身体の中に蠢いている、その冷たい感覚に私は仰け反った。
 今まで何度も受け入れたソレとはあまりにも違うその感覚―――それ自体に熱などない、私の熱を己の熱とするイキモノ。
 それが、私の中で蠢いている。
 私の中でその身をくねらせている―――主の命じるままに。
 ちろちろと伸ばす舌は、私の反応を見て更に動きを早めている。
 内部から舌で愛撫される事など有り得ない―――その有り得ない状況を受けて私は悲鳴を上げた。
 やめてくれと、何度叫んだことだろう。
 助けてくれ、もう許してくれ、と、何度懇願したことだろう。
 涙で霞む視線の先、人ならざるモノに突き上げられ、揺さぶられながらその姿を求めた視線の先、恋次は私を背後から支えながら、ただじっと私を見下ろしていた。
 恋次はすべてを見ている。
 私がよがり狂う様を。
 やめてくれ、と言いながら身体は反応している私の嬌態を。
 羞恥を感じる余裕もない。
 ずるり、と蛇が身体をくねらす。
 ひ、と息を呑んで身体が仰け反る。
 く、と蛇が首をもたげる。
 その感覚に声を上げた。

 壊れる。
 何かが、必死で護っていた私の中の何かが壊れてゆく。
 認めたくなくて目を逸らしていたそれが、容赦なく私の前に姿を見せようとしている。
 
『やめてくれ、おかしくなる、気が狂う……っ!』

 最後の理性で叫んだ私を、
 恋次は――許しては、くれなかった。

「狂えよ、ルキア」

 命じるように。
 ああ、確かに恋次は私の主だ――恋次はここで私を飼っているのだから。
 恋次は私に命じる。
 主は私に命じる。

「狂え」

 私の中の何か、その最後の一欠片が粉々に砕けて、静かに静かに舞い落ちた。








「ああああああ………っ!!」
 声を上げる、それはもう嬌声と言っていい。
 我を忘れてすべてを忘れて、ただ身を貫く感覚に意識を集中し、……けれどそれでは満足できない。
 私が欲しいものはこれじゃない。
 私が欲しいものはこの冷たい猛りじゃない。
 もっと熱い、もっと激しい猛り。
 私の中を熱で満たす、熱い想い。
 ……欲しいものは。

「恋次、恋次……!」

 ―――お前が欲しい。



 ―――狂っていく。
 いや―――疾うに狂っていたのだ、私は。
 お前を受け入れ、お前を待ち続けていたこの日々の中。
 他の事はどうでも良いと思うようになった私は、この部屋でお前に飼われている事を喜びと感じている私は、疾うに狂っていたのだ。
 抱きしめられ、喉に牙をたてられ、体中に爪をたてられ―――狂った恋次のその愛情に、身体が応えたその時から。
 お前の望み通りに私は狂う。
 狂った私は、己の望みを口にする。
 理性が砕け散った私には、それは容易い事だった。



 お前がいい。
 お前自身で私の身体を貫いて。
 愛して。
 愛して。
 愛して、もっともっと。
 もう何もいらないから。
 お前がいればいい。
 もっともっと狂わせて―――。


 
 私の言葉を聞いて一瞬浮かんだ恋次の表情は何だったのだろう。
 それは―――哀しげな。
 後悔、だろうか。
 私を変えた己の行為の。
 

 けれど、もう遅い。
 今度は私が許さない。



 ―――今度は私がお前を狂わせる。












裏日記にアップした当初、「蛇尾丸を普通に見られなくなったじゃないですか!」と怒られた(笑)話。
私、基本的に監禁話が大好きなんです。
両想い前提でね。

蛇さん、かなり素敵なえっちの小道具になると思うのですが…。
自分で言うのもなんですが、この一連の話、結構気に入ってます。
蛇を使ったところがね!(しつこい)