01/04(Sat) 09:26:35 闇空鴉擁躬

 その後、ハルは必死に走ったり(無言で)してみたものの、謎の少年だか少女だかは息も切らさずについてきた。
 その体力は最早人間かどうかを疑うほどで。
 とうとうハルの方が音を上げて、立ち止まった。
『…お前、どう、言う、体、力…してるん、だよ……?』
 恨みがましい視線を送ってそう言えば、
「ボク体力と足の速さには自信があるんだよ」
 満面の笑みで返されてしまい。
『…………化け物』
 聞こえない様な小さな声で呟けば、
「いやぁ、キミ魔族のくせにもうへばってんの?」
 嫌味を言われた。
『………』
「………」
 無言。
 かたや頬を引きつらせ。
 かたや底を見せない満面の笑み。
『…っち』
 埒があかない、とハルは再び歩き出した。
 もちろん、リズはそれに続いた。



[12] Re:エヌジアズ 2

『ねーお兄さん』
『ハル様だ。』
 憮然とハルが言う。
 むちゃくちゃ素でそんなことを言っている。
 こりゃ天然だ―――。
 何がどう天然なのかは…まぁ置いといて、リズは微妙な面持ちで言葉を続けた。
『さっきリザイアの…不老不死の秘密がどーたらって言ってたけど』
『教えねーぞ。』
『別に良いよ。それにしてもそんな伝説本気で信じてるんだ?』
 と、二人の前が少し開けて小さな段差が現れる。
 ハルは事も無げに飛び降り、リズも少し手間取りつつ無事着地した。
 むぅとハルがリズを見つめる。
『悪いか?』
『別に悪かないけどねー』
 リズはどこかぼんやりした様子で呟いた。
 不審気に、ハルは軽く首を傾げ。
『お前はリザイアに何しに行くんだよ。』
 それを聞いて、リズもまた不審そうな顔をしてハルを見やった。
『…ボク行商人だからねぇ…』
『あ。』
 そういやそうだっけか、とリズが背負う巨大なリュックと、ショルダーバッグを目にとめる。
 リズは可笑しそうに笑った。
『お兄さん、面白いひとだねぇ。』
『ハル様だッつってんだろうがッ!!』
 羞恥からか顔をうっすらと赤くして(傍目からはよくわからないが)ハルが怒鳴る。
 それを見て、リズがこらえきれず吹き出したことはここでは伏せておこう。



01/04(Sat) 21:11:06 うさぎばやし
[13] Re:エヌジアズ 2
「なんだかんだ云って・・」
『ん?』
なんだかんだ云っているうちに港についた。あの突如として現れ、そして去って行った男も船のエンジニアだか、迷子になっただので港を探していた様だが、実をいえばハルの目的地もココだ。当然、リザイアに渡るのだから船を使わなければ行けまい。ココからリザイアはそれほどとまで云わなくとも海の大きさを考えれば遠いと云えないことはない。大体、約3時間ぐらいはかかる。しかし、今から乗っていくなら・・夜になる前に付く事が出来るだろう。急いでいるわけではないが出来るなら早めにいって森の様子をうかがうことぐらいはしておきたい、けれど・・。
『え〜と、あと10分ぐらいで出発かぁ』
懐中時計をズボンのポケットから出して時間を調べているリズを横目で見据える。
『時間的にも調度良しってとこかな?ねぇ?』
「・・俺、乗らない」
やっぱり次のにしよう
『はぁ?!』
「俺、次のに乗る予定だから」
『ちょ、ちょっとそれ嘘臭いぞッ』
「うっせぇよ」
絶対乗らない。てか、こいつと乗るぐらいなら
『なんだよそれッいいじゃないかよ!そんなに拒絶しなくたってッ』
死んだほうがマシ。いや、それは真実、嘘だけれど嫌なのには変わりはない。こいつ、なんだかうまが合わない。
『おーい、シカトかぁ?いじめなのか〜?』
「あのなぁ、俺はお前となんて遊んでる暇ねぇのッ」
『やっぱり拒絶してんじゃんか』
「あ・・」
リズは頬を膨らませ、誰にでもわかる様に不機嫌さを示した。
『本当、人の縁というものを大事にせんやっちゃなぁ』
「フンッお前と同格にするな!」
『どう云う意味さね』
そう聞くとハルは一瞬、間をおいて大きく仰け反る。つまり・・普遍的に、極々普通に、お約束に考えるのだとしたらこれから、自慢が始まるのだ。考えるに。いや、それは・br>


01/05(Sun) 01:00:18 メケ太
[14] Re:エヌジアズ 2
考えるにも満たない。直感だけで十分だ。ハルは怪しげにフフフと笑い出す。はっきりいって影の印象のないハルにはまったく似合わない笑い方だった。しかも手を顎の下にやって芥川のようなポーズ。逢って何日と立っていなくとも腰に手を付けて豪快に笑うほうが彼らしいと、そう思わせてしまう所は彼、そのものの強い個性なのかもしれない。僕ならそんな個性いらないけれど・・。
「いいかッよく聞け!俺はこう見えてもそんじょそこらの餓鬼とは違うんだよッ」
こう見えても・・。自分で行ってしまったぞ、こいつ。
「なんと俺は彼の有名な」
「お〜いッ少年!!」
突如、女の声。それにハルの言葉は空虚のなかに消えていった。
「え・・?」
ハルの視線がリズの頭の上で止まる。どうやら、自分の後ろにその声の正体があったらしい。リズはその視線を追うようにして後ろに振り返る。
「どうした?こんなところで」
女性はもう船の上に乗っており手摺りごしに此方に手を振っていた。長い黒髪は一本の三つ編みに、白衣のような上着と共に風になびかせていた。と、いきなり重い汽笛の音が鳴り響く。
「お〜い。乗らんのかね?」
――あ。
ハルとリズは駆け足で船に飛び乗った。

「いやぁ、偶然だね」
「・・カゲ姉、何してんの?」
「まぁ、ちょっとメティシアに用事があったんだ。それに私だけではないぞ、トウジもいる」
今は部屋で寝てるがな。そういいながら愉快そうに笑うとちらりとリズを見やる。眼鏡の奥の強い桜色の瞳が酷く印象的だ。



01/05(Sun) 01:32:31 メケ太
[15] Re:エヌジアズ 2
「それで?この子はお友達かね?」
「ちが」
『リザイアの恵みはいらんかね?』
・・・。
「違うッ!!」
ハルは目を大きく開けてこれでもかというほどの反論の一声。
「・・なんだい。その云い方は」
どうやら沈黙のうちに二人の間で無視することに暗黙の了解が得られたらしい。二人は話を何事も無かったように、戻した。
「まぁ、本人はああ云っているが察するに漫才でもないのだろう?一応自己紹介をさせてもらうよ。私はカゲコだ」
『あ、僕はリズです』
徹底的に無視を貫くらしい。彼女はハルに向けた呆れ顔をこちらに向けるやにこやかな笑顔に戻す。てか・・漫才ってなんだ。
「カゲ姉・・。それ、“満更”」
「ああ、悪いね。どうも国語は苦手なんだ」
満更と漫才・・。普通、苦手でもこればかりは間違えないと思うが・・。

ザザン・・ッ。

波が船の側面に従って高く、そして上り弾かれる。出発し始めた船上は波に揺られて多少ぐらつき始めた。カゲコはそれに体制を少し崩し、それを察するとハルはカゲコに走り寄った。それは・・彼女の肩腕のことでなのだとリズははとして察する。
「大丈夫だよ。ハル」
彼女の右片腕・・。それはどう見てもないのである。袖に腕が通っていない。つまり、根元から・・いや、肩幅はちゃんとしているから根元から第一間接の間になくなっているのか。なにか・・なにか口調とその雰囲気から見るに似合わない、大袈裟な傷である。元からないと考える事も出来るがその場合、大概は義腕をつける。つまり・・無いのではない。失くしたのだ。
「中に、入ろうか?」
リズもカゲコに寄りそった。



01/05(Sun) 02:28:29 メケ太
[16] Re:エヌジアズ 2
 あぁ、おもしろくなりそうだ。
 心の中で小さく呟く。
 取りあえず今は、『彼女』に自分を気づかせてあげようか?


「ねぇ、ハル坊」
『俺様は“坊”じゃねぇっ!!』
 そう叫んで、坊扱いされたハルはぐっと拳を握る。
 どこをどう多めに見ても15歳が限度と言った風体の少年(少女?)に坊や扱いされるとはどう言う事か。
 しかし考えてみれば、先ほど森で会った青年も“迷子”と言っていた。明らかに子がつくような年の者ではなかったにも関わらず。
『………?』
 考え出して頭を傾げてしまったハルを、原因とも言えるリズはぐいぐいと押しだした。
『なっ!?』
「ボク、あのお姉さんとお話しあるの」
『………商売する気か?』
 言った瞬間、リズの拳が見まわれた。
『…っ』
 頭を抱え込んだハルに、しかし性別不明の子供は冷たい。
「キミさぁ、ちょっと失礼だよ?」
 ニッコリニコニコ。
 ぱっと見は満面の笑み(営業?)。実際は氷も割れる吹雪の笑顔。
「ほら、あっち行って」
 何も解らないまま、結局ハルはそこから追い出された。



01/05(Sun) 10:11:47 闇空鴉擁躬
[17] Re:エヌジアズ 2
『ふぁぁ・・何だってんだよ』
リズに追い出された苛立ちもあって、立ち入り禁止の通路など守る気にもならなかった。ヒョイッと柵を乗り越えたとこで赤髪の男が出てきた・・〔迷子〕になってたヤツだ。“フラァ”と出てきたその男は船の柵に前のめりに倒れこんだ。
『オイ・・大丈夫か?』
「・・・。」
ハルが聞くと、唐突にすぐ後ろのドアから声が聞こえた。
『メルー!お前大丈夫かぁ?船酔いかァ?』
1人の船乗り(エンジニア?)がドアから顔を出し、話し掛けてきた。
『なんだ?そいつ・・どっかで知り合った友達か?』
「・・誰が?」
毎回、船が止まるとこでは降りて、街を見てはいたが友達というか人と馴れ合った記憶はない。そう思いながら振り返ると、さっき森であったハルの顔がある。偶然にしてはできすぎている偶然にただ驚いていた。
『ハロゥ!船乗りなのに酔ってるのか?』
「・・・なッ・・?」
立ち入り禁止の通路だと言う事を気にしたようなので
『いーじゃんべっつに・・気にする事無いだろ?』
お前には言葉無いのか?忘れていた腹がまた立ってきた。
『おーい・・!大丈夫なら助けろ〜?』
そこにさっきの船乗り(エンジニア?)が声を掛ける。姿はもうドアの中だ。相当忙しいのだろう。
「解った・・。」
そうまた呟いて、またもや逃げるように去って行こうとするメルシーをひっ捕まえると、かねてからの疑問を口にした。
『メルシーって女?男?』
こないだから自分がこの何にも喋んないヤツに対して、疑問しか投げかけてないとはどうかと思うが、そこは思いつき仕方のない産物なのだ。
「・・男」
逃げ足はハルより速そうだった。メルシーはドアを乱暴に開けるとさっさと中に入っていった。
『そりゃそうだ。あの肩で女は無いか』
意外とがっしりしてたメルシーを思い出すと今度は上か



01/05(Sun) 23:41:24 摩緒
[18] Re:エヌジアズ 2
話し掛けられた。
『にーちゃん、あいつの友達かい?』
『へ・・』
さっきからここの船員は友達かい?が多くないか?っても2人しか会ってない。
『や・・なんだろうね?さっき森であったんだ』
『はぁん・・森でねえ。なんだい?旅でもしてんのかい』
『まあそんなとこ、おじさんは?』
ジオサイドの仲間と旅行中vとは言えない。
『おじさんはあいつのオジサンだ。そうそう、あいつ連れてってくれねえか』
『ハァッ?!!』
『船の上じゃあ引きこもりもとい、内気もなおんねえ。』
『内気ィ??!』
喋んないのは内気のせいなのか?ってか猫のこじゃああるまいし『アリガトウ』なんて貰える訳が無い。しかも、内気のおお墨付き。同じ船の船員、オジサンが言うんだから間違えは無い。
『いや、いくら俺様でも困るから』
『あいつなァ・・俺ともまともに話してもくれなんだ。いつかは・・って期待してたんだが・・あいつには外の世界でもまれるのが一番と見た!!ハハハ〜ってな事で任した。降りるときに連れてってくれ。じゃあなー』
有無を言わさずまくし立てるとメルシーのオジサンは去っていった



01/05(Sun) 23:43:28 摩緒
[19] Re:エヌジアズ 2
 いやぁ、久しぶりだな。なになに?今回はどんな御用だい?それともまたふらふらしているだけかい?それにしたってこんなところまで来ているんだな。おおっと随分揺れるな。まぁ、すわろうじゃぁないか。何?あの人・・・?ああ、彼ならいつも通りさ。フフ、君らしくもないな。そんな社交辞令。彼じゃなくとも私達は一行に変わることなどないと、そんなこと、君はもう知っているんじゃぁないか?え?なぜかって・・それは“なんとなく”だよ。予想・・いや、直感だ。当りだろう?どうせ。君も変わらないからねぇ。ああ、まったく変わってない。それとも・・?何か変わったのかい?

ザザン・・・

「・・ハル」
「?」
客室までの渡り廊下を歩いていると聞き覚えのある声に出会った。しかし今度は男の声だ。
「あ」
後ろへ振返ると共にさきほどカゲコに聞いた記憶が喚起された。
「兄ィッ!?」
「ん」
どこのやっちゃんだといわんばかりの呼び名を受けた男はカゲコのいっていたトウジである。ハルはハルなりに彼の事を尊敬の意をこめて兄ィなどと呼んでいるが、彼の風貌といえばそんな族っぽさよりも、どこかヴィジュアルの線を踏んでいる。アンバランスに切られた前髪に隠れる右目。唇に1つ、目の上に2つ、眉を挟んで1つずつ付けられたピアス。比較的小柄な体つきにルックスは中々で、一目あまり良い印象は受けないが傍観するとあってはハルも正直憧れる格好良さがある。しかしそれは飽く迄も傍観するなら、の話しであって・・。
「なにやってんだ?」
「俺はちょっと・・ってか、兄ィこそ何やってんのさ」
ハルはなんとなく言葉を濁す。一瞬それについて突っ込まれるかと思ったが、トウジは案外簡単にひいた。
「俺はカゲコを探してる」
いや、そういう意味で聞いたわけではないのだが・・。



01/06(Mon) 02:02:17 メケ太
[20] Re:エヌジアズ 2
「逢ったか?」
そう問うなり、トウジはハルを追い抜かし歩きだした。てか、答えは待たないんですか・・?
「兄ィ・・」
ハルは深く溜め息をついた。つまりは・・ここなのである。トウジを“傍観するだけなら”と条件付ける壁。人に合わせる事をしないこと。別の話題、別の行動、別の雰囲気・・。それはただ1つだけではない。形にならないものから目に見えるものまで。例えば・・首周りの細かな引っかき傷の痕。隠そうともせず露出されたその部分が赤黒く縦横無尽に彩られていた。それが何の傷で何の為に付いた傷かだなんて、この人なら気軽に答えてくれるだろうが、それでも・・聞いた事はない。なんだかまったく・・別だから。
「カゲ姉なら客室にいるよ。でも今いっても無駄だよ」
「客室か」
ほら、聞かない。
「リズが居るから駄目だって」
「リズ?」
眉を吊り上げるそんな仕草が肩ごしに見えた。
「訳わかんねぇ商売人」
「商売人?」
何故か、ふと笑っていた。
仕草が見えた。
「・・兄ィ?」
もしかして逢ったことがあるのだろうか?カゲ姉は知らなかったのに?それとも・・個人的な知り合いなんだろうか?まぁ、なんにせよ
「そっち、道違う」



01/06(Mon) 02:32:33 メケ太
[21] Re:エヌジアズ 2
 船は順調に北東方面に上昇し、各スピーカーからリザイアの港が近いことが通知される。ハルはそれをやけにフカフカするソファーに身をもたれながら聞いていた。あれから客室につくと案の定というかなんというか・・兄ィが止めるハルの言葉を聞くはずもなくドアを開け、強引にも中に進入したのだった。強引にもといってもその行為を自分意外に誰も止める者はおらず、カゲ姉も、ハルを追い出した当のリズも何事もないように受け入れた。そうして拍子抜けてから2時間あまりがたった。その時間の間これといって何をしていたのか・・自分自身、覚えていなかったりする。いや、覚えていないというより真実、何もしていなかったからただ思い出すほどのものがないというだけなのだが・・。兄ィはココに来てカゲ姉の隣に座ったまま寝入ってしまうし、かといって二人は何気ない話しに花を咲かせているし・・。カゲ姉の振る話題は大抵、自分には難しすぎて解らない事だらけでその内容がどう意図するものなのか、どんな重要性があるのか、そんな事もよく解らないのだけど、何気ない話しには変わり無いだろう。リズはそんな話題にもただ淡々と答えていた。前にも・・自分が追い出された時もこんな話しをしていたのだろうか?ハルは蚊帳の外でただ、一人そんなことを漠然と考えていた。自分を省く意味はないだろうに・・。どんなに考えたって、ただ謎だけが残るだけだったが。
「ところで少年。君はリザイアに行くとか」
「え?!」
アナウンスで話しが途切れたせいで話題はまたもや180℃転換。ハルは余りにいきなりだったので少々驚いて声が大きくなってしまった。
「・・うん、ちょっと用事で」
「不老不死の秘密を探すんだろう」
このお喋りッ!ハルはキッ、とリズを睨みつけたが知らぬ顔でそっぽを向かれた。



01/09(Thu) 19:18:48 メケ太
[22] Re:エヌジアズ 2
「いや、あの・・」
「何もそう気まずくならんでも良いじゃないか」
フフと笑う。
「好奇心旺盛で何よりだよ」
――気まずくならんでも・・。
確かにそうかもしれない。けれども自分でも何故かそうならずにはいられなかった。何故だろう。何故だろう。
「レポートを期待しているよ」
ふとするとトウジが薄目でこっちを見やるのが見えた。

二人はこのままアデ―ル大陸まで向かうらしく、リザイア大陸で下りるハル達とはここでお別れとなった。
「それじゃぁ」
二人は港におりてあの時のように手を振る。今度はトウジも一緒だ。トウジは手を振っては来なかったが、ハルは二人分、手を振った。が。
『あああああ〜〜ッ』
と、下り口から情けない声。
「・・あ」
不審。そしてなんとなく不安な気持ちを抱きながらそちらに視線を送るとそこには
『オトコオンナッ』
・・お前が云うなよ。
それは確かにメルシーの姿。情けなく転がる様に・・いや、まさしく下り口から転がりながら無残にも地べたに叩きつけられる。
ハルは厭厭しくも思い出す事があった。
『おいッ!そいつの事、頼んだぞ』
これだ・・。メルシーを連れて行くという件。本気にしていなかったが、あれは真面目にマジだったらしい。てか、あのオヤジ・・ッ。
「ちょ、ちょっと待てッ!!」
そう云った途端、タイミングを謀ったかのように出航しだす船は止まる気配なく港からだんだんと離れて行く。下り口まで仕舞われて、しかも動き出した船にハルはどうすることも出来るわけがなく、ただ夕日に向かって消えて行く船を見て
「ばかやろ―――ッ」
と、叫んだ。



01/09(Thu) 19:42:58 メケ太