夜空に高く月が昇る。
 その形は真円で、その淡い金の光は地上に降り注ぎ、静かに夜を照らしている。
 今宵は満月。
 ――月の魔力が満ちる夜。






 朽木邸の敷地は瀞霊廷の中の一等地、貴族たちの住居が集まるその区域の中でも比べる物がない程一際広大だった。
 建物も大きかったが、その周囲を取り囲む庭園も広く、林や池も存在したその庭園は自然公園と言っていい程の規模を持っている。奥に入れば屋敷からは見えず、音も聞こえない。
 その敷地の奥、林を抜けた場所に開けた緑の野原が続くその場所で、うさなは空を見上げていた。
 夜空に輝く金色の月。
 ずっとあの場所から下界を見ていた。自分たちによく似た、けれどもう同じとは呼べない――尸魂界の人々。
 その尸魂界から、月を見ている。
 頭上の月は輝き、優しい光を地上に落とす。その月に居たうさなが今まで見ることの出来なかった月の姿――自分の国。
 ――ウキアは……如何しているかしら。
 恐らく、自分を救い出すために動いているだろう。妹はきっと酷く胸を痛めている筈だ。心配して心配して――いつでも、自分以上にうさなの身を案じうさなを助けてくれた、たった一人の妹。
 ――月に戻れる手段はあるのだろうか。
 下界との接触は固く禁じられている。月から下界に降りた巫女など前代未聞だろう。既に巫女の資格は剥奪され、神子の認識は削除され、皇女の位は抹消されているかもしれない。
 そうなれば、妹に負担をかけてしまう―― 一の巫女としての重責を、妹一人に押しつけてしまうことになる。
 一の巫女としての自分には妹がいた。どんなに苦しくても辛くても、いつも必ずそばで自分を支えてくれる妹がいた。
 けれど自分が下界に居る今、一の巫女になった妹のそばには――自分にとっての妹の存在、どんな時も助けてくれる存在は、妹には――ない。
 せめて、自分が助けることが出来るならば。
 今でもこの力が作用するかは分からないけれど。
 月の世界で、自分に代わって儀式を行うであろう妹の助けになるように――



 すい、と月に手を差し伸べる。
 すらりと伸びた耳が、何かを受け止めるように微かに震える。
 遮るもののない月の真下で、うさなは月の光を全身に浴び――









 今夜が満月ということは勿論知っていた。そしてその満月に、うさなが「浄化」をすることは聞いていた。
 故に急いで帰宅しようとしていた白哉を、道で行き合った叔父の道成が引き止めた。
 父の弟――直系である朽木道成は、未だ結婚をしていない白哉に何かあった時には朽木家を継ぐ立場にある。壮年の道成は一族の中でも白哉が無視できない力を持っている。その叔父に呼ばれれば、いかな白哉でも無視をすることが出来ない。逸る心を押さえながら、可能な限り早急にその屋敷を持して自分の屋敷に戻ったが、白哉の私室にうさなの姿はなかった。
 細く開いた窓の隙間から外に出たのだろうと認識し、白哉は白哉らしからぬ慌ただしさで庭へと降り立った。
 この貴族の住居が集まる近辺には野犬の心配はないが、商店の並ぶ中央、そして更に奥の流魂街との境界に近付けば、犬や猫がいる可能性は高くなる。そしてうさなはお世辞にも機敏とは言えない――自分よりも体の大きな犬や猫に遭遇してしまった場合、とても逃げることなど出来ないだろう。
 また、その外見の愛らしさから――うさぎの姿でも飛び抜けて愛らしいうさぎらしいことは、うさなが売られていた店の店長の言葉からも解る――行き合った誰かがうさなを飼おうと連れ去ってしまう可能性もある。そうして部屋に閉じ込められてしまえば、うさなはもうこの部屋に帰ることは出来なくなってしまう。
 うさなと離れるなど考えられず、その姿が見えなくなるなど想像したくない。
 逸る心を押さえ、白哉はうさなの気を感じ取るために集中する。小さな身体のうさなは放つ気も小さく、容易に感じ取ることが出来ない。
 それでも想う強さの表れか―― 一分の揺らぎもなく正確にうさなの気を思い出すことが出来た所為か、やがてうさなの気を見付けることが出来た。
 そんなに離れた場所ではない。――恐らくこの敷地の中、林を越えた辺り。
 掴んだ小さな気配を追い、白哉は屋敷内で使う事のないその技――瞬歩を使って、その場所へと向かった。








 瞬時に辿りついたその場所ですぐに見付けたうさなに近付かなかったのは、うさなの雰囲気がいつもと違う所為だった。
 近寄り難い空気――否、近付いてはいけない雰囲気。
 一度、白哉はうさなのその姿を見ている。それは数日前の瀞霊廷の中の甘味屋で――自分のすべきことを話したあの時と同じ、凛とした瞳でうさなは空を見上げている。
 小さな身体は闇夜に紛れて見えなくなりそうだ。
 そのうさなの手が、すいと月に向かって差し伸べられた。
 白哉がいつも膝の上で愛しげに撫でる二つの耳が、空に向かって伸びている。
 月の光が、強くなる――空からうさなへと光が降りる。空に帰る道のように、一直線に月の光が集約されてうさなの上へと降り注ぐ。
 その光に引き上げられ、空へと返ってしまうのではないかと思わず踏み出そうとした白哉の足が止まった。
 うさなが月の光を浴びて輝いている。
 まるで地上に月が現れたように、うさな自身が発光している。金色に輝きながら、月へと手を差し伸べたまま――小さなうさなの身体が、目映い光に包まれた。
 太陽のように目に突き刺す光ではなく、優しい穏やかな眩しい光。その目映さに目を閉じた白哉が次に目を開けた時、そこにうさなはいなかった。
 否、うさなは居た。――ただしそれは小さなうさなではなく。
 人と同じその大きさ――小さなうさぎの大きさではなく、共に並べるその大きさ。
 目を見開く白哉の前で、うさなはふわりと着物の袖を翻した。
 凛、と何処からか鈴の音がする。
 それがうさなの両の手首に付けられた金色の小さな鈴が鳴らしている音だと気付いた時、うさなの動きが止まった。
 顔を上げ、目を閉じ――
 息を吸う。
 ――空気が、変わった。


   撫の森の葉隠れに 宴寿ひ賑はしや


 呪文のように、祝詞のように、透明な声が空気を震わせる。
 その瞬間、時の流れが止まった。
 風はその歌を遠く響き渡らせるために音を止め、樹々も草花も、頭を垂れるように跪く。


   松明あかく照らしつつ 木の葉敷きて倨居する


 ――これは、何だ。
 人の出せる声ではない、出来る筈がない。
 そこに居るのは白哉の知るうさなではない。
 あの小さな、すぐに頬を染める可憐な少女では、ない。


   これぞ流浪の人の群れ 眼光り髪清ら
   月の光に浸されて 煌ら煌ら輝けり
    
   
 朗々と、細く高く歌声は響き渡る。
 うさなの唇から歌が放たれる度、空気が変わるのがわかる――清らかに、浄化されていくのがわかる。

 
   愛し乙女舞ひ出でつ
   松明赤く照り遍る 
 
   管絃の響き賑はしく
   連れ立ちて舞ひ遊ぶ
 
   既に歌ひ労れてや
   眠りを誘ふ夜の風


 しんと静まり返るこの場所は、白哉の屋敷の庭ではない。
 既に其処は神域、神の降りた場所――


   慣れし故郷を放たれて 夢に楽土求めたり  


 凜、と鈴が鳴る。
 祈りのようなその声は、空高く舞い上がり、空気を、世界を浄化していく。


   東空の白みては 夜の姿かき失せぬ
   ねぐら離れて鳥鳴けば 
   何処往くか流浪の民
   

 最後の緋真の声が、細く高く響き渡り――やがて消えた。
 全力でその力を使ったのだろう、頼りない足元で振り向いた緋真の目が、白哉を見付け――見守る白哉の前で、巫女から、白哉の「うさな」へと戻った。







「――白哉さま!」
 微笑んで駆け寄るうさなの姿に、改めて白哉は驚きを新たにする。
 自分と同じ、並べる大きさのうさな。
 小さなうさなとは違う、少女と女の狭間の存在――無邪気に微笑むうさなの、何気なく傾げた首元に色香が漂う。
 夢の世界に迷い込んでしまったような感覚を振り切るために首を振り、白哉は「今のが、浄化か」と質問を口にした。
「はい。――月から送信している訳ではないので、効果の程は解りませんが――少しでも妹の助けになれば、と」
「妹? 妹がいるのか、うさなには」
「はい、とてもしっかりした妹で――私は頼ってばかりでした。優しくて、聡明で、いつも私を気遣ってくれて」
 うさなは月を仰ぎ見た。夜空に浮かぶ真円の月――その先に妹が見えないかと目を凝らしているのだろう。やがて淋しそうにうさなは俯いた。
「またいつか……逢えるとよいのですが。でも、もう、逢えないかもしれません」
 俯くうさなの耳がぺたりと垂れた。
「――諦めたならそれは叶わぬ」
 白哉の手がふわりと優しくうさなの頭を撫でた。二度、三度と撫でながら「もう一度逢いたいのだろう?」と問いかける。
「はい……逢いたいです」
「ならば逢う方法を考えよう。必ず何か方法がある筈だ」
「はい……はい、白哉さま」
 涙が滲んだ目元を慌てて拭い、うさなは照れたように微笑んだ。
 間近で見るその笑顔、その威力。
 それは総隊長の斬魄刀に両断されるのと同じ威力だろう。思わずよろめきそうになり、白哉は地を踏む足に力を込めた。
「そう、ところでその……大きさなのだが」
 こほんと咳払いをしてから尋ねると、うさなは「大きくなりました!」と無邪気に元気よく胸を張る。
「満月の夜は、月の力が一番強くなります。月の住人が下界に降りるとその能力が制限されるのです。あんな風に身体が小さくなるとは思っていませんでしたが……月が満ちるにつれ、私の力も月と同じように振るえます。姿も、元の姿に戻ることが出来ました」
「――うさなは最初から、あの大きさなのかと思っていた」
「お厭ですか? ――元の大きさの方が、白哉さまのお気に召すのでしたら」
「いや」
 間髪入れずに否定の言葉を発した白哉に、うさなはきょとんとした。首を傾げながら見上げるうさなに向かって、白哉は「いや、その」と再び咳払いをする。
「大きくても小さくてもうさなはうさなだ。どちらのうさなも愛しいことに変わりない」
「白哉さま……」
 うさなの頬がふわっと上気する。
「その姿なのは、では、満月の夜だけと?」
「はい、そう聞いております。――巫女以外の者は、下界に降りることはままあるので――その者たちが言うには、満月が過ぎると小さくなる、と」
「……………………………そうか」
 必要以上に長い白哉の間に、うさなは白哉を見つめたが、そこにあるのはいつもと同じ静かな表情の白哉だった。例え内心で何を思っていても、白哉の表情はそれを表すことはない。――幸いにも。
「ですので、今晩はずっとこのまま――」
 不意にうさなの身体がぐらりと揺れた。倒れそうになるその身体を、白哉が危なげなく抱き止める。 
 胸の中にうさなを抱き止める自分の腕。――感じ取れる暖かなうさなの体温。
 やわらかな――その、身体。
 自分と同じ大きさの。
 抱きしめることのできる大きさの。
 無言で白哉はうさなを抱き上げた。きゃ、とうさなが小さく悲鳴を上げる。
「……疲れているのだろう。今日はもう休みなさい」
「でも……せっかく大きくなったのに」
 やりたいことがたくさんあるというのに――小さな身体では出来ない、同じ大きさになって初めて出来ること。
 そう、腕の中で訴えるうさなの言葉に、ちらりと(あくまで「ちらりと」)『大きくなったうさなと出来ること』を考えていた白哉は、多少の期待を胸に「…………………何がしたいと」と問い尋ねる。
「お料理です!」
 白哉さまに食べていただきたくて、と元気一杯返事をする月の巫女。
「何を?」と聞いて「私をv」などと返って来る筈もなく(いや聞いたりはしないが)白哉は激しく気落ちする自分を叱咤しつつ、「それは楽しみだ」と笑顔を見せる。
 皇女でその上巫女なのだ、箱入りなのは当然だろう。もしかしたらその手の知識は皆無なのかもしれない。
 いや、別に何を期待したわけではなく――サイズ的に丁度良い等、断じて思ってはいない!
「……白哉さま?」
 黙り込んだ白哉をうさなはそお腕に抱かれたまま不思議そうに見上げた。白哉は慌てて思考を切り替える。
「――それはまた次回の満月の時にお願いしよう。今日はもう休みなさい」
「でも」
「満月は今日だけではないだろう。楽しみは後日に取っておく。まずはうさなが元気にならねば」
「はい、白哉さま」
 素直に頷いたうさなの頭を撫でると、うさなは嬉しそうに白哉の胸に顔をすりよせた。
 腕に感じるうさなの身体のやわらかさ――ふわふわとしたその感触に、白哉は平静を保ちながら、屋敷に向かい歩き出す。
 ――数分後、突然見知らぬ女性をお姫様抱っこした当主が現れ、あまつさえそのまま自室に連れ込んだという事態に、朽木邸は大混乱を起こすこととなる。










 おまけ。


 自室に戻り部屋の扉を閉め、寝台の上にうさなを下ろす。
 朽木家の当主である白哉の寝台のシーツは毎日従者によって替えられるので、うさなを寝かすことに抵抗はない。
「ゆっくり眠れ、うさな」
「はい、白哉さま」
 白哉に置かれたまま、寝台の上で横たわるうさなは、白哉を見上げながら無邪気に言う。
「白哉さまもお隣に」
「………………………………………………………………」

 
絶句。

「白哉さま?」
「………………………いやそれは」
「如何なさったのですか?」
「同じ寝台で眠る訳には」
「何故です? いつも一緒ではないですか」
「それはうさなが小さかった所為で、」
「では元に戻りますから」
「いやそれはもったいな……いやその」
「?」
「……うさなは、寝台を男女が共にすると何をするのかわかっているのか?」
「? 眠るのでしょう?」
「……そうだ、眠るのだな」
「白哉さま? 如何なさったのですか、何故涙を?」
「これも愛の試練だというのならば、私は立ち向かわなければならぬ」
「白哉さま?」
「敵は私。強敵だが私は必ず勝って見せよう――さあうさな、休むぞ」
「はい、白哉さま!」

 目の前に、すやすやと眠る愛しい少女。
 無自覚に白哉をある種拷問にかける罪な少女。
 無邪気に白哉に抱きついて眠りに落ちる天然少女。
「……頑張れ、私」
 今夜は一睡も出来ないことを覚悟して、白哉は深い溜息を吐いて目を閉じる。
 胸の辺りに感じるふわふわとやわらかい弾力のある何かが何であるか思考の外に追い出しながら。





 








 今日は早めに帰宅しろ、と朝出かける時に腕を組み踏ん反り返った上から目線でウキアに言われた恋次は、先日ウキアの体調を崩させてしまった後ろめたさもあり「仕事が早く終わったらな」と素直に返事をしたのだが、返って来たのは「早く終わったらではなく早く終わらせろ!」という言葉と共に放たれたうさぎキックだった。
 事あるごとに自分の身分の高さを吹聴するくせに、すぐに手が出る(ウキアの場合は主に足だが)所は恋次が流魂街でよく見た威勢のいい少女たちと変わらない。悔し紛れにそれを言ってみたら「無礼者!」という言葉と共に再度うさぎキック(しかも飛び蹴り)を浴びせられた。
 有事になれば勤務時間など在って無きが如しだ。それが死神の仕事で――死神に限らず急に仕事が入れば私事よりも優先せざるを得ない。
 あいつは仕事というものをわかっちゃいねえ、とぶつぶつ呟きながら、それでも残業にならないように細々と注意を払って仕事をしていると、上司の白哉も今日は用事があるのか、いつもよりもやや早めに仕事を切り上げた。それに向かい、お疲れ様っした、と声をかけ白哉を見送ってから恋次も机の上の書類を整えて立ち上がる。流石に上司よりも先に帰ることは出来ない。
「じゃ、帰るぜ」
「お疲れ様でした!」
 理吉に帰宅を告げ、自宅への道を速足で帰る。ふと「何であいつの命令に律儀に従ってんだ俺は」と思った問いに、熱射病で意識がなくなったウキアが目覚めた時に浮かべた無防備な、素直な、あの花のような笑顔が頭に浮かんで恋次は「いやいやいや」と頭を思いっきり左右に振った。それはありえねーし。あんなくそ生意気な物体Xをこの俺が可愛いなんて思うなんて、朽木白哉が恋に落ちるくらいあり得ない!
 その在りえないことが二重で起きていることを勿論恋次は知る由もなく、「体調崩させた借りを返してるだけだ、それしかねえじゃねえか」と一人呟きながら普段よりも大分早く着いた家の扉を開けた。
「遅い!」
「ざけんなこの野郎!」
 開けた瞬間浴びせられた怒声と瞬間的に返す罵声。これが普段の二人の日常生活であるために、どちらも怯むことはない。
「まあ良い、まだ時間に多少の余裕はある。――まず貴様はすぐに風呂へ入れ。私はもう入った」
 綺麗に汗の全てを洗い流せ、でなければお前に触れられぬ――そう口にしたウキアを前に恋次は固まった。
 何ですかこれは。
 触れるって何だ。
 風呂って何だ。
「――――――な、何の為に」
「私たちの神聖な儀式の為だろう! 解りきったことを聞くな莫迦者!」
 じだじだと足を踏み鳴らすウキアに、恋次の口はぽかんと開いた。
 神聖な儀式。
 しかも、「私たちの」。
「何が如何してそんな事に! それならそうとわかりやすい態度で示しやがれ!」
「私は最初から気持ちは変わっておらぬ! そんなことも解らなかったのか、間抜けめっ」
「解る訳ねえだろ、いつも罵詈雑言浴びせやがってどんだけツンデレなんだよ!」
「ツンデレ? 何だそれは、訳の解らぬことを言ってないでさっさと風呂に入ってこい!」 
「ってか、如何考えてもサイズ的に無理だろうが! 死ぬ気か手前は!」
「大きさなど関係あるか! 想いさえ在れば良いのだ!」
 ぐだぐだ言わずに入ってこい、時間がなくなるだろうが!と一喝され、恋次は応と風呂場に向かう。
 ――何だこの展開。
 湯船にぶくぶくと口元まで浸かりながら事の成り行きに呆然とする。
 一体いつの間にそんな事に。あいつは俺が嫌いなんじゃなかったのか。下民だの猿だの散々こき下ろし、いつも嫌味と悪口しか言わねえお姫様が。
 ――私たちの神聖な儀式。
 ――想いさえ在れば。
 ふざけた様子など微塵もなく、思い返せば切羽詰まったような真剣な眼差しで。
「――何だ、この展開……」
 しっかり汗を洗い流せよ、と念入りに釘を刺された通りに丁寧に身体を洗いながら、恋次は拒否の思考がない自分に気付いてはいなかった。










 外に出るぞ。
 風呂から上がった恋次に、待ちかねたようにせわしなくそう言ったウキアに「外かよ!?」と驚いた恋次の着物をよじ登り、その懐に自ら入りこみ「早く!」と急かし、ウキアは「こないだ行った丘へ行け。――あそこならば人も来ぬ。誰に気兼ねすることなく存分に行える」と着物の中から恋次を見上げた。
「いや、人は来ねえだろうが……流石に外は。ここでいいじゃねえか」
「ここだと大きな声が出せぬ!」
 そうかこいつそん時は声が大きくなんのか、とやや動揺しながら、「はやく!」とせっつくウキアの声に従って、ウキアに負担が掛からないよう計算した上で出来る限りの速さで恋次(とウキア)は丘へと辿り着いた。
「うむ。――よし、ここでいい。ここならば誰にも見られることはない」
 満足そうに頷き、ウキアは恋次を振り返った。
「着替える故、むこうを向け」
「着替える?」
 脱ぐの間違いじゃねえか、ってか如何すんだどう考えても入んねーし、と言われるままにウキアに背中を向けながら考えていた恋次は、「いいぞ」という言葉にやや緊張しながら振り返り――
「―――――って、何だこりゃあ!」
 広い広い緑の丘。
 爽やかに駆け抜ける初夏の風。
 頭上には黒いベール、輝く星々、そして。
 そこに居たのは、紅い袴を身に付けた、巫女装束のウキアの姿だった。20pの小さな身体に巫女装束。
「何って――儀式に決まっているだろう」
 莫迦者、といつもの語尾に付くその単語に、恋次は一気に脱力した。
「満月の夜には浄化をするのが我ら巫女――姉さまと私、二人の務め。神聖なる儀式」
 大きな真円――金の光。 
 つい先日、ウキアが倒れたその同じ場所で、今ウキアは思い切りすがめた視線で恋次を見ている。
「そんなことも知らなかったのか、莫迦者め」
「知るか物体Xの務めなんかよ!!」
「し、失礼なっ!! 一体誰のための儀式だと思っている!?」
「だから俺が知るかっつーの! 大体何で俺まで風呂に入らなきゃいけねーんだよ、関係ねーじゃねえか!」
「私が穢れを洗い流し清めていても、お前が身を清めていなければここに来るまでの間に再び私も穢れるだろう。お前が私を運ぶ以上、お前に触れなければならぬ。故にお前も私同様身を清めてもらわねば」
 生真面目な顔で説明するウキアの言葉を、恋次は右から左に聞いていた。色々考えていた十秒前までの自分に蹴りを入れたい。真正面から斬りつけたい!
 ――この女がそんなこと考える訳ねえじゃねえか莫迦か俺は! いや、別にがっかりなんかしてねえ。気落ちなんざする訳がねえ、在りえねえ! 大体俺はこんな生意気な女守備範囲外なんだ、しかもこいつ得体のしれない生物だし高飛車だし傲慢だし可愛げねえし! 大体この身体じゃヤるこたヤれねーし、いや別に例えヤれる大きさだったとしても俺はこいつなんかに手ぇ出す程飢えてねえし在りえねーけどなっ! こっちから願い下げだっつーの、こんなクソ生意気な女相手に勃つかっ!
「何をぶつぶつ言っているのだ、気色悪い」
「うるせえっ!」
 いつもならばそのまま舌戦に入るところだが、ウキアは「儀式」に気を取られているのか、月を見上げて何かを聞き取ろうかとするように耳をぴんと直立させた。
 しばらくそうしていたが、やがて気落ちしたように肩を落とす。
「――やはり、この傍には居られぬか……姉さまの歌声が聞こえぬ」
 あの責任感の強い姉ならば、例え月に居なくても歌を歌うだろう――浄化をするだろう。姉は殊の外この世界を愛していた。だから今日も、間違いなく一人で浄化を行っている筈だ。月のように環境の整っていない場所での浄化は身体に負担をかけることを知っていても。
 ならば、とウキアは思う。姉の助けをしよう、いつもの通りに。この世界を浄化しよう。
 私がこの世界に降りた故に、月では妹が巫女として儀式を行うだろう。その妹、父親だけが同じな腹違いの妹を思い浮かべ、ウキアはきゅっと眉を潜めた。
 ウキアたち姉妹の母親は、ウキアが8歳の時に早世した。その後、父が娶った女性から生まれたのが妹、三の姫だ。浄化の能力は姉にも自分にも遠く及ばないというのに、己が儀式を執り行えないことに憤っている。自分が一の巫女になれないのは、ただ後から生まれた所為だけだと思っている無知で高慢な妹。
 父が居れば――とウキアは唇を噛んだ。
 二番目の妻を迎えて、五年後、父も輪廻の輪に加わった。
 現在、皇位は弟に――三の姫の後に生まれたまだ幼い弟が継いでいる。勿論幼児に政りごとが出来る訳はなく、実際に実権を握っているのは義理の母だ。
 決して居心地のいい場所ではない。心やすらえるのは互いが傍にいる時だけだ。
 三の姫とその母は義姉二人が同時に消えてさぞ喜んでいるだろう。
 私たちを散々厭ってきたあの親子を喜ばせているこの状況は業腹だが、それもすぐに終わる――もうすぐ姉を見付けて月に帰るのだから。
 ウキアは物思いを振り切るように、勢いよく顔を上げた。その勢いのまま恋次を振り返る。
「貴様、歌を――歌える訳がないか」
「何で自分の質問に自分で答えを出すんだよ!」
「いやいい、これは私が愚かだった。貴様に歌など歌える筈もない。聞いた私が莫迦だったのだ、嗤って良いぞ」
「その理由でお前を嗤ったら同時に俺が俺を嗤うことになるじゃねーか!」
 恋次の返答を聞き流し、ウキアは腕を組み「ふむ」と暫く考え込んだ。その前で恋次はふてたように横になる。
「――仕方ないか、今回は一人でやるしかない」
「一応聞いてやるが、何をだよ」
「歌と舞だ。――いつもは姉さまが歌を、それに合わせて私が舞を舞う。……歌はあまり得意ではないのだが、伴をするのが雅のみの字の書き出しの点すらも持ち合わせない猿故仕方ない」
「舞だあ? 何だあれか、たらったらったらったうさぎのダンス〜か?」
 たらったらったらったらったらったらったら〜、と(本人は絶対に認めないだろうが)自分が思い描いていた「二人の儀式」が違っていたことに気落ちしている所為か、投げやりに揶揄するように歌っていた恋次の目が――大きく見開かれた。
 ウキアの姿が淡い金の光に包まれている。
 光の繭のような小さなそれは、やがて大きく発光した――光の粉が乱舞する。螺旋を描いて空へと昇る。
「――待っ……!」
 その光の中心に居る筈のウキアを、咄嗟に助けようと手を伸ばした恋次の前で、光が弾け飛ぶように一瞬で消えた。
「な――な、な……っ!」
「……莫迦が莫迦な面をすると本当に莫迦だな」
 声が上から聞こえる。――いつもならば足元近くから聞こえていた声が。背の高い恋次の耳に届くよう、いつも大きく張り上げていた声ではなく、静かに落ち着いたその、少女にしては低い声。
 座り込んだままの恋次を、いつもと同じように腕を組み、じろりと見下ろす華奢な身体。
「間近で見てもやはり間抜け面は変わらぬか」
「な、な――何だその大きさ!」
 なんか妙なものでも食ったのか、もしや青い飴でも食ったのか!と狼狽する恋次をふんと鼻で笑い、くいと高慢そうに(そしてそれがまた何故か可愛らしく)ウキアは顎を上げた。
「私は正しくはこの姿だ。今までの大きさが仮なのだ。私たちの力は下界では月の満ち欠けに影響するが故」
 満月の夜にはその能力全てがその身に戻る。月の光を全身に浴びて、今では20pのうさぎの大きさではなく、瀞霊廷の住人と変わらない大きさで、ウキアは態度の大きさは変わらないまま、腕を組んで草の上に座る恋次を見下ろしていた。
「私は儀式に入る。お前はしばらく黙っていろ、気が散る」
 命じられなくても恋次は驚きに何も喋ることが出来ない。唖然と目の前のウキアを見ている。近くなった声はその分当然その顔も近く、その端正な顔がはっきりと見える。すっと一筆で書いたような形の良い眉も、黒く長い睫毛も、濃紫色の吸い込まれそうな神秘的な瞳も、なめらかで白い肌も、薄桃色の触れたくなるような頬も、珊瑚色の唇も。
 その、魅入られている恋次から少し離れて、ウキアは右手を宙に一閃させた。次の瞬間、白く輝く細身の刀がその右手に握られていた。柄からは白く長い、月光に煌々と輝く幾条もの細く長い布が伸びている。




   母なる大地の懐に
   我ら、人の子の喜びは――在る



 得意ではない、と言っていたウキアだったが、それを感じさせない程、その声は透き通り美しい。
 ゆっくりとした声の流れに合わせ、白い刀身がゆるやかに流れる。
 月の光を受けた刀身は光の粒子を生じ――粒子は煌々と空中へ散じていく。



   大地を愛せよ
   大地に生きる人の子ら
   その立つ土に感謝せよ



 荘厳なその祝詞を歌い、流れるように舞うウキアの姿は――まさしく、神子であり巫女だった。
 神の代理人。
 神の言葉を語る者。



   平和な大地を、
   母なる大地を、
   大地を誉めよ
   讃えよ、土を
 


 ウキアが歌い舞う度に、空気が浄化されていくのがわかった。
 清らかな風に包まれる。
 草木が歓びに震えるのがわかる。



   恩寵の豊かな大地
   讃えよ、土を



 人と同じ姿になっても細く華奢で小さな身体全体から、神気が溢れているのが解る――全ての力を注いでいるのが、解る。
 何の為に? 誰の為に?
 ――この世界の為、に?



   母なる大地を
   ――讃えよ大地を












「――何を呆けておる」
 はっと気付くと、目の前にウキアが呆れた顔で恋次を見ていた。あの、空間だけ移動したような、張り詰めたような清冽な凄烈な空気はもう既にない。来た当初と同じように、爽やかな風が吹き抜けていく――否。
 空気が、清められている。
 気付かなかった澱が、僅かずつけれど確かに淀んでいたこの瀞霊廷中の――もしくは尸魂界中の空気が一掃されている。 
「――浄、化?」
「お前たち死神が現世の負の存在である虚を滅却し、現世のバランスを保つのと同じように、ここ尸魂界の陰の気を浄化し、尸魂界のバランスを保つこと――それが私たち一族の仕事だ」
 淡々とウキアは説明した。その手には既に白く輝く刀はない。
「姉さまは歌で、私は舞で。陰の霊子を清めて陽の霊子に。そうしてこの世界の、空間の調和を保つ」
 両の手を出せと居丈高に命じられ、まだ呆然としていた恋次は言い返すことなく両手を前に差し出した。その恋次に向かい、「良い心がけだ、下僕」とウキアは笑い――
 恋次の腕の中へと倒れこんだ。
「おいウキア!?」
「うるさい、黙れ」
 ぐったりと力の抜けたウキアの身体を抱き止めたまま、恋次は胸に顔を寄せているウキアの顔を覗き込んだ。その顔に疲労の色が濃い。
「少し疲れただけだ。立っているのも面倒故、暫くこうしていろ」
「疲れた?」
「――月のように増幅する装置がないからな。全力で力を振るったから――休めば治る」
 はあ、と息を吐くウキアの身体を抱き上げ、恋次は歩き出した。何処へ行く、と視線で尋ねるウキアに「ここからなら楓ん所が近い」と答えた途端、ウキアの両耳がぴんと立った。
「厭だ」
「はあ? 何言ってんだ、そんな立ってもいられないくせして」
「厭だ。あそこには行かない」
「あのなあ、」
「うるさい黙れ下僕。私が行きたくないと言ったのだ。あそこには行かない。楓なんて女のとこには行かない。絶対行かないっ!」
「ああ、人見知りしてんのか? そういやお前、知らねえ奴にトラウマあるもんな。大丈夫だって、楓は。あいつは良い奴だからよ。お前もきっと気に入るぜ、さっぱりした良い女だよ」
「うるさいうるさい黙れ莫迦っ! 行かないったら行かない! 絶対行かない、絶対行かないからなっ!」
 ぎゅうっと襟元を握りしめ顔を埋め、表情を隠しながらウキアは叫ぶように言った。ウキアが何に対してそんなに怒っているのかわからないまま、恋次はわかったよと肩を竦める。
「本当に我儘なお姫さまだな」
 膝裏に手を入れられ、ひょいと身体が宙に浮いてウキアは悲鳴を上げた。それはただ純粋に何が起きたかわからずに上げた悲鳴だったが、恋次は別の意味に捉えたようで、眉を潜め「別に変な意図はねえよ、安心しろ」と不機嫌そうに言った。
「歩けねえんだろ。妥協しろ」
 お前みたいなのに欲情するか阿呆、とウキアを安心させるために言った恋次は、「こちらこそ願い下げだ!」という怒声か「私の魅力も解らぬなどさすが猿め」という嘲笑を予想したが、いつもならば瞬時に返るその反応がない。
 ん、と腕の中を見ると、何故かウキアの俯いた顔が、
(泣い――て?)
「おい、ウキア――」
「疲れた、寝る」
 顔を隠すように両手で押さえ、ウキアはそれきり何も言わなくなった。
 ああ、と気の抜けたように恋次は返事をするしかなく――あの涙は疲労の所為だと自分に言い聞かせ、恋次は家へと足を進めた。
  







 何となく気まずいまま部屋へと戻った恋次は、ウキアを抱き上げたまま途方に暮れた。
 さて、どこに下ろせばいい。
 この家には寝台が一台しかないが、それは普段自分が使っているものだ。そこにウキアを寝かせていいものか――それは何となく気が引ける。
 かといってここまで疲労しているウキアを床に置く訳にもいかない。思案している恋次の耳に、「早く下ろせ、莫迦者」とぽそりと小さな声がした。
「いや――ここに下ろしていいもんかと」
「いつも私は此処で寝ているではないか」
「いや、そうなんだが――そりゃうさぎサイズだったからで、だから別に気が引くこともなかったんだけどよ、さすがに今は」
「四の五のうるさい。さっさとしろ、私ははやく横になりたいのだ」
 硬い声でそう言ったウキアに、本人がそうしたいと言ってんだからなと誰にともなく言い訳して、恋次は寝台の上にウキアを横たえた。すぐにくるりと背中を向けるウキアに、何か言葉をかけようとして何も思い浮かばず、恋次は開いた唇を閉じ、眠るために居間に向かおう――とした。
「何処へ行く」
「いや、俺も疲れたから寝る」
「お前の寝台はここだろう。ここで眠ればいい」
 背中を向けたまま、ウキアは怒ったように言う。
「いや――それは不味いだろ、色々」
「私には欲情しないのだろう? ならば何の問題もないではないか」
 棘のある声に、「あのなあ」と恋次は腕を組む。
「それとこれとは別だろうが。大体男はなあ、別に好きでも何でもない女とだってヤれるんだぞ? 少しは危機感持てよ」
「……うるさいうるさい! そんなことは解っている、莫迦!」
「何怒ってんだよ、わっかんねえ女だな! 何だ、それとも襲ってほしいのか、ああ!?」
 帰宅してからの混乱の数々に、自分自身の気付かない想いに、ウキアの意味不明な言動に、いい加減苛立っていた恋次は自棄のようにウキアの身体を抱え上げ寝台の上に抑えつけた。
 ウキアの目が驚きに見開かれる。
 見下ろす恋次と、見上げるウキアの視線が真直ぐにぶつかる。
「…………あ」
 同時に声を上げたのは、同時に胸が痛い程跳ね上がったからだ。
 動揺するほど。我を忘れそうになるほど。音が聞こえなくなるほど。時間が止まったかと思うほど。
 ――自分の気持ちに、気付きそうになるほど。
「――っ、ってな事になったら――困るだろーが?」
 掠れた声を誤魔化すように恋次はふざけたように抑えつけた腕を離した。途端、ウキアがぱっと身を離す。
 距離を置くウキアに当然だなと思いながら――この動悸が聞かれないだろうかとぼんやりと恋次は思った。
 何かもう、全てが滅茶苦茶だ。
 何もかもわからない。
 混乱の極致だ。
「わ、私も――多少、意地を張りすぎたようだ」
 すまん、と小さな声で謝るウキアが、そろりと寝台を下りた。そのウキアに今度は恋次が「どこに行くんだよ」と声をかける。
「いや、向こうの椅子で休ませてもらおうと……」
「いいよ、お前がこっちで寝ろ。今シーツ替えるから」
「そんな訳にはいかぬ。ここはお前の家だし、」
「んだよ、いつもは踏ん反り返ってるくせになに殊勝なこと言ってんだ」
「いつも踏ん反り返ってなどおらぬわっ! 貴様こそいつもはそんな気など使わぬではないか! 気持ち悪いからやめろ、莫迦者!」
「気持ち悪ぃだと!? ふざけんな、人が親切にしてやってんのに何だその言い草! 手前本当に女か!」
 さっとウキアの手が恋次の手を取った。何しやがる、と振り払おうとした恋次は、その手に感じるふわりというやわらかな感触に――ぽかんと口を開けた。
「莫迦が莫迦面をすると本当に莫迦だな」
 恋次の手を自分の胸にあてたまま――ウキアは冷たく言い放った。
「私が女か? ――如何思う、莫迦者」
 手を離した後も固まる恋次を見上げ、ふふんとウキアは勝ち誇った。
 さっきから恋次の言葉に何故か泣きたくなったのは、恋次が自分を女として認めていないことに腹が立っただけだ。
 それだけのことで、自分が恋次をどう思っているかなんて関係ないし、というよりも私は恋次なんてなんとも思ってないし。
 だからこいつに私が女だときちんと認めさせれば、この胸の痛みとかもやもやとかは全て綺麗さっぱり消え去る筈だ!
「何だかんだ言ってもお前は私を女だと認め――何?」

「―――小せぇ……」
「黙れ貴様!!!!!!!!」

「ありえねー、それは胸じゃねえ! お前男だったのか!?」
「うるさい黙れお前は殺す!!!!」
 怒号が飛び交い、罵声が交差し――夜は騒がしく更けていく。
 互いが一瞬気付きそうになった相手への想いは、どちらもそれを認めたくないが故に、それぞれなかったこととして胸の奥に仕舞われた。
 それは仕舞っただけで、消える訳ではなく。
 隠せば隠す程、襤褸が出ることを気付かずに――









 

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本文中に姉妹が歌っているのは

うさな 「流浪の民」
ウキア 「大地讃頌」

です。
流浪の民は一部歌詞を変えたり、載せてない部分もあります。

どちらの曲も司城が中学の時に合唱コンクールで歌った歌です(笑)
どっちも大好き!