[66] エヌジアズ16
08/17(Sun) 12:39:24 闇空鴉擁躬
「今ボクが話せることなんて、ほんの少しだけど、ね」
そう、リズは切り出した。
今までも世界中を旅したね。
ホント、世界中を、ね。
大陸も超えて、サーナにもムーナにも行った。
あとね、リザイアの南にあるジーザイル諸島。あそこはね、リザイアの土地の中では格別明るい場所だと思うね。
まぁ文化が違う、と言ったらやっぱメティシアかな。
なんか神の力を科学的に証明してやる!って言ってる科学者とかがいてね。飽きないよ、あそこは。
リザイアは森ばっかりだから人少ないけど、アデュークは多いね。だから争い事も起こったりするし。昔は酷かったけど、今はそうでもないね。ほら、ディスポリスができたからかな。力もどんどんつけてきてる。だからかな、最近戦争が少ないのは。
「あ、そうそう。ココからでたら、ディスポリスに行ってみる?」
にこにこ笑いながら、突然の提案。
紫闇は『はぁ?』と疑いの眼差し。
『そうです、ここからは遠いのではありませんか?』
サプリも紫闇に同意を示している。
しかしリズは余裕そうにちっちっち、ちわざちらしくしてみせた。
「甘いね、君達! アデュークの大陸には多くは無いけど、大きな都市には転移陣があるのだよ!」
転移陣、とは転移魔法の一種である。巨大な魔方陣で、そこに少量の魔力をいれることによって発動する便利なものだ。
それを使えば一気に多くの者を移動させられる事ができる。だが勿論誰もが使えるわけではない。転移陣そのものは無料だが、魔力はそうではない。使うためには二通りの方法がある。1つは、魔法使いを雇う。2つ目は、自腹。後者の場合、自分が魔法使いでないと無理なのだが。
金の有る商人達はよく魔法使いを雇って使って商売をしたりしている。
ちなみに、リザイアに転移陣はない。(そうするほどの街がない。さら言うなら、転移陣は海を越えられない。)
「そんな訳だからさ。今度行こうね」
俯いていた時の雰囲気など欠片も見えない笑顔だった。
しかし紫闇は、それとは別のひっかかりを覚えていた。
(『昔? ディスポリスが出来る前?』)
リズが一人、どこか時間軸がずれているような錯覚をうけていた。
「さぁて、次はどっち?」
[67] Re:エヌジアズ16
――どっち。
「じゃあ…私、に、しようか」
軽く笑って名乗り出る。
話せる内容は決して軽いようなモノではないけれど――。
「自分、今脱獄中の身なのだよ」
その言葉にサプリは目をぎょっとさせる。リズはそれは知ってるよと次の話を催促する。
「まぁまぁ、連中早々帰ってくるような奴等じゃないだろ?まだ時間はあるさ」
何から話したらいいのかね。
ん?脱獄中の話?そうだね。じゃあそれから話そうか…。
あまり話す事はできないけどね。
自分は死神だったんだよ。
上位のね。
上位というのは下位・中位・上位とある死神のランクのひとつなんだけど。
で、小隊の部隊長を務めていたんだけど。
自分の未熟さが結局原因だったのかな。
自分の大切な人――てか友達って言った方がいいかな。
その人の命を摘み取らなきゃならない任務があったんだけど。 結局自分、その任務を放棄しちゃったんだよ。
紫闇はははっと笑うがその顔に笑みはない。
「ちょい話、暗くなっちゃうけど。ごめんな」
苦みを含んだ笑みを見せながら彼女は続けた。
その友達の命を死神の本部まで届けるのが任務だったんだけど、さっきも言った通り、私は放棄してしまったんだよ。
その任務を放棄するって事はね、ほんとは輪廻の渦に戻る筈だった命が地上に留まっちゃうって事で。
つまり地上の魂の数とあの世での数とがつりあわなくなっちゃうって事なんだけど。
そうなると世の中のバランスが取れなくなるんだよね。
それは死神の職に身を置く者としてはやってはならないタブーのうちのひとつなんだけど、私はそれを破ってしまったから。
だから捉まって―――
死神の職を剥奪された。
「本当は永久に地下牢に繋がれてるところなんだけどね。そこを…ちょちょいと、ねっ」
手で鍵を開ける素振りを見せながら脱出――脱獄――した事を告げる。
『そんな…ことがあったのですね』
「ん。うん…まぁね」
『ところでさ、キミの発作についてだけど……』
『発作をお持ちですのっ?』
『…ちょっとボクが話してるんだけど』
『…ごめんなさい』
『で、発作についてなんだけど。ただ“呪い”としてしか今まで教えてもらってないじゃない。その理由って?』
――まだ話せない?
「その理由、ね。簡単に言っちゃうとさっき言ってた任務放棄で捉まった時に自分の所属していた部隊の隊長につけられた呪いなんだけどね」
今、目を皿のようにしながら自分の事を追ってるの、きっと彼じゃないかねェ。
まぁそんな事はいいとして。
その隊長の術がこれまたよく効いてくれちゃってさ。ほんと、すばらしい事この上ない腕前。こっちは痛いのなんのって。
紫闇は自分の胸元を軽く叩く。
「月の動きに関係するように調節された結構高等な呪術を準備してくれちゃって」
おかげでこっちの身体は悲惨だよ。
ほぼ毎月おとずれる新月の日なんかは一日中ギトギトの脂汗にまみれながら激痛との攻防戦。
翌日の呪いの明けた朝なんかは死人みたいな顔してるんだろうな。自分じゃ分からないけど。
「ぁあ、そういえばもうそろそろ新月だっけ」
新月以外でもたまにくる軽度の発作の頻度が増している。
(そろそろ覚悟しておかないとな。)
08/17(Sun) 23:39:21 えせばんくる
[68] Re:エヌジアズ16
一方の彼らというと――――
『迷った?』
「迷ってねぇよッ!!」
不安を拭うように――・・または自分の失敗を振り切るかのようにハルは一喝し声を荒上げていた。しかし、それは声を張り上げれば張り上げるほど効果を得ず、逆にこの事態を確実なそれへと結び付ける。
つまりは――・・
『・・迷ってるよなぁ』
――“迷った”のである。
「んなことねぇよッ大体、この辺なのは確かなんだってッ」
『ほぉ〜〜〜〜〜〜〜〜〜』
それをさっきから嗜めるのはユネ。
“あーぁ”なり“はぁ〜ぁ”なりそんな息を漏らしてはハルの毛を逆撫でる。先ほどから続くこの調子の繰り返しをメルシーはハラハラと、そして今になっては呆れて聞いていた。
『・・言い争いは後にしてくれよ』
ついにはげんなりとそんな言葉まで漏らした。
自他共に認める、消極的な彼にとってそれは至極珍しいことであったが今では誰が気にすることでもなかった。そもそも・・聞こえているかも怪しい。いや、聞いているかも怪しい。皆、この場で疲れが溜まっていたことは確かなのだから。・・だから、このような光景が続くのである。
理由は至極簡単であった。
迷ったのは。
言葉を漏らすのは。
『あ゛ーッ疲れた!!』
「云うなぁッ」
こういうワケである。
『もう、今日は戻ろうや〜。あんちゃん』
ユネはうな垂れて屈伸運動のようにその場でパキパキと足を曲げては立ってを繰り返していた。
『しんどいわぁ。おじさんにこんな歩かせるなんて酷なことやでぇ』
「うっさい、うっさい、うっさい!!」
『・・二人とも、迷ってるんだからさ・・』
戻るったって・・。
『んじゃぁ、ここで休も』
「はぁ!?」
『今日は此処で野宿!』
「駄目ッ」
『ええやないか〜。男三人、身ィ寄せて寝ようやぁ〜』
「キモいんだよ!お前はッ」
『お前、真ん中でいいから!!』
「意味わかんねぇよッ」
08/18(Mon) 09:44:58 メケ太
[69] Re:エヌジアズ16
『はぁ・・』
どっちが
『ハルのいけず〜ッ』
「離せーッ!!変態!」
年上なんだか・・。
メルシーは再度ため息を吐いた。ユネが泣きながらハルの足にしがみ付くその様など見るに耐えない・・というより、何か悲しくなって直視出来ないというのが本音である。今に泣けというのならはらはらと涙も流せる勢いである。鬱々と陰気な思いがこみ上げていくのが今、自分にもわかる。
――やっぱり。
疲れたな。
船の上にいた以上、こんなに地上を渡り歩いたことはない。移動はしょっちゅうであるが自分の足はそうそう使わないのだ。要るのは技術と体力、忍耐力。しかし、その状況は研ぎ澄まされた単独作業で一切使わぬものが一つある。
“気を使う”ということ。
それが今の自分を内側から蝕んでいるのは確かであった。じわじわとこみ上げてくるストレス。何処か抜くことが出来ない緊張感。ずっと人と接することなく生きてきたメルシーにとってそれが一番の弱点である。
いつか慣れるだろう。
いつか―――。
・・いつだろう?
普段は尊まれる自然も今は疎ましい。
風が砂っぽい。
草木が冷たい。
空気がじっめったい。
そして、暗い――。見通しの利かないこの道といえない道を辿って、状況は繰り返し繰り返し。
雑音。
ハルとユネ。
ハルとユネ。
「お、おい!!」
そのうち、メルシーもその場で言葉なくしゃがみこんでしまった。
08/18(Mon) 10:02:53 メケ太
[70] Re:エヌジアズ16
「ぁあ、そういえばもうそろそろ新月だっけ」
そういいながら空を見上げていたが暫らくして視線を落とす。
「まぁ私の話はこれくらいかな?」
『そう言えば皆さん、暇な時って何をなさってるの?』
「暇な時、かぁ」
手を口元にあてて自分の思考に問い掛ける。
“・・・ヒマナトキ―――”
『ボクだったら自然観察…というか自然と戯れてるかな。その辺に生えてる小さな花を見たり、遠くの雲をぼんやり眺めたり、小鳥達に餌やったり』
『自然がお好きなのですね』
リズはにんまりと笑って無邪気に『まぁね』と言うと口を閉じた。
「私は・・・歌・・・かな」
『…歌?』
「うん。なんか、ふと時々浮んでくるメロディーがあるんだけど、それをそのまま口ずさんだり。それに詞もつけてみたり…」
すると黙って聞いていたサプリが目の色を変えて身を前に乗り出し一言。
『それ聞きたいですわっvvv』
いや二言。
『今歌っていただけませんか?』
「ぇえ゛っ|||」
あからさまに引きつった顔。
突然そんなコトを言われるなんて思ってなかっただけに、この唐突さには驚かされた。
『やんなよ紫闇、ボクも聞いてみたいな〜』
イタズラな気持ちがあきらかな口調でニコニコと歌うよう促す。
「ぇえっ|||だが…」
この表情では・・・・・・
『ぇえでもだがでもない。はやく。後で坊達が戻ってからでも別にいいけど?』
絶対に・・・・・・
「やらせていただきます|||」
あきらめそうもない。
紫闇はあきらめが肝心と自分に言い聞かすといちど息を吸ったり吐いたりして、呼吸を調えた。
そしてゆっくりと口を開くとそこからメロディーがこぼれた。
高くもない、低くもない、そんな落ちついたトーン。
穏やかで、聞いてて気持ちがよいのだが、切ないそんな音調。
詞はついていなかったが、なんとなく、そのイメージがやんわりと、自然に浮んでくる。
そんな感じの曲だった。
だが盛りあがりにさしかかった丁度その時急に胸元に手を当てながらむせこんだ。
隣にいたサプリは慌てて彼女の身体を支えた。
呼吸が少し荒くなったが、すぐにその咳は収まった。
『大丈夫…じゃ、なさそう…ですが、大丈夫ですか?』
恐る恐る聞いてみる。
紫闇はそんな心配してくれている彼女に笑いかけると大丈夫と一言つぶやいた。
「なんか、いやな気分がする。何か・・・」
『なんか…って何が?』
「いや、何かは分からないけど・・・何か不吉な気配がした」
木を背もたれにして紫闇は落ちついた様子だった。
だが身体的“落ちつき”は取り戻したものの精神的な“落ち着き”が不安定になりかかっていた。
『今の、が、発作ですか…?』
「まぁ…その欠片みたいなね。そんな感じ」
紫闇の視線は宙をさ迷っていた。
ピントがあっていないように思われた。
「何もなきゃいいけど…」
でも今はただ、何もなければいいというコトを祈るだけしかできなかった。
08/21(Thu) 00:00:04 えせばんくる
[71] Re:エヌジアズ16
「おい―――ッちょっと!!」
状態は完全なる閉鎖状況。突如として森のど真ん中で立ち往生となった。と、いってもたっているのはハル独りで他の2人はすっかり座り込んでしまっている。
それどころか
『んまぁ、これぐらいのスペースなら寝れるんとちゃう?』
となんと、まぁ暢気なこと・・。
すっかりと落ち着いてしまっていた。
普通、いくら迷った、疲れたかといってその場で座り込み寝る、ということがあるのだろうか。
――なんてアグレッシブな・・。
いろいろな意味で只では済まない男である。
そんな心持で呆れながらもハルはユネを見据えた。
ところ変わってメルシーはもう頭まで抱え込んだ疲労困憊状態らしい・・。
「ハァ・・」
叫ぶ事を止めたハルの口からは今はもうため息しか漏れない。
『そない、げんなりしなさんな兄ちゃん。ほな、こっち来ぃや』
自分の隣に来いと地面をポンポンと叩く。
「・・ったく」
どんなに愚痴を溢そうと今はユネのペースに乗る以上、他ないらしいと不満を吐き捨てながらハルはユネの隣に正直に座る事にした。
『んな、焦らなくても宝は逃げへんよ』
「わぁーてるよ」
――そんな訳ではない。
「・・お前等は男のロマンってのがねぇよなぁ」
大事なのはそんな事ではない。
『はぁ?』
「なんでもねぇーよッ!!」
大事なのは――追い求めることである。
ハルはギュッと握っていた拳に力を込めた。
『んにしても、本当にこんな所に宝なんてあるんかいな』
判らない事への追究、知らない事への探究。
―――宝というものの不確定なモノ。
『そない話、聞いたことあらへんで』
何でも良い。
この心を
『なぁ?』
揺さぶるモノ
08/22(Fri) 11:11:35 meketa
[72] Re:エヌジアズ16
「あるに決まってんだろッ!!こうして地図だってあるんだよッ無くてどうすんだよ」
『第一、その宝の地図ってモノこそ変やない?だって宝なのに地図なんやでぇ?』
ユネは薄ら笑いだか苦笑だかを浮かべて此方を見据えている。ハルはユネのそんな表情がどこか嫌いだった。より一層の睨みを利かす。
「なんだよ、あっちゃ悪いかよ」
『悪いっちゅうか、地図が出来るぐらいならその宝ってなもう手に入れてしもうたんちゃうか?って話やん』
――――あ。
『あッ!今“あ”って思うたやろ?図星?図星??』
「お、思ってねぇよッ!!」
こちらに指を差して笑うユネにハルは覆い被さるが如く掴み掛かった。
―――まさか
「んなはずねぇだろッ!」
―――宝は
「宝は、絶対にあるッ!!」
そう、より強く声を張り上げた時だった。
辺りが
「・・あ」
明るく。
『あ、そろそろだ』
時たま咳き込む紫闇の背を摩りながらリズは懐中時計をポケットの中から出すとそのような事を云った。
『・・?何がですの?』
サプリの問いににんまりと笑むと
『水蛍だよ』
と一言答えた。
草・木・土。木々の入れ組みで空さえ見えない天にも、葉に止まる青白い光が星のように輝いていた。
―――水蛍とは腹部に発光器を持つ熱帯に巣くうごく小さな甲虫で繁殖と羽化の時期にだけその青白い光を点滅させるのだという。
その光は四方八方に散らばる。
しかし
『おい、あれ・・』
ただ一方方向にその光が集まっている気がした。
―――特に水蛍の発光器は水によく反応し、水辺で行われる羽化はより一層の光を放つのだという。
08/22(Fri) 11:26:14 meketa
[73] Re:エヌジアズ16
目前の草木を掻き分けて1つ1つの光を追いながらも3人は足早に光の集まる場に進んでいった。おのずと何か打ち付けるような音も近く聞こえるようになってきた。それは歩みを進めるたびに騒がしくなっていく。
「あ・・」
しかしやがて草木は途絶え、道が開ける。
そして――その先には――・・
『なんやこれ』
滝。そして河。
森に隠れるように存在していたその雄大な水の源は美しく――光に包まれていた。
――イーザの国に位置するこの森の名はガイスターズ・ウッド。《魂のある場所》と呼ばれるその森のいわれがこの水蛍である。
『うわぁ・・』
さっきまで塞ぎ込んでいたメルシーもこれには目を輝かせ、感嘆の息を漏らした。メルシーだけではない。ここにいる誰もが目を見張っている。滝から、河から、その光が浮上し、そして舞っていく。天の川とはこのようなものか。
その輝きはまるで・・
――その魂はまるで
「・・宝だ」
――宝の輝きである。
『ハイハイハイッ!此方が彼の有名な水蛍で御座いますッあぁ、お客様、単独行動は困りますよう』
「は、はぁ?」
感動の時を裂いてどこか下でに出た声がハル達に話かけた。気が付くと自分の隣にはいつの間にか現れた人・人・人・・。そして旗を持つ・・案内人?
『あ・・』
その旗を見てユネは何かに気付いたか声を漏らした。
《ガイスターズ・ウッズ☆水蛍観光ツアー》
「な、ツアーってなんだ!ツアーって!!」
『なぁ〜んや。コレが水蛍やったんかぁ』
「はぁ?!み、みず・・?」
ユネが古臭くポンっと手を打つ。
『なんや、知らんの?水蛍ならもうイーザの国が観光スポットとして客寄せにしてるくらいやもの。有名やん。年に一回のデートスポットbPやで』
「なにぃいいッ!!?」
『あー・・こないことなら、わざわざ森を抜けんでも観光馬車が出とったのになぁ』
そう頭を掻くユネの傍ら、ハルはヘナヘナと力なく座り込んでしまった。
「お、俺の・・ロマンが・・」
そう、一言呟きながら。
08/22(Fri) 11:42:54 meketa
[74] Re:エヌジアズ16
薄く、笑う月の傍らに
――男がいる。
その髪を長くたらし、端麗な眼を縁のない眼鏡からのぞかせていた。しかし、その空気がどうも街とはそぐわない。そんな風に独りだけやけに浮かびあがる。
帰り道の街頭でふと、そんな昔の男と出逢った。
「・・あ」
思わず声を漏らす。
『お久しぶりです』
にこりと、優美な微笑を浮かべた。
相手はあいも変わらずの優男ぶりである。
しかし、その微笑にこめられるものが何であるのか・・。
『お仕事の方はどうですか?』
――少々嫌な予感がした。
「ボチボチってとこだなぁ」
とりあえず答えるのはそんなところで
『では、依頼は引き受けてもらえますね?』
なんてまぁ、隔てがましいこと。
「年中無休なもんですからねぇ」
久しぶりの再会の挨拶もそこそこに
そんな話を交じ合わせた。
08/22(Fri) 11:50:56 meketa