01/14(Tue) 15:48:26 闇空鴉擁躬

 むかし昔。
 それは世界が作られた時。
 大神様は二人の小さな神様をお創りになりました。
 二人の小さな神様は二つの大陸に降り立って、この世界をお創りなられたのです。
 大神様は世界の中心に眠られました。
 そして小さな神様達は、生と死を管理する、小さな小さな神様をお創りになられたのです。



[50] Re:エヌジアズ5
『ハぁ〜ル坊っ』
 ばふっ。
『その声っ…てめぇリズかっ!!!』
『他に誰がいるっていうの?』
『そんな餓鬼声てめぇしかいねぇよ』
 ハルは精一杯嫌味を込めた声でそう言う。するとリズはクスっと小さく笑うと刺すように一言、いや二言。
『坊にそんな事言われたくないよ。“あんな”事で真っ赤になっちゃう坊に、ね』
 さりげなく、だが完全にわざとリズは“あんな”という部分に力を込める。ハルはその“あんな”の一言でそれを再び脳裏に鮮明に甦らせられてしまい言葉を失った。頑張れ童(わっぱ)ハル。だが今の勝負完全にリズのKO勝ちだった。ハル君まだまだ修行が足りないようだった、残念。
『それにしてもお二人さん後ろからみててとっても和やかな雰囲気だったけど?』
――なんかあったの?
 紫闇はリズの視線をとらえ軽く笑うと「秘密。」と一言呟いた。どことなく嬉しそうな顔つきで―――。



01/15(Wed) 22:29:15 えせばんくる
[51] Re:エヌジアズ5
 それを見たリズは、返すようにニッコリと笑った。
 ただ問題だったのは、その笑顔で。
『…っ!?』
 ぞっ、と紫闇のは肌を粟立たせた。
 凄まじい、寒気。
 少なくとも、リズの笑顔は至って普通だ。もしリズが大人であったなら。
 子供にはないような、妙に落ち着いた笑顔。それはとてつもない違和感を伴っていた。
「リズ、はやくきなさいっ」
『はぁ!?』
 後ろで聞こえた大人の女性の声に反応したのは、リズ本人ではなく、ハルだった。
 彼の視線の先にいるのは、幼い童女とその母親。
「…キミさぁ、アホ?」
『何でだよっ!』
「だってリズって名前はリザイアから取られた名前なんだよ? 多いに決まってんじゃん」
 だからアデューク大陸には同様の理由でアークとかデュークって名前が多いんだよ。



01/16(Thu) 16:38:24 闇空鴉擁躬
[52] Re:エヌジアズ5
『う…そ、そーいやそっか…
 …………ってンなことはどぉでも良いんだッ!』
 地面をバシバシ叩きながら、ハルが怒鳴る。
 リズは軽く彼の頭を小突き、
『あぁ、コラコラ。草が可哀想だと思わないの?』
 と、のたまった。当然、その余裕綽々の態度にハルはイライラを募らせる。

 ふぅ。紫案は気づかれないように、小さくため息をついた。
 何だったんだろう、今の感覚は。恐ろしい…怖ろしい、わけではなく。
 あまりに食い違った、ちぐはぐな…パーツ。
 リズはどう見ても子供だ。紫闇も見た目だけは少女だが、それよりもまだ若く見える、リズ。
 現に今だって、こうしてハルとじゃれ合っている(?)姿は、普通の子供…だ。とりあえずは。
(『…何なんだ。』)
 紫闇は目を細めた。

『…あれ?そーいやメルシーは?』
 ふと、ハルが気づいたようにそう問う。リズと一緒に部屋を点検しに行ったはず。
 リズはああ、と呟き、満面の笑みを浮かべた。
『うん、なんかね、自腹で宿屋代出してくれるんだってv今払ってるんじゃない?』
『『………』』
 そういや、後払いだった。
 良い人だよねぇあははははと笑っているリズ。おそらく…というか間違いなく、この子供に丸め込まれたに違いない。
 ああメルシー。お前やっぱその性格直したほうがいーよ…内気云々言ってる場合じゃねーよ、ホント。
 他人事ながら、同情せずにはいられないハルだった。



01/16(Thu) 18:14:00 うさぎばやし
[53] Re:エヌジアズ5
『…アイツ絶体詐欺とかに引っかかりそうだよな…』
『あははっ、言えてるねー』

仕方なく広場で待つことにしたハルたち。
天気も良く雲一つない青空。
所々に出店が出ていて、風船や、食べ歩けるお菓子なんかを売っていた。
ハルはつい周りを見回して、目を輝かせてしまう。
それを見たリズはにんまり笑ってハルの方を見上げる。
『どうしたの?お菓子食べたいの?』
先程の笑いとは違う、子供のような悪戯っぽい、しかし少し小馬鹿にしたような笑い。
その笑みに気がついたハルは少し顔を赤くして勢い良く振り向く。
『ば、馬鹿言ってんじゃねぇよ!俺はそんな子供っぽくなんかないぞ!』
『ふぅん…?』
紫闇も、微笑みながらその様子を眺めていた。
端から見ると微笑ましいこの光景も、当の本人ハルにとっては必死だった。
『大体なぁ、このグレートなハル様があんなお菓子なんかで喜ぶと思ってんのか!』
『へぇ〜、でも“あんなお菓子”をじーっと見つめてたのは何処の誰だろうねぇ?』
『ぐぬぬ…ッ』
言葉を返せなくなり、再び地面をバシバシと叩くハル。
するとやはり、後ろから頭を小突かれた。
「コラコラ坊主。地面が可哀相やと思わへんのか?」
リズとは違う、低い声。
そして先程頭を小突いたリズは目の前に居るわけで…
『だ、誰だ…ッ!!』
振り返るとそこには背の高い男が一人立っていた。
背中には土色の弦楽器を背負っている。
その楽器を見たリズは目を細めながらその男に微笑みかける。
邪気のない、子供の笑みで。
『キミ、吟遊詩人さん?』
すると男は微笑みを返し、リズの頭をわしわしと撫でた。
「おう、よぉわかったな。俺は愛を求めて彷徨う放浪の吟遊詩人。名前はユネって呼んだらええわ。」
『…それで、その吟遊詩人が私たちになんの用だ?』
乱れた髪を直しているリズの横から、



01/17(Fri) 11:30:08 如月暁人
[54] Re:エヌジアズ5
眉を寄せながら紫闇が睨む。
ユネと名乗った男はにっと笑って楽器を胸の前に持った。
「今ちょっと金欠やってん。アンタら、一曲聴いていかへん?」



01/17(Fri) 11:30:51 如月暁人
[55] Re:エヌジアズ5
なー――。
「商売かよッ」
『何、当たり前やんか。俺は愛を求めて・・』
『あのねぇ、この人、吟遊詩人なんだからさぁ』
ユネの言葉を割って出てリズが呆れ顔でハルを見やる。
『つまりは歌が売り物なんだよ』
そして紫闇までもがそこに加わった。
つか、なんだよ。おまえら・・。
『と、いうわけでリクエストどうする?』
「ちょっと、ま・・」
「今、流行りの曲から民謡まで選り取りみどりッ」
二人の助言にただ“そやそや”と頷いていたユネは調子の良い事にトントンと間を縫うようにして勧めていく。まるでそのテンポの良さは吟遊詩人ではなく、ある一種の勧誘に近い。
「ちょっと待てよッんなもんいらねぇっつーの!」
それでもハルは大声を張り上げる事でなんとかその巧みな方便話術を振りきった。畜生・・お前はジャパ○ットタカダかッ!!しかし、そこで聞きなれた声がした。
『あの、皆さん』
「あ、お前・・」
『おお、おにいちゃんッ』
それは宿金を払ってやっと追いついたメルシーだった。それを見てユネはハル達の仲間と認識したのかターゲットを変える。それは確実性の高そうな目標物へと・・。
『いやぁ、俺ね吟遊詩人やってんやけど、歌聞いていかへん?1曲でもええんよ?』
「ちょ、待てッそこ!」
『俺、色んなの歌えんのよ〜。好きなの云ってくれりゃぁええんやで。ほら、遠慮せんと』
『いや、あの・・』
「コラ―ッ」
メルシーはいきなりの攻めの攻撃にただ言葉を詰まらせた。しかしユネはそれにも容赦なく、当然ハルの言葉など耳にも入れず、その目はまるで獲物を捕える鷹のような目つきに変わる。
『ほらほらほ〜ら、何にすんねん』
いかん、このままではあいつに・・もとい、あの方便話術にメルシーは確実にやられ・・
「あ、はい」
・・た。
『おおッやっぱ、お兄ちゃん俺の選んだ相手



01/17(Fri) 20:49:19 メケ太
[56] Re:エヌジアズ5
だけやあるわぁ。その判断力に乾杯やな』
ホント、乾杯だゼ・・この
「大馬鹿がー――ッ」
ハルは噛みつかんが如くメルシーに掴みかかった。更に訳がわからなくなるメルシーは更に混乱の表情を浮かべる。そのいつも垂れ下がっている眉が尚更垂れ下がるのが見えた。
『おい、何そんなに頑なになってんだよ』
しかし紫闇がそこに入った。
「うるせぇッ歌なんか聞いてられるか!こんな・・」
『では、リクエストがないんでオススメの曲、やらしてもらいますわ』
「人の話、聞けよッ!!」
しかしそんな突っ込みにもなんのその。ギターを構え、その弦を震わすと音が、弾けた。高めの音に空気が澄む。その音に、純となったその空間に、ユネの意外にも高めの声が入り混じる。それでも純に変わりない。歌はそして耳に届いた。ハルは動きを止める。メルシーの胸倉を掴む手が不思議にもするすると解けていった。それはこの歌が余りにも綺麗だったからかもしれない。それとも・・
「・・あ」
聞き覚えのある歌だったからかもしれない。
聞き覚えのある・・いや、
忘れる事はない。
この歌は・・。
この歌だけは。

ああ・・。

『どやった?』
――【春咲きの花】
そういってユネは爽やかに微笑んだ。



01/17(Fri) 21:23:07 メケ太
[57] Re:エヌジアズ5
メルシーと紫闇はそのユネからの発せられるオトに聞き入っていた。普通に上手かったのだ。飲み込まれていくようなそのオトはハルまでをも飲み込んだ。今まで目を吊り上げて否定していたハルが、その歌を聞いた途端変化があった。
『その歌・・ッ!』
「・・?」
ハルのその様子が気になった。どう見てもユネの歌に気をとられているようにしか見れない・・。当のユネは、楽器を片手にもう片方の手をメルシーに差し出すと
『歌代貰えます?』
『・・ェあ・・はい』
そう言うも、財布がない。そういえば、宿を出る時に工具入れの一番下に入れた気がする。それを見て
『じゃ、歌も聞いたしいこっか』
『そうだな』
リズと紫闇は遠慮なく歩き出した。
「あの・・お金今出せなくって・・」
『んじゃ、ま、聞いてくれた分のお金払ってくれるとこまでまずついてこか。いいかい?兄ちゃん?』
「私はかまわないけど・・他の人に聞かないと・・」
『でも、おらへんで?』
リズと紫闇はもちろんハルももう歩き出していた。



01/17(Fri) 22:21:18 摩緒
[58] Re:エヌジアズ5
『…!』
 わたわたとその後ろに続くメルシー。更にその後ろに、ニコニコしながらついて行くユネがいた…


『…で、何であんたがついて来るんだ?』
『いややわぁ、そない冷たくせんでや〜。
 えーと…紫闇ちゃん・いうたっけ?あの兄ちゃんが金払うまでの付き合いやさかい♪』
 にこ、とメルシーを示しながら、ユネ。
 紫闇はメルシーを見、再びユネに視線を戻してから不快気に眉をひそめ、すすすとユネから離れた。
 ユネは、ああ〜紫闇ちゃんに嫌われてしもた〜、などと笑う。
 少し離れて、リズと並んで歩いているハルは少し首を傾げた。
『変な奴。』
『ヒトのコト言えるの?』
 間髪いれず突っ込みを入れるリズを、ハルはこめかみをぴくぴくさせながら見つめる。
『じゃあお前だってヒトのこと言えんのかよっ』
『あ。』
ぽん。
 思い出したようにリズがユネの元まで歩いていく。
 おい聞いてんのかよ、と憤慨するハルは完全無視して。
『おにーさんおにーさん。』
『ん?』
 リズはちょいちょいとユネの服を引っ張った。
『リザイアの恵みはいらんかね?』
にっこりv
『……てめぇはやっぱりそれかい…』
 がくり、とうなだれるハル。その後ろで、多少ためらいつつ彼の肩をポンポンとたたくメルシー。
 なんや、とユネは少々驚いた様子でリズを見つめる。
『商人なんか。』
『そゆこと〜 ほらほら何でもあるよ。何てったってボクだから!』
 わけのわからない、だが妙に説得力のあるセリフを口にしつつ、リズは再び微笑んだ。



01/20(Mon) 17:44:25 うさぎばやし