12/27(Fri) 19:55:12 闇空鴉擁躬
世界を創造した後、創世神は我々動植物達と同時に、二人の創物神を創った。太陽を司る男神アデュークと、月を司る女神リザイア。
創世神は二人に全てを任せると、自ら世界の核となり、世界そのものとなった。
その後、二人はそれぞれ、一つずつ大陸を作った。
アデュークが創ったのは、光溢れる、暖かな土地。
一方リザイアが創ったのは、薄暗い、森が鬱蒼と生い茂った土地。
アデュークの創った大陸には、大勢の人間達が住んだ。強い日差しの元で、多くの作物を作った。
リザイアの創った大陸には、わずかな人間達と、魔族が住んだ。魔族は森に住み、人間達は一定の区間を居住地とした。
アデュークの民達はそれぞれで作物を、リザイアの民達は森の恵みを得て、生活をした。
そして現在、我々は創世神と二人の創物神の恵みによって、こうして生きているのである。
――――ディスポリス国立大学創造学科教授 ディニシス・ロイド著『現代と神』より、一部抜粋
[2] Re:NGAZ 1
今のは終らない物語の序文です。いえいえ、本当に終らないわけではありません。ただ、それを決めるのはあなたです。それまで十分の耳をお傾け下さい。さぁ、続きを話しましょう。時は世界創生から2000と3年余り。世の中は着々と進歩の道を辿り、魔の威力を扱った魔族の超的威力の他、科学というまったくの異次元から人間は機械と云うものを生み出した。そして未だ各々の国と都市の秩序のなかで魔族と人間は共存を続ける。それがココにある世界の全てです。と、一言でいいましても世界はやはり広い。その分、摩訶不思議とは云いませんでも様々な者が居まして例えば、
愛を探してさ迷う歌歌いが居たり
若くも魔法を扱う美少女が居たり
引きこもりのエンジニアが居たり
世界を旅する謎の行商人が居たり
また、それを追う謎の男が居たり
はたまた気紛れに世界を脅かすグループが居たりしたり・・と。
これから話す物語はこの世界の・・あ、ほらそこにもこの世界の一員が・・
「はっくしょぅんッ!!」
少し肌寒い風に鼻を鳴らす少年の影。肌は浅黒く、そのわりに長め髪はまったく正反対の白さである少年はそれは風も冷たいであろう丘の先端に立っていた。そこには墓であろう事が一目でわかる十字の墓石とカスミソウの花が一本。それを少年は暖かな目で見つめ、へへと1つ笑う。
――大丈夫だよ。
そう呟いてドカッとその場に座る。と、少年は敏感にも姿勢を立て直し、両足を立たせるとハと後ろ向いた。
「ッチ」
そして少年は舌打ちを打つなり走りだし草陰に消えて行った。
01/01(Wed) 22:34:53 メケ太
[3] Re:NGAZ 1
少年と入れ違いにやってきたのは奇妙な弦楽器を持った男だった。金色に流れる髪と深い紫色の瞳。冷たく吹く風に身を縮めながら、ゆっくりとした足取りで歩いてきた。
ふと視線を上げると、少し離れた場所に石墓が一つ。人工的に作られた十字の墓標は、草や木ばかり生えているこの場所にどこか不思議な違和感を感じさせた。
小さく首を傾げると、十字架に近付く。そこにはカスミソウノ花が一本、今にも風に飛ばされそうになりながらそこにあった。
「誰かの墓なんかなぁ…?」
墓標の前に立ち、じっと見つめてみる。
何故かその場所だけ、少し静かな気がした。
「…安らかに眠ってくださいな。」
見つめていた目を少し細めると、胸の前でゆっくり十字を切る。
雲がかかり少し暗くなった空は今にも雨が降り出しそうで、流れてくる風にも微かな湿気が含まれていた。
「あかんなぁ、もう少しここに居たいねんけど…しゃあないな」
ポンポンと、誰のものかもわからない墓標を優しく撫で、微笑む。
「誰か知らんけど、また会おな。」
ぽつりとそう呟き墓標に背を向ける。
腕を上げ大きく背筋を伸ばすと、ゆっくりと辺りに視線を巡らせた。
01/02(Thu) 01:23:04 如月暁人
[4] Re:NGAZ 1
一方、走り去った少年。
彼は薄暗い森を悠々と歩く。
夜のその森は暗くいが、彼にはさして問題ではなった。
しかし彼は突然その動きを止める。
『…?』
後ろから、自分以外から発せられる音を聞いたのだ。
こんな夜中に、しかも森に。
あきらかにおかしい。
その暗闇を凝視していると、がさがさと草が鳴る。
身構えて様子を伺う。
『誰だ!?』
誰何の声がやたらと暗い森に響く。
しばらくの静寂があたりを包む。
身構えたままその草陰を凝視していると、ゆっくりとした動作で草陰から人間らしいモノが現れた。
「リザイアの恵みはいらんかね?」
『……は?』
突然現れた、子供。年のころは13,4程度にしか見えない。背負っているのは身体に不似合いなほど大きなリュックサックと、肩掛けカバン。
「今なら薬草もお安くするよ?」
にこにこ笑いながら、茶色い瞳で見上げてくる。
『…なんだよお前』
もうすっかり呆気に取られて、構える事すら忘れていた。
「ボク? 行商人のリズ。かの創物神リザイアから名前とってるんだよ?」
ニコニコと人懐っこい笑顔で、少年だか少女だかわからない――肉体的に、どちらでもさして問題がない――子供は、右手を差し出した。
01/02(Thu) 09:23:13 闇空鴉擁躬
[5] Re:NGAZ 1
「…だって、飽きちゃったんだもの。」
そう言って少女は、その身体にはとても似合わない艶やかな笑みを浮かべる。
「あなたたち、いつも同じことしか言わないでしょ。
面白くも無いことを四六時中口にし続けて。
あたしは飽きちゃった。だからもう行くわね。」
良いでしょ?と、少女は小首を傾げる。その様子は年相応のそれだが、しかし顔には氷の笑みを浮かべたまま。
対峙する者たちは怒ったように彼女を怒鳴りつける。
それを見、聞いて、少女はむっと顔をしかめた。
「あたしを最初に誘ったのはあなたたちでしょ。
…なのに、…あんたらにンなこと言う権利なんてありゃしないのよッ!」
ぼぅんっ!!
派手な音と共にショッキングピンクの煙が辺り一面を包む。
「はあぁ。大人ってやーね。」
少女は大げさに肩をすくめ、しかも男ばっかりだし、などとぶつくさ言いながら手近な窓に手をかけた。
最後の抵抗とばかりに、煙の中から何やら怒声が響いたが。
「……馬鹿?」
腕に古いぬいぐるみを抱いて、少女は再び微笑んだ。
そして、ひらりと飛び降りる。
さてと。
今度は誰と遊ぼうか?
01/02(Thu) 19:52:22 うさぎばやし
[6] Re:NGAZ 1
「・・なんだよ?」
『ん?』
「だぁからッ!なんだよこの手はッ」
少年はこの少女だか少年だか・・ともかくリスだかリズだかと名乗り、差し出したその手を勢い良く叩く、とその前に身軽にも避けられてしまい空振り。その反動で少年はドサと土に身体を擦りつけるように勢い良く転んだ。
『なんだ、買ってくれないの?』
つまんない。そんな顔で少年を眼下に見下ろす。
『てか、お兄さん大丈夫かい?』
「余計なお世話だッ!」
――それに俺は―――ッ。
そう云いながら態勢を立て直し、リズに向けて人差し指を差し出す。そしてにんまりと得意げに、さも自信たっぷりに。しかも大声で
「俺はこの世で一番知られている大人気ボーイッハル様だッ!!」
とキメた。いや、キメたのかキマっているのかもよく解らないが
一応・・キマっているらしい・・。
『はぁ・・』
リズは何故だかこのなんの脈絡のないキメ台詞の雰囲気に飲まれて感嘆の息を漏らした。
「と、云うわけだから俺は平気なのだ」
なるほど、こう続くらしい。いや・・
『ハル様・・?』
「そう、ハル様」
やはりよく解らない。しかしハルと名乗った彼はビッと、得意げに親指を付きたてた。
「それにリザイアの恵みにはこれから会いに行くからいいんだよ」
『ほぅ』
「なんだよ?」
『は?』
「そんなに聞きたいのか?」
『はい?』
いつ、誰が、何処で何時何分何秒にそんなこと尋ねたのか。それともこれは空耳か?ハルはにやにやとしながら、しょうがないな〜と嫌にもったいぶった態度でリズに見据える。そ、そんなに喋りたいのか・・この男。
「俺はリザイアにある彼の伝説を追っているのだ」
そうこう思考を廻らしている間にも会話は否応無しに始められた。
『伝説?』
しかしここは商売人としてのご愛嬌。笑顔と順応は忘れません。例え、それが引きつっ
01/02(Thu) 23:26:40 メケ太
[7] Re:NGAZ 1
ていたとしても・・頑張れ自分。
「なんでもリザイアにある深い森には不老不死の秘密が隠されているらしいのだ。それは・・」
『ん?』
幽かに、森に草音が響く。風音、木々の揺れ・・いや、それは確かに何かが此方へ近付いてくる音。土を踏み、草を分けて近付いてくる。
「ヤバッ・・くそッ、お前が話し掛けたりするから」
『・・はい?』
何時、何があろうとも愛嬌だけは忘れるべからず。
「せっかく俺が身を隠していたっつーのにッ」
『・・はぁ』
笑顔大切。これ、鉄則。
「どけよ。バーカッ」
『・・あははは』
お前こそ。
ガッ!!
「な、なにすんだ!!?」
『うるせぇッ馬鹿に一人でぺちゃくちゃ喋繰りやがってッほら、逃げてぇんなら逃げてみろ!!』
リズはそう云いつつハルの身体を押さえつける・・いや、絡めとったといったほうが正しいだろうか。当然ハルは動けずその場で無力にも四肢をばたつかせた。
「や、やめ・・ッ」
そうしている間にもだんだんと草音は大きくなる。暗く、光りの通らない森でその音のする先は見えない。だんだんと、近付いてくる。だんだんと・・
01/02(Thu) 23:45:52 メケ太
[8] Re:NGAZ 1
ガサッ・・
音ともに人らしい姿が顔を出した。服装からして男らしいが不思議な体勢の二人に少し驚き、
「・・ッ?」
声にならない声を発した。迷子らしい赤髪の男は、息も絶え絶え、人(?)の声のするほうに向かってきてたようだった。
『・・・』
ハルはリズから解放されると、あんた誰?そういいかけた。それをよそに、リズはその男らしき人に話しかけた。
『リザイヤの恵みはいらんかね?』
「・・・。」
ひざに手を当て肩で息をしてない事から、話はできる様にまで回復しているようだが、この男には話す気が無いようだった。と、いうよりもその男からすれば話しかけられなかった。その男がどうしようか考えてる間三人は微妙な雰囲気に飲まれた。
「あ・・の・・・」
早くその場を立ち去りたい男がやっと口を開いた
『ハイ。今なら薬草もお安くするよ!・・その傷もすぐ治る薬草もあります』
「・・海はどっちですか?・・」
その、二人のかみ合わない会話を耳にして今まで黙っていたハルが口を開いた。
『どっちかが先に言ったらどうなのさ?』
男が口を閉じたのでリズは話すことにした。
『薬草いりますか?』
「・・ください・・。・・・・海ってどっちですか?」
『あっち』
それはハルが指で示していた。アリガトウそう消えそうな声を発し、薬草を買って去ろうとした男をハルは袖を引っ張って止めた。
『あんた誰?何してる人?』
一番最初に切り出そうとした言葉だった。それを聞いた男は少し身を引いて名前を言った。
「・・私・・は・・メルシーです。・・・船のエンジニアをしてます。」
そこまでいうと女っぽい名前なのを恥ずかしがってか早々に立ち去った。
01/03(Fri) 14:52:27 摩緒 [Mail]
[9] Re:NGAZ 1
「お、おいッ待てよ」
振りほどかれた手を立ち去ったその方に向けるがもうその姿はない。虚しくも手は空をつかむ。
『迷子かぁ・・船のエンジニアがこんなとこで何してたんだろ?』
リズは薬草代のお金を手の平でコロコロと転がして疑問の言葉とは裏腹にその顔は嬉しそうに笑みをたたえる。しかし、ハルと目が合うやその表情はニヤリと妙に厭らしい顔に変わる。
『安心した?』
「は?」
何を云っているのか。いや、これはただの云いたい事の序説にしかすぎない。そしてその内容はもう明確だ。
『誰からか見つからない様にしてたんでしょ?その様子じゃ見当違いだったぽいけど?ん?』
「な・・ッ」
この女、詮索ときやがった。
『あ、図星だ』
そしてやけに勘がいい。やはり人当たりを商売の要にする行商人だ。いや、むしろこのぐらいは勘というに及ばないのかもしれない。リズはいっそう嬉しそうに目を大きく広げた。ヤバイ、このままの流れで行くとこの女
『誰から逃げてたのかな?』
・・やはり予想通りの言葉を吐いた。完全にこの空気はリズのペースだ。かといってそれを逆転させるまでの台詞も思いつかない。今の自分といったらただ、その笑みの前に怯むのみだ。別の意味で蛇に睨まれたかえるのような・・そんな硬直状態。だとしたら・・
「・・・じゃぁな」
『ちょ、ちょっとッ』
逃げるしかない。
『まってよッ質問してる途中じゃぁないか』
「うるせーッ俺は忙しいっていってんだろ!」
『そんなの初耳だよ』
ハルは向きを180℃変え、草叢の中を再び歩き出した。しかし・・
『ねぇ、待ってったら』
・・付いてくる。
少し早足にして、歩幅を広げて、走りぬけて
『ねぇ、ったら!』
―――ザザザザザザザザザッ
「あー――ッ!!なんで付いてくんだよッ」
『だぁから、質問』
「質問ってなぁ・・」
・br>
01/04(Sat) 00:13:00 メケ太
[10] Re:NGAZ 1
つか、そんなことよりもなによりも・・。この女、なんつー体力してんだよ。肩で息をするハルを横目に当の本人はあんなに走ったと言うのに汗1つかいていやしない。この疲労感はさっきから叫んでいたせいもあるのかもしれない。しかし、それにしたって・・ねぇ。見掛けは何処から見ても人間だし、この小柄な身体にそんな持久力があるようには見えなかった。それは男であっても女であっても、だ。
『それに、僕も行くんだもん』
「はぁ?何処にだよ」
嫌な予感がした。非常に嫌な予感が。それはリズのした満面の笑みからかもしれないし、はたまた自分の直感からかもしれない。いや、この際そんな些細な事はどうでもいい、ようは結果が・・当たらなければ良い。いつか大預言者がした世界滅亡の予言のように見事に外れてくれれば良い。そしてリズが口をあけたその瞬間、ハルに激しく鳥肌がたった。大予言のその結果が・・。
『僕もリザイアに行くのよん』
世界滅亡だった。
01/04(Sat) 00:28:57 メケ太