突然暗くなった部屋にルキアはうろたえた。
 締め切った部屋の中は漆黒で、突然暗闇に取り残されたルキアの目には何も見えない。音もなく、恋次の気配さえ掴めない。
 ジジッと耳障りなノイズが静寂を破る。
『……――ル……ア……――ろよ』
 小さな音が、聞こえる。
 蟲の羽音にも似た微弱な振動、絶え間なく羽ばたき続ける羽虫の音。
『――……んなに――……振って……――』
 抓みを捻るように、小さかったノイズは徐々にその音を上げていく。
 雑音でしかなかったその音は、やがて意味を持った言葉になっていく。
『……ら、自分でも――……ってるんだろ?お前の――……』
 突然、壁に光が集積した。
 光源としては僅かな光。荒い画像――壁に直接投影されたその画像は、精密さには程遠い。
 けれど、壁一面に映し出されるその映像。
「……あ……っ」
 床の上、茫然と座り込んだルキアは、壁に映るその映像を見上げた。
『は……あ、うあ……っ!』
 音量が上がる――鮮明になる音声。
『や……あああっ、く、うあ……っ!』
 ぎしぎしと軋む寝台の音、叩き付ける音と響く水音。
『恋……んっ、もう、や……厭……っ!』
『こんだけよがってる癖に何言ってやがる』
 更に激しくなる軋む音、粘着質な水の音、そして――明らかにわかる、悦びの声――穿たれるそれに歓喜し溺れる、その証の嬌声。
「……あ……」
 画像の白い光の反射を浴びながら、ルキアの顔も白くなっていた。蒼褪め、血の気の引いた顔――精神の均衡の崩れる、ぎりぎりのライン。
「う……あああ……っ」
 壁に映る映像――その痴態。男を受け入れ、理性を失いただ快楽に溺れる自分の姿。声をあげ、唇から透明な唾液を滴らせ、腰を振り、背中を反らせ、感極まって咽び泣く――自分の、姿。
「い……や」
『あ、はああ……っ!うあ、あ、あ!』
「いやあああああああああああ!!!!」
 耳を塞ぎ、目を固く瞑り、ルキアは――絶叫した。
 耳に残る喘ぎ声、脳裏に焼きついた自分の淫らな姿。
 全てを見たくなくて、ルキアは床に蹲り絶叫する。
「――お前の本性はこいつだろ?」
 嘲るような声――事実、嘲り笑う、低い声。
「取り澄ました顔していても、お前の本性はこいつなんだよ――ルキア」
 くつくつと咽喉を鳴らして嗤う、甘い毒。
「ほら――こいよ」
 蹲るルキアの手を掴み引き寄せ、恋次はねっとりとルキアの耳に舌を這わせる。
「お前の映像を見ながらヤろうぜ――ルキア」
 
 







いつ書いたかも覚えていない超小話…