おやすみ。
 また逢う日まで。




 そう、また逢える。その言葉を、強く、強く、強く信じている。
 別れては出逢い、出逢っては別れ、再び出逢い、そして別れ――
 幾星霜、続いてきた出逢いと別れ。
 ある時は見渡す限り砂が広がる戦乱の国でふたりは出逢った。
 ある時は冬の冷たい雪の降る下でふたりは出逢った。
 いつでも、出逢った時に感じるのは――「みつけた」という想い。狂おしい程懐かしく、そして泣きだしたくなる程の歓喜。
 ようやく出逢えた。
 ずっと探してた。
 ずっと待ってた。
 いつの時代も、どんな世界でも――輪廻の輪に組み込まれた転生は、時も場所も時代も空間も、整合性など見つからない。
 それでも必ず逢えると、強く強く信じていたから、怖れることはなかった。
 今までも、これからも。
 出逢えばわかる。過去の記憶はないけれど、逢えば必ずわかる――その「みつけた」という歓喜で。
 だからそれまで眠りにつく。
 再び逢える、その時まで。


 おやすみ。
 またいつの日か出逢えるその時まで。






















































 暗い闇の中で、少女は膝を抱えて蹲っている。
 少女は物心つく前からずっと一人だった。
 この荒んだ世界で暮らしてきた少女は、既に孤独には慣れている。
 否、慣れている、とは違うのかもしれない。
 少女はいつか誰かと出逢えることを信じているから、震えるほどの孤独も唇を噛んで耐えることができた。
 それは何の確証も根拠もない。
 ただ、少女は信じていた。
 いつか、きっと。
 いつか、必ず。
「誰か」と逢える。
「誰か」が待っていてくれる。
 だから自分は一人ではないのだ、と。



 その、暗闇の中膝を抱えていた少女の身体がぴくりと動いた。
 遠くから喧騒が近付いてくる。
 物の壊れる音、男の怒鳴り声――子供の怯えた声。



「――せ! 殺すぞ止まりやがれ!!」
「あいつ鎌持ってるよ! 本気でオレら殺す気だよ……っ!」
「うるせえ、黙って走れ!」



  
 最後の、おそらく少女と同じ程の年の少年の声を聞いた瞬間、少女の無表情だった顔に――緩やかに、鮮やかに、笑みが浮かぶ。
 その唇が微かに動き、声なき声を紡ぐ。
 それは、無意識に。少女すら己が何を言ったのか知らぬまま。
 そして少女は立ち上がる。
 近付く喧騒に向かう為に。
「誰か」に出逢う為に。
 待ち続けた「誰か」に出逢う為に。
 「みつけた」という狂おしい程の懐かしさと歓喜に溢れながら――
 ルキアは、走り出した。







 南流魂街、78地区、戌吊。
 そしてふたりは再び出逢う。







 ――ふたりの物語が、再び始まる……








 

                    
STAY WITH ME  完

 














あとがき