「今年もあと五分で終わりだな」
並んで座りながら、ルキアは窓の外に目を向けた。もちろん外は真暗で、何が見えるという訳ではなかったけれど…時の流れる静かな砂の音は聞こえた気がした。
「早いもんだな、時が経つのは。驚きだぜ」
「私は今、ここに居ることの方が驚きだ。よく兄様の許可を取れたものだ」
新年を一緒に迎えようという恋次の言葉に、嬉しかったが「兄様がお許しにならないよ」と首を横に振って。だから一週間後、恋次から「隊長の許可を取ったぞ」と言われた時には、嬉しさより驚きの方が勝った。
「粘り勝ちだよ。俺は諦めねー男なんだ」
余程しつこく毎日兄様に願い出ていたのだな、とルキアは兄に同情しつつ、そこまで自分と一緒に居たいと思ってくれる恋次の心が嬉しい。
「今年は色々あったな」
「ああ」
何より変わったのは、こうして昔のように話せるようになったこと。
昔のように笑い合い、喧嘩し合い、ふざけ合う。
昔のように、ではないこともあるけれど。
「もうそろそろ年が変わるぞ。あと十秒」
九、八、と数えて、七と言う前に突然腕を引かれ、気付けば恋次の胸の中にいた。問いかける為に見上げた視線、恋次の顔が近付く…ルキアはゆっくりと瞼を閉じた。
 唇が重なる。
…三、二、一。
「明けましておめでとう」
 二年越しの口付けから唇を離してそう言う恋次に、ルキアは恥ずかしそうに頬を染める。
「ええと…今年もよろしく」
「今年だけかよ?」
「………………ずっと」
「ずっと、な」

この幸せは一瞬だけじゃなくて永遠。
A HAPPY NEW YEAR.
新しい年に。