あたりを見回すと3体の残骸が転がっている。そのうちの一体は無残にも切り裂かれていた。
「ふぅっ☆お掃除かんりょー♪気分爽快〜ってね。」
 うっとおしい敵もさっぱり片付き浮かれ気分のエルク。だが大概そういった場面には水をさしたがる者がいるというのが物語の相場と決まっている。
『でもきっとまたすぐにでも新しいのが“ゴハン”にありつこうとしてご登場〜♪ってな感じになるやもしれんなぁ〜。』
「うぅっ…なんでそういう事をサラっと言えるの…?」

  ≪ガサッ…≫

「まったくもぉ〜!そんな事ばっかり言ってるとピンチの時助けてやンないんだからね〜!?」
『うぬに助けられる事なぞ天地がひっくり返ってもありえぬわ〜!』
「なぁ〜にぃ〜!!?」

  ≪ズズズッ…≫

『エルクっ!危ない!!』
「ぁあっ!」
 振りかえると目の前にはすでに大口をあけた巨大魔物の鋭い牙が覆いかぶさろうとしたところだった。 
『はあっ!!』
 次の瞬間彼女の目の前にいた魔物は一刀両断に引き千切られた。
  ≪ブチブチッ…!≫
 魔物の内臓が嫌な音を立てて引き裂かれエルクの目の前に落ちる。
「Σ@□@〜〜〜!!」
 スピアロッドを硬く握り締めたままシャカシャカシャカと一気に後ずさり。かなりグロテスクな光景にリゲルも眉をよせて口に手を当てていた。だがなぜかインは冷静にその場を眺めていた。
『ふぅ〜っ…』
 魔物を一刀両断にした人物、またエルクをすくった人物はリグだった。乱れた蒼髪を片手で直しつつ、剣に付着したえぐい物質を振り払う。
「リグありがとう」
 ついさきほどまで緊張していたせいもあり顔が少し引きつっていた。
『ったく、敵の気配くらい気をつけろよ…お前今自分の置かれてる立場わかってんのか!?』
 彼のキツめの言葉にめずらしくエルクはたじたじと、口に手を持っていきながら言葉を返す。
「ご…ごめんなさいっ…」
 ぺこりと素直に頭を下げる。するとリグはふぅっと軽くため息をつくとポンっと彼女の頭に手を置きくしゃっとなでる。
『次からはもーちと気を引き締めてろよ』
 そうぶっきら棒に言い放つと彼はリゲルの方に歩み寄った。
「リグ…」
 彼女は片手でなでられた頭を押さえながらそうつぶやくともう一度一言。
「ありがとう!!」


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(修正:1) リグはエルクに背を向けたまま、軽く手を振る。
「リグ。凄かったね…」
リゲルに声を掛けられる。
「あ…?ああ…まあな。」
いきなり顔を覗き込まれたため、曖昧な返事で返してしまう。

…リグはついさっきの場面を思い出してみる。

異常な点が一つ。

自分はあんなに強かっただろうか…?

自分の身長の倍以上もあるような怪獣を

一撃で


「…………おい、ヴツカ。」
呼ばれてヴツカは振り返る。
『なんだ?なにか用か?』
「お前さっきなにかやったか?」
とりあえず。ありそうな線から当たってみる。
『…なにかとは、なんだ?』
「さっき怪獣がエルクに襲いかかったときだ。
あんなでかい奴、俺の力じゃ一撃で倒せるワケがねぇんだ。」
『フム…』
ヴツカは顎に手をあてて少し考えたかとおもうと、
おもむろにリゲルを指さした。
『そのときだったら、あいつから
かなり大きな力の波動を感じたぞ。』
考えてもいなかった名前を出され、リグは少なからず驚く。
「…はぁ…?…あいつが…?」
二人の会話は誰にも聞かれていなかったらしく。
残りの四人は、少し離れた場所でしゃべっているようだった。
リゲル本人も、まだそのことに気が付かずにいる…
02/05/08 23:18 『修正』

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えせばんくる
(『リゲルが…?まさか、な…』)
 疑問点が心の中に引っ掛かってはいるのだが、とりあえずヴツカとともに4人のもとへと戻る事にした。
『おぅおぅ。うぬもなかなかやりおるのぉ〜♪』
 感心感心といった口調でヨウがポンポンとリグの肩を叩く。身長がリグよりも低いためちょっぴり見上げた風な感じ。
『リグ、汚れてるよ?』
『あっ……あぁ…』
 さきほど思っていた疑問を尋ねようか尋ねまいか迷ったが今はその時ではないと判断したリグは口ごもりながらまたしても曖昧な返事をかえした。
『リグ?さっきから口ごもってるけど何か?』
 白い自分のハンカチで、返り血で汚れた彼の頬をぬぐいながら聞く。次に身体についたほこりを手でパンパンと払い落とした。
『はいっ。できた☆』
『ぁ。ありがとな…』
 そんなふたりを微笑みながら見ていたエルクが軽く腕組みをしながら口を開いた。
「リゲルって家庭的だよねぇ〜☆いい奥さんになれそうって感じがする。」
『えぇっ!?そ…そんな事ないって…』
『単にうぬができとらんだけじゃ』
「は〜い!そこお黙り!?」
 エルクはどこからともなく取り出したホイッスルをピッピーっと吹きながらヨウを指差す。
『他人を指差すとな?まったくけしからんのぅ…』
 口を尖らせながらブツブツと嫌味を唱えるヨウを横目に彼女は続けた。
「あとリグとリゲルってすごく仲がいいよね☆いいね。そういうのって。」
 最後の言葉を言いきったかきらなかったかくらいの時、彼女の顔が微笑みながらもふとくぐもったかの様に見えた。
 だがそれはあまりに些細な表情だったのでほとんど誰の気にも止まらなかった。
『どうして汝はそう思うのだ?』
 ヴツカは“我には解らぬぞ?”という微妙な顔をしながら彼女を見つめる。
「え…う〜ん、そんなに仲がいいのってさ、ちょっとうらやましいなぁって。僕、記憶無くなってからそんなにたってなかったからココくるまであんまし友達みたいなのいなかったしってね」
 テヘへと舌を出しながら頭をかく姿は少し寂しそうだった。
『でもさ、今はこんなに仲間がいるよ?』
「うん。だからもう悲しくないよ。でもちょっと前は少し寂しかったなぁ〜って」
『だぁ〜いじょうぶ☆うぬはわしがからかってやるから寂しがる必要なぞないぞ♪(笑)』
「させるか!(怒)」
 ヨウのからかいにエルクは半分本気(!?)でスピアロッドを構えながら追いかける。
「覚悟ー!」
『そんなうぬの攻撃にあたるほどわしは腐っちゃおらぬぞ!』
「むきー!(怒)」
 そのいつもと変わらぬ風景を微笑みながら“ほぉっておき”残りの4人は休息をとる事にした………。

 
02/05/08 23:29 『修正』

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管理人
 適当なところに座っていると、インが何やら不審な動きをしだした。
 3人が不思議そうに見ていると、彼女はどこからともなく『お茶セット』――お盆に急須・茶筒・湯呑4つ・ヤカン(のような物体)・何かよくわからないが茶色く丸くて平べったいお菓子(族に言うオセンベイ)――を取り出してきた。

 ……………………………

 呆気に取られる3人。インは気にせずお茶の用意をしはじめる。
 そして呆然としている3人にお茶を手渡す。
「熱いですから、気をつけてくださいね」
 にこりともせずそう言う。リゲル的観察では、インは淡々としていると言うより――確かに淡々ともしているが――表情がないのだ。
 お茶に気がついたヨウ、ものすごいスピードでインのところまでやってくる。エルクは張るか遠くで(?)『待て――っ!!(怒)』と叫んでいる。
「わしの分の茶はあるか?」
「ないわね」(←即答)
 ………………
 またしても、間。ヨウの顔は『悲しい』そのもの。
 仕方なく、インは自分の手にしていた湯呑を渡す。途端、ヨウの顔がぱぁっと明るくなる。
 結局のところ、ヨウはインの隣でお茶を啜りながら煎餅をバリボリと食べている事になった。
 インは本当に呆れたと言った雰囲気だ。……リゲル的観察――どうやらインはヨウに対してはある程度表情があるようだ。
 それに気づいたヨウ、にやりと笑い、
「大好きじゃー♪」
 と言ってインの頬にキスをした。……丁度、エルクが息を切らしながら追いついた時だ。
『!!!!』
 エルクはその瞬間をもろに見てしまい、顔を赤く染めた。インはヨウ顔をの顔を押し返し、リゲルは軽く苦笑い、リグはふとベルを思い出してしまい、頭を抱えた。ヴツカに至っては気にもかけずに煎餅を珍しい食べ物だな、と思いながら食べていた。
『インに何やってるのさ――――――――っっっ!!(しかも僕の分のお茶は!?)』(怒)
 それこそ怒り狂ってヨウに向かってスピアロッドを構えた。
「……何って、見た通りじゃ」
 にやり、とヨウは笑みを浮かべた。
02/05/09 19:26 『修正』

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えせばんくる
「も〜!ベルみたいな(?)こと人前でしてんじゃないの!」
 がばっとインをかばうように自分の腕に抱えヨウから遠ざける。距離が開くと同時、それに比例してヨウの表情が険しいものへと変わる。
『うぬ!わしの(!?)インを奪い去るでない!』
『…』
「いつあんたのモノになったんだー!?」
『ずぅ〜っと前からじゃー!』
 すると突然今まで黙りこんでいたヴツカが声を張り上げた。
『えぇ〜い!!!汝ら少しは黙って休息を楽しむということができんのかー!?』
 いつのまにかツカツカと側に来ていたヴツカは片手ずつでエルク・ヨウの頭を張っ倒す。しかも怒りにまかせて……。
「はぅあーっ!」
『かはぁぁっ!』
 ふたりはそれぞれ逆の方向にすっとび壁にぶち当たり、倒れ、失神した。そばにいたインは気絶しているヨウのもとで正座をし、手を合わせていた。どこからともなく取り出した数珠が気になるが…。

――――――水。
 そう。あたりを見渡してもいちめん、もちろん自分を取り囲んでいるのも氷だった。だが寒いという感覚はまったくもって感じなかった。どちらかといえば丁度良い温度だ。なぜだか呼吸も苦しくない。
――――――なぜこんな所にいるのだろう…
 深く考えようとしてもなぜか思考が働かない。
――――――とりあえずぼぉっと考えていよう。
 すると眼前にうっすらと影が浮かびでた。目を凝らしてみてみるとだんだんその姿形がはっきりとしてきた。
――――――キミは…
 それは彼女の中にいるリヴァイアサンだった。何か語りかけてこようとしているが今の彼女には理解できなかった。
――――――キミは僕に何を伝えたいの?
 重い口を開き、そう言おうとしたときリヴの向こう側から強い波が押し寄せてきた。その直後、リヴは泡となり消え去る。
――――――!?
 次の瞬間彼女は現実へと引き戻された…… 

≪ぶわぁしゃぁあっっ!≫
 ヨウはどこからともなく持ってきたバケツにたっぷり入った水を景気良くエルクに浴びせる。
「ぐはぁっ!」
 突然の出来事にエルクは飛び起きた。
『おそよう☆(笑)』
 ヨウは『無邪気』なさわやか顔でスチャっとあいさつを告げる。
「…(怒)おはよう」
 ぽたぽたと滴を落としながら彼女は半眼で答えた………


02/05/10 18:49 『修正』

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管理人



 とおいむかし
 むかーしむかし、とってもむかし
 このほしができました
 このほしをつくったかみさまは
 うみをつくりました
 つぎに6つのとちをつくって
 そのつぎにみどりをたくさんつくりました


『…なんの歌だ?』
 ヴツカがインに、初めて聞く歌に疑問をなげかけた。
 インはくすりと『笑って』て、こう言うのだ。
「……最初のウタ」
 この意味を解する者は今、ただ口を閉ざしているだけだった。
02/05/10 19:07 『修正』

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うさぎばやし
『…ふ…ぁ…』
『?なんだ、眠いのか?リゲル。』
 リゲルの小さなあくびと、リグのちょっとした問いかけで、一同…と言ってもエルクとリゲルとリグの三人だけだが…は最近まともな睡眠をとっていないことに気付いた。
 …まぁ、一部気絶したものならいるが。
 そういうわけで、ついさっきまで『眠って』いたヴツカと、果たして眠りなど必要あるのかとすら感じさせるヨウとインを除く3人は、先に述べた3人に見張りを任せて睡眠をとることにした。
 科学的に言っても、生物が睡眠をとらないまま活動を続けると、何かしら支障が出ることは立証されている。
 …といったコトをヴツカに聞かされ、多少なりとも自分たちだけ休む事に困惑していたエルクたちだが、やがて眠りにつくことに同意した。
 やはり疲れていたのであろう、3人はすぐに深い眠りに落ちる。

 ヴツカは3人が完全に眠ったことを確認すると、先ほどエルクの魔法で火をつけた焚き火に寄った。
 ヨウとインもそこで一緒に座っている。
『のぅ、お主。』
「何だ。」
 ヨウがゆらゆらとゆれる炎を見つめて呟くようにヴツカに問うた。
『お主はある程度気が付いておるのじゃろ?』
「―――…まあ、少なくともあやつらよりはな。」
 そう言って、ヴツカはちら、と眠りこける3人に目を―と言っても実際には見えないのだが―やった。
 くぅくぅと寝息をたてて眠る彼らに、思わず顔が緩む。
 ヴツカはヨウとインを交互に見つめ、ふうと溜め息をついた。
「我とて、ただ『眠って』おったわけではない。…汝らのことも、汝らの主…アルとベルと申したか?彼奴らのことも、ある程度目星はついておるわ。」
 パチパチと、木々が焦げるにおい。音。
 ただそれだけがしばらくの間、辺りに響く。
『あなたは、これからどうするつもり?』
 今まで黙っていたインが、首を小さく傾げた。
『アル様とベル様の、進む道を阻むものならば』
『わしらはあんたを殺さにゃならんぞ。ちなみにそれが完遂できる自信はある。』
 ざわ。
 嫌な空気があたりに広がった。
 これは、純粋な殺気。ただ憎悪も何もない…殺気だ。
「安心するが良い。汝らが何をしようと、我は何もせん。我はそこまで低俗な者共に肩入れするつもりはない。」
 ヴツカはふん、と鼻を鳴らし、にやりと笑った。
「ただ、我がしたいことをするだけだ。そのために、役には立ってもらうがな。」
『…お主、それをエルクらの前で言うてみ。一発で嫌われるぞ〜。』
「我はいつもこうだがな?」
 ヴツカとヨウは例えるなら「越後屋、そちも悪よのぅ」「いえいえ、お代官様にはかないません」な雰囲気で、ニヤニヤと笑いあう。
 インは呆れた表情で、二人を見つめていた…
02/05/11 09:42 『修正』

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えせばんくる
 すやすやと寝息を立てながら3人は横たわっていた。その中でリグはめずらしく夢を見た。
 あたりいったいは何故か花畑。心地良い風が頬をなでる。風がすぎるとまわりの散っていた花びらも舞い降りる。リグはその花畑の中にあぐらをかいて座っていた。別に変わった事なんて特にはなさそうだ。
 蝶が飛び交う姿を横目で見つめながらふとある事を思い出した。
“なんでリゲルから波動なんか感じたんだろうヴツカの奴…”
 『ん〜っ』と大きく伸びをするとそのままばたりと後に倒れる。視界はほぼ色とりどりの花によって覆われる。ここ一帯は春のように暖かかった。袖をめくっているとポカポカと太陽の暖かみが伝わってくる。
“リゲルやエルクがこの場にいたらきっとよろこんではしゃぎまわったり花でなにかしら作ってそうだな…”
 大きく手足を広げた状態で寝転んだまま大空を見上げる。空と雲の微妙なグラデーションがとても綺麗で、それがまた地上の花を引き立たせている様だった。
 のんきに寝そべっているとふとある気配に気づく。
“「人」だ――――――。”
 がばっと上半身を起こし気配の方向を向くと彼は目を丸くした。
 なぜなら………
 その気配とはリゲルのモノだったから…
“なんでお前がここにいんだ?”
 だがリゲルは何も話さない。ただ悲しげな顔をしているだけ。ただリグを見つめているだけだった。
―――――眼鏡が割れている。
 なにかあったのだろうか?さらに疑問に思い問いかける。
“おいリゲル。なにかあったのか?”
 押さえた口調で彼はリゲルに問う。だがまだ口を閉ざしたまま立っている。苛立ちを隠しきれなくなったリグは少し大きな声でリゲルに言う。
“黙りこくってたらなんもわかんねーだろ!?”  
02/05/11 15:45 『修正』

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(修正:3) ポタリ

リゲルの目から
一粒の涙が落ちる。

“!?おい!どうしたんだよ!?”
そのリゲルの様子に異常を感じたリグは
リゲルの方へ近付こうとする。
だがリゲルは一歩足を引いてリグから遠ざかる。
その瞳には大粒の涙がたまっている。
“なんだよ?…どうしたんだよ…?”

一歩近付くリグ。

一歩さがるリゲル。

その瞳には、どこか悲しそうな
おびえたような色が見えた。

リゲルが口を開く。
何かを訴えかけるように、何度か言葉を発する。
だがその声はなにかにかき消されて、リグの耳に届かない。

“なんだよ…?何言ってるんだよ?”

近付くと遠ざかるリゲルに苛立ちを感じながらも、
少しずつ、少しずつ間を狭めていく。

“…リゲル…”

目の前まで来た。

“お前…どうしたんだ…?”

リゲルにゆっくり手を伸ばす
すると、リゲルはいきなり後ろを向いて走り出した。
“…待てよっ!!”
咄嗟の出来事に、手を掴んで引き止める。


その瞬間、強い風が吹いた。
足下から草花が消え失せる。
二人を中心に乾いた大地が広がっていき、
瞬く間にあたりを覆い尽くしてしまう。

“!?”
掴んだ手から二人の体が発光しだす。
“なんだこれッ!?”
光は二人を覆いきると、まわりの世界をも飲み込んでいく。

周りがどんどん色あせていく。
自分も。リゲルも。

目の前が強い光で満たされる。





「………っ…」
気が付くと見慣れた景色。
自分の横ではエルクとリゲルが
スヤスヤと寝息を立てている。
「………夢…だったのか…」

夢から覚める直前
底の見えない漆黒の闇と
金色と銀色の光を見た気がした。



リグは起きあがると、ヴツカたちのいる焚き火の近くに歩いていった。
02/05/16 18:04 『修正』

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うさぎばやし
(修正:1) 「…ん、何だ起きたのか。」
 気配を感じ取り、ヴツカがリグの(いるであろう)方向に目をやる。リグはああ、と小さく呟きながら、どっかとヨウの隣に座った。
『夢見が悪くて、寝れなかった。』
『お主でもそのような
“デリケエト”な部分があるんじゃの〜』
 ニヤニヤ笑いながら、ヨウ。リグはその物言いにムカッと来たものの、起き抜けでどうも体が本調子で無いらしい。不機嫌そうに目の前の炎に視線を向ける。
 4人の後ろでは、未だエルクとリゲルは夢の中。この意味不明な空間から脱出するまで、まだ時間がかかるのなら、ここで思う存分休んでおいたほうが良い。リグはそう思いながら、自分の手の影が、炎の光を受けて赤く揺れるのを見つめていた。
02/05/17 17:31 『修正』

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管理人
『…なぁ、そーいやお前等って寝なくてもいいのか?』
 ヨウとインを見て、そう尋ねる。これはリグの感じていた疑問の1つ。ヨウとインはリグ達と同じように行動しているにもかかわらず、眠いとかお腹がすいたのだのの不満は何一つこぼさない。それは生物として、とてつもなく異常な事態だ。
「はい。私達は基本的に寝なくても生きていけます」
「それに食べたり飲んだりも、出来るが不用じゃ」
 飲食睡眠は不必要。その事実は彼等がこの世の理から外れた存在である事を示す。
 リグもヴツカも、聞きたい事・知りたい事は山とあったが、それにヨウとインが素直に答えるとは思わなかった。
02/05/18 12:48 『修正』

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(修正:1) しばらくの時間が経ち、
リゲルとエルクも起きてきた。

「おはよ〜…」
まだ眠たそうな目をこすりながら、リゲルたちは集まる。
『うぬもよく眠っておったのぉ〜』
ヨウがニヤニヤしながら言う。
『え?僕?』
エルクが聞き返す。
『そうじゃ。鼻をつまんでも起きなかったからの。』
『そんなことしたのぉ〜〜?』
エルクがヨウを追いかけ回している横で、眠そうなリゲルが大きなあくびをする。
「お前、まだ眠いのかよ」
リグが訊くと、リゲルはコクンとうなずく。
「……変な夢見ちゃった…」
リゲルはリグの方を見上げる。
「……すごい怖い夢だった……
 …ねぇリグ…あのさ…リグは…
 消えたりなんかしないよね…?」
見上げてくるリゲルの目には
うっすらと涙が浮かんでいるようだ。
リグは自分が見た夢を思い出す。
同じような夢を見たのだろうか。
リグは不安そうに見上げてくるリゲルの頭を、そっとなでた。
「…お前がどんな夢見たかなんて知らねぇけどよ…今は俺は消えてねぇだろ?
エルクたちだってちゃんとここにいるんだからよ、今はそれでいいんじゃねぇのか?」
「…………」
「…まぁ、夢なんてアテにならねぇもんとっとと忘れたほうがいいぜ」
リグ自身も気になってはいたが、
口に出して言ってみると、自分の言っていることも少しは信じられる気がしてきた。
「…な?」
リゲルはまた小さくうなずく。
リグは少し安心し、リゲルの頭をポンポンとたたく。
『リグ〜〜っ!リゲル〜〜っ!
そいつ捕まえて〜〜っ!!』
いきなり発せられた声に二人は振り向く。ヨウとエルクがこっちに向かって走ってくる。
『ふっ。うぬらなぞに捕まるものか!』
リゲルとリグの横をヒョイっとすり抜けると、ヨウはインの横まで走っていって止まる。
『ご〜るじゃ!』
エルクの方へ振り返り、ニカッっと笑うヨウ。
それを見てますますエルクは怒るが、リゲルたちの横に来たあたりで息を切らしてしまう。
『ハァッ…ハァッ…もぉ〜〜!』
インはその様子を見て少し呆れている。
『コラ汝等!そろそろ出発するぞ!』
少し離れた所からヴツカが怒鳴る。
「俺たちもそろそろ行こうぜ。」
「うん。」

リゲルたち6人は、その場から出発する事にした。

02/05/23 23:10 『修正』

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管理人
(修正:1)
 そしてかみさまはきづきます
 うごきまわるいきものがいないことに
 そこでかみはまず
 じぶんににたいきものをつくることにしました

「…アル、歌うなんてめずらしいな」
 リゲル達の様子を不可思議な水晶から見ながらアルは歌っていた。遠い昔を唄った歌だ。
「あぁ。すこし思い出して」
 自らの紅い髪を梳くベルの手をとりながら、アルはそう答えた。
 ベルは愛しそうにアルの髪に口付ける。蒼い髪が、揺れる。
「…最初は、特に興味はなかったけど……」
 水晶の中、リゲルとリグを指差しながら独り言の様に呟く。
「この2人…なかなか興味深い」
 形のいい唇を弓型にして、笑った。その唇をベルが奪う。
「…俺は別にどうでもいいけどな。お前がいれば」
 意地の悪い笑みを浮かべる。アルはその様子になかば呆れて、
「……私はこの一行が気になるな。あの黒髪は…随分前にどこかで見た事があるかもしれない」
「少なくとも話は聞いた事あるはずだぜ。あの時はかなりそれが話題になってたからな」
 水晶には相変わらず歩を進める5人。
「…インはいつ『アレ』をつかうのかな」
「…さぁな」
 このまま彼等が進んでいくと何が起こるか――それは2人にはよくわかる。なにせこの空間を作った張本人だ。正しくは、様々な場所と場所をつなげたりもしているので全部が全部アルとベルが作ったわけではないのだが。
 どうなるかは知らない。少なくとも水晶の中に映る6人には――…。
02/06/04 19:59 『修正』