部屋から漏れる小さな灯りに、声をかけたが返事がない。
戸を開けると、そこには窓に寄りかかり眠るルキアの姿があった。
開け放した窓からは、夜風が優しく入り込む。
月でも見上げていたのだろうか、ルキアは床に座り、窓枠に両手を置き、そこに顔を埋めるようにして寝入っている。
声をかけようとして、その頬に薄く白い軌跡があることに気が付いた。
涙の痕。
初めてルキアを見た時、似ていると思った。
いや、似ているという言葉では足りない程の、その二人の相似性。
そんな筈は無いと打ち消した次の瞬間には、もう目を奪われて離す事が出来なくなった。
傍に置いても、何の意味もない事はわかっていた。
あれの代わりになる者など在る筈が無い。それこそ許す事など出来る訳が無い。
あれはもういない。
解っていた―――解っていたのだ。
けれどルキアを見る度に心は揺らぐ。
あれと同じ顔。
あれと違う魂。
なぜ同じ顔をしているのか。
その顔は……の物なのに。
自分はルキアを憎んでいるのか、と思った。
見ていたくはなかった。
ルキアを見ていると、あれはもういないのだと、そう容赦なく現実を叩きつけられる。
見ていたかった。
ルキアを見れば、あれの想い出が鮮明に蘇る。
相反する二つの想い。
交差する感情。
愛情と憎しみと。
眠りを覚まさぬよう、そっと抱き上げた身体は驚くほど軽い。
頬に残る白い筋を、指で辿って痕を消した。
違う人間だ。
私の愛した、……ではない。
……それでも。
頬に触れた指は、小さく開いた唇に辿り着く。
指に触れる吐息は暖かかった。
「緋真………」
愛したのは、お前だけ。
「………ルキア」
お前は、緋真ではない。
それなのに。
月が、見ている………。
NEXT―――tatoo〜消エナイ疵
奥様劇場、更新ですー。
今回は幕間ですね。話が特に進んだわけではないのですが、ルキアの板挟み状態は書いておかなくちゃあ、と。
恋次が好きだけれど、白哉の期待…朽木家に相応しくあれ、という言葉を裏切れない。
白哉はルキアに過去は振り返って欲しくないから……それをルキアは知っているから、もう身動きが取れない。
白哉は過去の想いに囚われたまま、ルキアへの想いに戸惑っています。
私的には、白哉は緋真一筋で行って欲しいです。
ルキアには恋愛感情と言うわけではなくて、自分でも良く解らない複雑なものを持っているような気がいたします。
さ、次からまた話は進みます。
今回はあまりお色気シーンがなかったので、次は頑張ります。
今まで書いた事ないシーンを書く予定(笑)
今からどきどきしています。色っぽく書けるかな(笑)
2004.12.1 司城さくら