『……?……る?』
………?……
『…げる…りげる…』
誰かが呼んでる
『りげる…リゲル…?』
「え…?」
目の前にはエルクの顔があった。
「……エルク…?」
少し躊躇いながら、幻影でないことを確かめる。
『うんエルクだよ。ちゃんと本物だよ。』
言ってエルクはすこし微笑んだ。
いつものエルクの笑顔だった。
心配なことがもう一つ。
「…傷は……?」
『血は止まったよ。たぶんもう大丈夫。』
エルクはまた笑ってみせた。
「……良かった……」
ほっと安心する。
だが次にまた違う心配が押し寄せて来た。
「……リグは……?」
エルクはいきなり曇った表情になる。
『それが……』
エルクが横にずれると、リグが見えた。
「えっ…?」
そこには、目をつぶり、うつ伏せに倒れたリグがいた。
『意識が……ないんだ……』
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えせばんくる
リゲルに必死になって呼びかけても
リグが反応しなかった事を話す。
リグはかろうじて息はしている。
が、身体全体の力は抜けきっている。
今度はリゲルが起そうと試みた。
『リグ。ねぇリグ…起きてよ。』
ゆさゆさと彼の肩を軽く左右に揺さ振る。
だが彼はいっこうに反応しない。
『ねぇリグぅ、目ぇ覚ましてよぉ…』
リゲルの脳裏を最悪の結果ばかりが通り過ぎて行く。
しかも彼を苦しめた張本人は自分の分身―らしきもの―。
―・―・―
目の前でリグが苦しんでいたのになんで
すぐに助けてあげる事ができなかったの?
どうして僕ばっかりリグに助けてもらって
僕は彼を助ける事ができなかったの?
―・―・―
そんなマイナスな思考ばかりが
この現実を前にして次々と現れる。
どんどんと追いうちをかけるかのように。
やがて自分の心の中の器がそんな気持ちで
いっぱいになり、その器に乗りきらない分の
気持ちが涙となって面へとあふれだす。
『リグってば!ねぇ起きてよ!!リグぅっ!!!』
段々と不安がつのってきて
リグを揺さ振る手に力がこもる。
「リゲル!そんなに揺さ振ったらダメ!」
興奮ぎみのリゲルをエルクは急いで
抱き押さえる。
「ねぇリゲル…心配なのは僕もそうなの。
でもそんなに悲しんだ顔しちゃダメ。
リグ、それこそ悲しむよ?
リグってばリゲルの事大事にしてるっぽいしさ。
ね?一緒にリグが『おはよう』っていってくれるの
待とうよ?」
彼女は腕の中のリゲルの頭をやさしくなでる。
リゲルは嗚咽をもらしながらも
『…うん…』と自分の意思を言葉にした……
02/04/19 21:59 『修正』
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うさぎばやし
(修正:3)
…3日。
リグが意識を失い、二人がここに留まって、
おそらくはもう3日が過ぎようとしていた。
ここには太陽も月も無く、昼も夜も無い。
時計も存在しない。よって、時間の感覚が失われる。
今の3人にはそれくらいが丁度いいのかもしれないが。
『…本当にこの空間は一体なんなんだろう。』
エルクが誰ともなく呟く。
腕の中には、見たこともないような果実。
(『クリスタルの中に、果物が生るなんてさ。』)
あれから、二人はとりあえず
体を休らめれそうなところを探した。
そして、丁度良さそうな平たい石の上にリグを寝かせ、
リゲルはリグの傍につき、
エルクは周囲を見回りに行った。
そこでエルクは、
≪クリスタルの中に生る果実≫を見つけた――・・・
『食べてみたら、結構美味しいし。
毒じゃなくて良かった♪』
能天気にエルクは笑う。
少し歩くと視界が開けて、
見覚えのある顔が見えてきた。
『やほーリゲル♪…まだ、リグ目を覚まさない?』
『エルク。……うん、まだ…』
横になったリグの隣で、
律儀に正座をして見守っていたリゲルは、
エルクに微笑みを返したあと、
すぐに沈んだ表情になった。
あのときからというもの、リゲルはいつもこんな調子だ。
リグが目の前にいるのに、動かず、喋らず、
ただこんこんと眠り続ける。
その状況自体が、リゲルに
言い様のないプレッシャーを与えているのだろう。
意識を取り戻さない原因がわからない分、
その圧力は大きい。
『まったく………―――
…早く起きなよ、リグ…』
エルクがこつん、とリグの額を小突いた。
02/04/21 17:42 『修正』
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梧
その拍子に、リグの頭がグラッと傾く。
『わっ、わっ…!』
エルクは慌ててリグの頭を支える。
リグの頭は石の端のギリギリのところで止められた。
『危な〜…落ちそうだったよ』
リゲルも立ち上がり、リグを元の位置に戻した。
「ふわぁ〜…びっくりしたぁ……あれっ?」
リグの首筋、さっきまで見えなかった場所に、小さく赤く傷が付いていた。それはただの傷でなく、何かの模様のようだった。
「なんだろ、これ…」
リゲルはよく見るために顔を近づけた。その模様は、星の形をしていて、五つの星が円になっていた。
「ねぇ、この印……」
リゲルは目を疑った。それは今さっきエルクが持ってきた果実の模様と全く同じだったのだ。
02/04/21 19:18 『修正』
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管理人
「や。」
『『!?』』
そこに突然、何の前触れも気配もなくベルとアルが現れた。なぜかアルはベルに抱えられている。
アル、眠っているリグを見て、
「…やっぱり。あの時お前が無理矢理つれて行くからこんな事に…」
と延々愚痴る。それに反応したのはベルではなく、リゲルだった。
『なに!?やっぱりってどう言う事!?』
「!?」
アルの胸倉を掴み揺さぶった。突然の事だったのでアルは床に見事に落ちてしまった。
『ご、ごめんなさいっ』
慌てて謝るが、見えないはずのベルの視線がイタイ。
「…まぁいいのだが…」
アルはそう言って、立ちあがろうとした。が、しかし。
ズルッ!ベシッ!!
『『「…………………」』』
嫌な沈黙が、横たわる。
アルは起き上がろうとして、なぜかそのまますっ転んでしまったのだ。
『……だ、大丈夫?』
なんとか立ち直ったエルクが、アルに手を差し出す。アルはすまない、と言いつつベルのほうを睨む。当のベルはあらぬ方向を向いている。
「…まぁ本題だが。原因は、鏡だ。あの鏡は写した人間をコピーして、オリジナルを攻撃する。他人の血を浴びる事でオリジナルの力を奪い取る」
『じゃぁどうすれば…』
「なに、簡単だ。力を戻せばいい」
淡々と、そしてさらっとアルは言った。単純明快…しかし肝心な事が抜けている。
どうやって?
その疑問は顔に出ていたのか、アルは不敵な笑みを浮かべた。
「まぁ見ていればいい」
そう言って、リグのところに連れていってもらう。
首の跡を確認して「やっぱりな」と独りごちる。そしてアルは例の果物を手に取りなにかブツブツととなえだす。すると、その果物はまるで水か何かのように溶け、跡に滑り込んだ。跡は一度赤く輝くとその姿を消した。
「これですぐに起きる」
その言葉に2人は方をなでおろす。しかし、エルクはここで一つの疑問を抱いた。
『アル…なんで立てないの?』
素朴な疑問。しかしアルは途端に不機嫌になるり、ベルを指差す。
「腰に力が入らない。あいつの所為だ」
聞いた途端、エルクとリゲルの顔が真っ赤になった。
「ま、まぁ仕方ないだろ。最近、ほら、お前色んなとこ言ってたし…」
言い訳しながらベルはアルを抱き上げ、
「じゃ、じゃぁな」
とぎこちなく言って姿を消した。
残された二人、顔を見合わせて、
『…ベルって、どうしようもないねぇ』
『…うん』
と赤い顔のまま感想を漏らした…。
02/04/21 20:25 『修正』
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梧
「う…ん……」
『「リグっ!?」』
リグが意識を取り戻したのか声を漏らすと、二人は一斉に振り返る。
「……リ…ゲル…」
まだ意識がはっきりしないせいか、途切れ途切れに名前を呼ぶ。
「……リグ………」
リゲルもリグに近づいていく。
リグはリゲルの姿を確認すると、両手で上半身を起こした。
「…リゲル…お前…大丈夫だったのか…?」
そう言うと、近くに来たリゲルの頭を撫でた。
「……リグ…大丈夫なの…」
リゲルはおずおずと訊ねる。
「…ああ、大丈夫だ…もう心配するなよ…?」
リグは少し微笑んだ。
「…リグっ……!」
安心があふれ出してくる。
リゲルはリグに抱きついた。
リグもそれを受け止め、優しく頭を撫でた。
リゲルもエルクも、気が付くと涙をぼろぼろこぼしていた。
リグは人の涙が苦手だったが、止めることもできず。
ただ、どこか暖かくなるような気がして、二人を見ていた。
02/04/21 23:22 『修正』
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えせばんくる
(修正:1) 「もぅっ…リグったらっ…
グズっ!…心配したんだから…
ズビビっ…ね!?」
段々と涙の量が増えるにつれてエルクの
喋り方にも変化がでてくる。
(つまり効果音付きって事)
リゲルはリグにしがみ付きながら
まだ泣いている。
その証拠に顔こそは見えないが
肩が小刻みに震えている。
『長い事寝てたみたいだな。
すまねぇ…』
「すまねぇーじゃないよぉ〜;
ズズっ!まったくぅ…グスっ」
力んだ瞬間。彼女の鼻から物体]が…
彼女は頑張って文句を言っているつもりかも
しれないが文句になっていなかった…
『…グスっ…ところでさ、
さっきの五つ星。なんだったのかなぁ?』
リゲルは一番引っ掛かっていた疑問を言葉に表す。
『なんだ?その“五つ星”って』
エルクは彼の首にあった跡の事を話す。
と、その直後……
「…ってことぉ―――――――って、
あ゙ぁ゙ぁぁぁあ゙ああ゙あぁぁ―――!!!」
突然の大声に毛を逆立ててびびるリグ・りゲ。
『な…なに!?』『なんだよ…』
すると彼女、自分のしでかした事をいきなり
後悔しはじめた。
「はぁあぁぁぁぁぁ…;
(Σ=□=;/)
どうしよぉ〜リゲルぅ〜…
僕さぁ。あの“例の果実”食べちゃったよ〜?」
彼女のその一言で場の空気が一瞬にして
凍りついた………
02/04/22 00:15 『修正』
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梧
「だ…大丈夫…?お腹痛かったりしない?」
リゲルは心配そうにエルクの方を見た。
『う…うん…大丈夫だけど…』
「食べたって、どんくらい食べたんだよ?」
リグが訊ねると、エルクはおどおどしながら答えた。
『……まるまる一個…。』
「えっ?じゃあさっき持ってきたやつは?」
リグの首の傷をの有無を確かめていたリゲルが振り返る。
『あのね、クリスタルの中に二つ果実が生ってたから、その中の一つ食べたの。』
「一口二口ならまだしも…全部食ってんなよ……」
リグが呆れながらつぶやく。
「俺の体にはなにも異常ないけどな…お前のほうは大丈夫なのか?」
『え?僕?うん。全然大丈夫だよ☆』
そう言うとエルクはクルッっと回ってみせる。
洋服がフワッっと風に靡いた。
「あれっ?」
リゲルがエルクを見て驚く。
「どうした?」
リグもそれに気付くとエルクの方を見る。
エルクは二人に見つめられて少し戸惑う。
『え?え?…僕がどうかしたの?』
「エルクくん…背中の傷…治ってる。」
『えっ?ウソッ?』
エルクが背中を見ると、そこには服の切れ目があるだけで、
リグもどきに付けられた傷は、
跡形もなく消えていた。
「あ、そっか☆」
リゲルがポンと手をたたく
「もう一つは、エルクくんの分だったんだね☆」