十二月二十四日と言えば瀞霊廷では数年前まで特に意味を持たなかったこの日も、護廷十三隊の上位者達が黒崎一護ら現世の人間と交流する機会に恵まれた今となっては、現世と同じように特別な日になっている。
現世と同じように街は赤と緑に彩られ、鈴の音が軽やかに耳をくすぐる。
人々は楽しそうに通りを行き交い、賑やかな夜が続く。
そしてこの日、クリスマスと言う現世のイベントを一番満喫できる人々は、現世も瀞霊廷も変わらず―――愛し合う恋人同士。
「ご馳走様でした」
恋次とルキアが食事の後に必ず両手を合わせてそう言うのは、流魂街の生活の影響がある所為だろう。食べる物を手に入れるのに苦労した恋次たちは、大抵のものは文句を言わず美味しそうに口にする。今も恋次の家で二人一緒に作ったクリスマス仕様の夕食を、仲良く、彼ららしく時折口論を交えながら、食後のケーキまで綺麗に食べ終えたところだった。
ルキアが淹れた紅茶を飲みながら、二人は今日一日の感想を言葉にしあう。二人で待ち合わせをして、買い物をして、昼食を食べて、散歩をして、夕食の買い物をして、二人で夕食を用意して―――とても充実したいい一日だったとルキアは思う。
ルキアの恋次へのクリスマスプレゼントは、銀蜻蛉の新作だった。普通はそう簡単に手に入る値段ではないが、銀蜻蛉の主人とルキアの義兄である白哉には繋がりがあるので、ルキアは特別価格で手に入れることが出来るのだ。
あまり店の迷惑にならないよう、そう頻繁には購入することを控えてはいるが、恋次の好きそうなモデルが入荷したとあっては、手に入れてプレゼントしたくなるのが恋人と言うものだ。そうして手に入れた新作モデルを、今日会ってすぐに渡したルキアは、恋次の激しい驚きと感謝のリアクションに、周囲の人々の視線を集め頬を染めることとなる。
恋次のルキアへのプレゼントは自宅に置いてあるらしい。それは何かと想像するのも楽しく、けれどもルキアは行儀良く、恋次がプレゼントを渡してくれるまで何の詮索もせずに待っている。
けれど、夜は更ける。
門限が九時と決まっているルキアには、残された時間はあと僅かしかない。帰り道で渡してくれるのかな、と紅茶を飲みながら考えていると、「ちょっと待っててくれ」と恋次が立ち上がった。
「直ぐ戻る」
「ああ」
素知らぬ顔でルキアはティーカップに口を付ける。さて恋次の選んだものはなんだろうとルキアは胸をときめかせた。
本当は、どうしても恋次から欲しいものはあるのだが、それは自分からねだっても仕方ない。いつか恋次が、恋次自身が納得した時に自分にくれなくては意味がないものだからだ。
それはいつになるかわからないけれど、必ず恋次は自分に贈ってくれる筈……そんな、甘く蕩けるような夢を見ていたルキアの淡い感傷は、「待たせたな」という声と共に現れた恋次を見て一気に吹き飛んだ。
「…………何をしている」
「メリークリスマス!」
「何て格好をしている、莫迦恋次!」
「恋次?誰デスカ?私ハさんたくろーす。貴女ニぷれぜんとヲ届ケニ現世ノふぃんらんどカラヤッテキマシタ!」
「雰囲気ぶち壊しだ!」
この莫迦、と怒鳴りつけるルキアの目の前に、赤と白の、現世ではお馴染みの扮装をした紅い大柄な男が立っていた。ご丁寧に白い髭まで付けている。髪の紅と服の紅が見事に調和して、さながら紅サンタだ。
「何だよ、お前を楽しませてやろーと思ったのに」
ぶつぶつ言いながら髭を取ると、服はそのままに恋次は「ほれ」とルキアに小さな包みを差し出した。綺麗にラッピングされている小箱には、ルキアのよく行く店の包装紙が使われている。
途端、機嫌を直してルキアは「開けていいか?」と眼をきらきらさせて恋次に尋ねた。「勿論」と頷く恋次に嬉しそうに笑い、丁寧に包装紙を剥がしていく。
この店は、ルキアが今一番気に入っている店だ。この店の中にはありとあらゆるうさぎの小物が揃っている。うさぎ以外のものは何もなく、総てのものにうさぎが描かれているのだ。膨大な品数のその店に行く度、少しずつ品を集めているルキアには、心の底で思っている「本当に欲しいもの」を抜きにすると、一番嬉しいプレゼントだ。
包装紙の下に小さな箱がある。その蓋を、どきどきしながらそっと開けると―――
「…………何だ、これ」
白い箱の中に、紫の天鵞絨に包まれたピンク色の小さなうさぎがあった。ゴムのような素材で出来ているそのうさぎは、十センチよりほんの少し長いといった大きさしかない。両手を上げ、足の部分は輪になり、細いコードが体から伸びて同じピンク色の四角い箱に繋がっている。舌をぺろりと小さく出しているうさぎのその顔は愛らしいが、ルキアはこれをどう使うものなのかさっぱり解らず、「何だ、これ?」と恋次を見上げてもう一度尋ねた。
「どうやって使うのだ?これは」
「知りたいか?今此処で?」
「?―――ああ、私には如何使うのかさっぱりわからないから……っ!」
言葉の途中でひょいと抱きかかえられ、畳の上に押し倒されたルキアは「こ、こらっ!」と暴れ出す。そんなルキアには意も解さず、慣れた手付きで恋次はルキアのスカート―――恋次の家に着いたときに、恋次の希望で現世の服、ワンピースに着替えていたのだ―――をめくり、ルキアの下着を剥ぎ取った。
ひんやりとした空気がその場所に触れ、ルキアは「何をする気だ、莫迦!」と口付けようと近付いた恋次の顔を掴んで接近を阻止した。勿論何度も身体を重ねているが、寝室以外のこんな場所で、しかも電気が煌々と点いた部屋でしたことなどなかったのだ。
「こ、こんな場所で何をしようというのだ、莫迦!」
「いや、直ぐに使い方教えてってお前が言うから」
「使い方とこれとは関係ないだろう!」
「実は関係あるんだよ」
本気を出した恋次にルキアが敵う筈もなく、下着を取られ、スカートを腰まで捲り上げられた状態のまま、ルキアは押さえつける恋次を真赤になって睨みつける。そんなルキアを見下ろしながら、恋次はにやりと笑って箱の中のうさぎを取り出しコードを口に咥えた。意地の悪そうなその恋次の顔にルキアは見覚えがある―――主に寝室のベッドの上で。
赤い上着を器用に片手で脱ぎ去り、恋次は上半身裸になる。鍛え上げられた逞しい身体に走る黒い紋様を、一瞬ルキアは綺麗だと思った。
その所為で逃げ出そうと暴れていた動きが止まる。それをルキアの諦めと受け取った恋次は、「いい子だな」と悪戯そうにルキアの頬をぺろりと舐め上げる。
「このスイッチを押すだろ?」
かちっと微かな音がした次の瞬間、ブン、と空気が振動する音がした。何が起きているかわからずに、恋次とその手にしたうさぎを見ているルキアの前で、恋次はうさぎをルキアの下腹部に近づける。
「ちょっ、何をする気だ恋次!」
「いいからいいから」
再び身を捩って逃げようとするルキアの身体を抑え付け、恋次はルキアの足を抱え上げた。めくれ上がったスカートが、ルキアの腰の位置に落ちる。恋次の目の前には隠すものもないルキアの剥き出しの部分があり、ルキアはその部分に恋次の視線を感じて羞恥と怒りに身体を熱くした。
「いい加減にしろ恋次!いくらお前でもこれ以上したら……!」
怒りの声を含ませたルキアの声を無視して、恋次はうさぎをルキアの―――に、軽く押し付けた。
「……ひぁっ!」
途端、身体中を突き抜ける電撃のような感覚に、ルキアの唇から悲鳴が漏れた。
うさぎから伝わる細かい振動がルキアの一番敏感な部分に押し当てられて、柔らかなゴムの感触と共にルキアの性感帯を刺激した。その動きは止まることなくルキアを攻め続ける。そしてその動きに呼応するように、ルキアの唇から知らず喘ぎ声が漏れ始めた。
「ひっ―――ん、あっ!や―――んあっ!ひぅっ、あ、うぁっ!」
いままで恋次の舌と指でしか受け入れたことのない場所に、電子音と共に絶え間ない振動が与えられる。人の動きでは決して出来ない細かな振動が、一気にルキアの思考を奪い去る。ダイレクトに叩きつけられるその動きに、ルキアは自分でも気付かないまま何度も大きな声を上げた。
「こうやって使うんだよ。―――気持ちいいだろ?」
「やっ―――うぁっ―――ん……っ!」
「言葉も出ねえか」
恋次がうさぎを押し当てるたび、背中を仰け反らせ、目を見開き目の焦点が合わないルキアを楽しそうに見下ろして、恋次は「で」と手元のスイッチを引き寄せる。
「これで切り替える、と」
カチ、と音がした途端、更に振動が激しくなりルキアは悲鳴を上げた。先程までの振動でも何も考えられなくなっていたと言うのに、それ以上の刺激を与えられたルキアには、もう恋次に翻弄されるしかない。うさぎはルキアから溢れる雫にまみれてきらきら光る。うさぎだけでは受け止めきれずに、とろりとそれは床に流れ落ち畳の上に染みを作った。それを恥ずかしいと思う心の余裕もルキアはない。恋次に押さえつけられたまま、喘ぎ続けることしかできない。
「あああああっ!」
一際大きな声をあげ、くたりと身体の力が抜けたルキアの身体を恋次は抱き上げる。上半身だけ起こしたその状態で、ルキアははあはあと荒い息を吐いたまま恋次の腕に身を任せている。とても自分で動ける状態ではなかった。身体中を余韻が駆け抜けている。今まで感じたことのない感覚に、理性も何もかもが奪い去られている。
ルキアの腰を支え、再び恋次の手がスカートの中に差し入れられた。一度途切れたモーター音が再び空気を震わせる。びくんと身を竦ませるルキアの身体は、拒絶よりも受諾へと移行していた。
「気持ちいいだろ?―――気に入ったか?」
大きく開いたルキアの脚の間で動くうさぎ型のローターを、ルキアは霞みがかった目で、恋次は楽しそうな瞳で見つめている。軽く押し当て、強く押し当て、その度にルキアはびくびくと身体を震わせる。軽く開いた唇からは細い銀の雫が零れ、ワンピースに小さな染みを作った。
うさぎの手と耳が、ルキアの突起した部分に触れて振動を与え続ける。左の耳は真直ぐ、右の耳は軽く曲がり、その形状の違いが振動を微妙に違うものへと変化させ、交互に触れてルキアを更に追い詰める。
「やっ―――やあっ……やだ、やめ……っ!」
錯乱したように首を左右に振るルキアの耳元で、「止めるか?」と優しく甘く意地悪な声がする。
「じゃあ止めよう」
あっさりと振動が身体から離れて、ルキアは涙に濡れた目で恋次を見上げた。あまりの気持ちよさに流した涙、その無防備な顔を見下ろして恋次は優しく笑う。
「やだ……っ!」
「どっちだよ?」
「やめちゃやだ……いや……」
子供のように泣きながら恋次に縋りつくルキアの頬に口付けて、恋次はうさぎをルキアの目に見せてから「あと一つ、使い方があるんだけどよ」と囁き耳朶を噛む。
「お前、持ちこたえられるかな……?」
恋次の声も耳に入らないルキアは、荒く息を吐きながらぼんやりと見開いた目で恋次がうさぎの足で出来た輪に恋次自身を通すのを見ていた。何をしているのかと考える余裕もない。疼くその場所にはやく刺激が欲しくて、切ない声を上げることしかできない。
「振動を最高、と」
再びカチリと音がして、振動音が鳴り響く。羞恥の欠片も残っていないルキアは、恋次が押し広げるままに抵抗なく両足を開いた。ワンピースを着たまま、全裸よりもより淫らな格好で、ルキアは恋次の前に秘密の場所をさらけ出す。
「で、挿入」
もうルキアには悲鳴を、嬌声を上げることも出来なかった。息を呑み、身体を硬直させ背中を仰け反らせる。その隙間に恋次は手を差し入れて、がくがくと痙攣するルキアの身体をしっかりと支えた。
恋次自身に装着されたそれが発する振動が、恋次からルキアに伝わり、突き上げられると同時に振動をルキアの内部へと伝播する。その振動と同時に、小さく突き出されたうさぎの舌が、ルキアの一番敏感な部分に当たり刺激を送るのだ。
中とその部分と―――突き上げられ、弄られ、同時に攻められる途方もない快感に、ルキアは声もなくよがり狂う。
「やべ―――俺がもたねえ……」
きゅうきゅうと締め付けるルキアの中、普段の上品なルキアからは想像も出来ないほど快楽に身を委ねたルキアの顔、淫らに動く腰に、恋次は達しそうになるのを唇を噛んで堪えた。
一度ルキアの中から引き抜き、暴走しそうになった自身を引き止める。「だめ……っ!」と離れたことに可愛らしく抗議するルキアを焦らすように、恋次は震える二つの桜桃に唇を寄せ舌で転がした。
「ん……っ、んっ!」
仔猫のようにルキアは咽喉を鳴らして身悶える。舌で煽り手で捏ねる。その度にルキアは身を仰け反らせ腰を揺らす。
「あ、恋次……」
「何だ?」
押し付ける腰の動きに、ルキアが欲していることは充分わかっていたが、恋次は気付かない振りでルキアの胸を攻め続ける。その刺激は更なる刺激を欲しがる自分の欲求にルキアが気付くだろうと承知していたからだ。
「……恋次……」
「どうして欲しい?」
舐めていた胸から顔を上げ、ルキアの目を見下ろして恋次は笑う。
「今日はクリスマスだからな。いい子はプレゼントが貰えるんだ。―――お前は何が欲しい?」
普段のルキアならば―――決して口にしないだろう。僅かでも理性が残っていたならば、ルキアは決して言わないその言葉を、今は抵抗なく口にする。口にすればそれが与えられると恋次が言った所為で。
「恋次が欲しい―――私の此処に。うさぎはいいから―――それは気持ちいいけど、恋次に奥まで来て欲しいから―――恋次が欲しい。奥まで挿れて―――お願い、恋次……いかせて、一緒にいって―――お願い」
「いい子だ」
満足そうにルキアの唇を塞ぎ、片手でローターを外し放り投げると、恋次はルキアの足を抱え、期待に見上げるルキアを見下ろして一気に奥まで挿入した。
「ああああんっ!」
モーター音の変わりに部屋を満たすのは、激しい粘着質な水の音―――恋次がルキアの中を行き来する度に猥褻な音を響かせる。それに伴奏するように、ルキアの珊瑚色の唇から絶えず艶めいた声があふれ出す。
「あ、あ、れん……っ!だめ、もう、ああっ……!」
身を強張らせるルキアの妖艶な顔を見下ろして、恋次も留めていた暴走を解除し、一気に上りつめルキアと同時に果てる。
冬の最中、それでも汗にまみれ白い肌に張り付いたルキアの黒い髪を撫でながら、恋次はルキアの頬に口付ける。
「―――――――」
囁いた愛の言葉は、眠るルキアの耳にだけ届けられた。
ふと目が覚めた自分が、裸の恋次の腕の中にいる事に気付いてルキアはどきんと胸を高鳴らせた。
恋次と一緒に眠ることは、流魂街を出てから初めてだ。
夜九時には帰宅するよう白哉に厳命されているルキアを慮り、恋次は今までルキアを泊めようとしたことはなかった。
それが今、自分は恋次の腕の中に居る。
部屋の壁に掛けられている時計に目を向けると、時刻は一時を回っていた。
一瞬白哉の顔が浮かんだが、ルキアはこの腕の温もりから離れることがどうしても出来ずに、白哉に心の中で詫びながら再び恋次の胸へと身を寄せる。
かち、と指に何かが当たる感触がした。
左の指―――薬指。
ゆっくりと布団の中から手を抜き出す。
月の光にちかりと輝いたのは、透明な―――透きとおり煌めく指輪。
眠っている間にいつの間にか指に在った、月の光を集めたような輝く宝石。
ルキアが一番欲しかったもの。
恋次が、恋次自身が納得した時に自分にくれなくては意味がないもの。
義妹としてルキアを大切に慈しんでいる朽木白哉からルキアを奪い取る才能や器量が、自分にあるか恋次自身が納得した時に。
「―――受け取ってくれるか?」
「―――当たり前だろう!」
待たせすぎだこの莫迦、と憎まれ口を叩くルキアの声が震えていたのにきちんと恋次は気付き、優しくルキアを胸に抱きよせた。
泣いている事に気付かない振りを恋次がしてくれたから、ルキアは堪えることをやめて感情のままに涙を流す。
そのルキアの頭を撫でながら、恋次は幸せそうにルキアの黒い髪に口付けた。
「……お前の返事が、俺の一番欲しかったプレゼントだ」
2008年クリスマスに、お友達にプレゼントしたコピー本の原稿です。
プレゼントしたお友達が、皆さんどんな裏でもOK!という方々だったので(た、多分/笑)色々遊んでしまいました。
今まで女性のその部位を文字で書くことは避けていたのですが、この方々だったら平気だろう、と思い書いたのですが、こっちは一応修正しておきました。
全てにおいてお友達仕様です。
ルキアもいつもよりよがってるのはお友達仕様のせいです(笑)
作中のうさぎローターは実際に販売されております。
興味のある方はぜひご購入ください、通販サイトがあるよ!(笑)
この通販サイトは面白いので時々見に行くのですが、かなりアダルトです。体験談とか(笑)神凪さんに教えてもらったのよ!
そしてここでいつもM田さんへのセクハラプレゼントを買う。
今年も買った…(笑)
使用体験談をお待ちしております。M田さん。
それでは、楽しんでいただけたら幸いですーv
2009.1.14 司城さくら (コピー本発行:2008.12.24)