の腕や足や手や首や、不自然にあいた穴から漏れ出して
死の吐息に鼻口をおさえて逃げ出したくなる
――これは近付けまい。
紫闇も此処に近付いてからはこの悪臭に何度も眩暈した。
だれもが言葉少なになって気を重くした。
当然、マスクを付けて作業する者も居たが、それの心持ちは変わらないだろう。
変わるものか、そう紫闇は目を伏せた。
死の山から、死者達の姿から。
生きる者が、死というものに直視して正気でいられるわけがない。かき集められては運ばれる――たぶん、鑑識に回されるのだろうそれらは――青黒く剥れあがり、皮膚は紫色にただれ、一面に蝿がたかっている。口や、端眼の端には蛆がわき、とろりとした白濁した唾液が垂れている。
首の折れたそれは部分がいっそう黒く変色し、不自然に折れ曲がっていた。瞳は濁り、半分開きかけた口中は真っ黒で、その中にはもう生の息吹が宿ってはいない。
誰もが目を覆いたくなる、光景である。
死んで――いつかはこう、朽ちる。
無常はこうやっていつも自分達で常に確認されていく。
だが。
判っていても、認めていても。
――正気ではいられない。
09/11(Thu) 18:31:05 メケ太
[91] Re:エヌジアズ18。
『ん?どうした?』
とあるテントに入るとそこには雑誌をパラパラと捲る一人の調査員がいた。
『いえ、コイツ等の取調べを行いますので・・』
調査員はヘコヘコと頭を下げた。
『部屋なら向こうのが開いてるだろう』
マップを配られただろうに、といかにも面倒臭そうに言葉を返す。
『ともかく、此処は―――』
がッ
その時、鈍い音がした。
頭を力強くなぐった音だ。
『ちょっと、使わせてもらいます境に』
そういうと口を押さえてもう一度頭を打つ。
そして声もなく気を失って倒れ掛かる調査員を抱きかかえて静かに、地に寝かせ置いた。
――堪忍な。
そういうとは裏腹に、調査員は口元を歪ませて深く被った帽子を取った。
09/11(Thu) 18:36:18 メケ太