手に入らないのならば。
どんなに焦がれても、切望しても、決して叶わない想いならば。
この手で総てを叩き壊す。
何かを叫んでいたようだった。
見開いた目が、信じられない、と叫んでいたその目が。
歪んだ喜びを自分にもたらした。
傷つけて、滅茶苦茶に、原形も留めないほどに、欠片も無く、粒子の次元まで破壊し尽くしたかった。
必死に抗う細い腕を押さえつけた。
背ける顔を力任せに引き戻し、固く結んだ唇を無理矢理開いて貪った。
逃れようとする身体を組み敷いて、白い肌のすべての場所に舌を這わせた。
そして、持てる力の全てを持って拒絶しようとしたルキアの身体を、力づくで引き裂いた。
2
元より受け入れる状態になっているはずもない。恐怖と屈辱と怒りと驚愕とが混ざり合って混沌としている意識に、恋次の与える刺激を受け止める余裕はない。ルキアのそこは潤う筈もなく、けれど恋次は全く斟酌することなく、己をあてがうと一気に刺し貫いた。
「う……うあああああ……―――――っ!!」
自分の腕の下、ルキアの絶叫が、身体を無理矢理開かれた痛み故の絶叫が、恋次を更に狂気へと誘う。
痛みから逃れようと、自然身体を上へといざるルキアの肩を押さえつけ、そこを支点に更に奥へと突き入れる。ルキアの唇から再び、今度は小さく悲鳴が漏れた。
乾いて恋次の侵入を拒んでいたルキアの内部は、今ではぬるりとした感触を恋次に伝えている。勿論受け入れる為ではなく、恋次の暴力的な行為に傷ついた場所から出血しているに過ぎず、その痛みの激しさと、信じたくないこの状況にルキアの瞳から涙が溢れた。その涙は恋次が突き上げるたびに頬を伝い落ちて、そしてまた直ぐに溢れ、また落ちる。
既に抵抗するだけの気力も体力も無くなったのだろう、急にルキアの抵抗は少なくなった。
恋次はそんなルキアを無表情に見下ろす。
足りなかった。
手に入れた筈なのに、満足など程遠かった。
もっと悲鳴を上げさせる為に、恋次はルキアの肩を抑え付け、激しく自分を行き来させる。
ただ自分の快楽を求めるだけに、ルキアの傷を広げていく。
「やめ……やめてくれ、恋次……」
涙を流しながら、ルキアはうわ言のように何度も何度も呟いた。小さな手が、恋次の胸を叩いた。まるで、その行為が恋次を正気に引き戻すと信じているかのように。
「……ぅぁっ……」
ずる、と自分の中から引き抜かれたものにルキアは安堵し、その一瞬後に、再び一気に貫かれ悲鳴を上げる。
何度も突き入れられ、激しく内部で掻き回され、快感など微塵も無く、快楽など欠片も無く、ただ苦痛のみのその行為に、ルキアは消耗していく。漏れる声も、今では意味の成さない苦しげな呻き声ばかりだ。
奇妙な安堵に恋次は囚われる。
壊れた、自らの手で破壊され汚されたルキアに、悦びを覚える。
とうに正常な判断など出来なくなっていた。
ルキアへの愛情は、歪んで歪な形でしか表せなくなっていた。
狂気の愛。
決して相容れることの無い、狂った旋律のエゴイズム。
もう叶う事のない想いと知って、恋次は全てを投げ捨てた。
過去も未来も。想い出も、ルキアへの想いも。
現在のみを選び取った。ルキアの心が手に入らないのならばと、その身体を力尽くで手に入れた。
『幸せになって欲しい―――』
自らの想いも、棄てた。
何度も突き刺し、何度も侵し、何度も犯す。
充たされない。混ざり合う事はない、溶け合う事もない。
ルキアの細い腰を押さえつけ、引き寄せ、己の欲望を叩きつける。
ルキアの小さな身体は、既に恋次に抵抗することも出来ずに、恋次が動くままにただ揺れていた。床に投げ出された腕は力なく垂れて、時折痛み故にぴくりと指が小さく動く。
涙も、もう流しつくしたのか。ルキアの瞳にもう涙はなかった。ただ、見開いた虚ろな瞳で宙を見ていた―――否、何も見てはいなかった。
恋次も、この現実も、すべてを拒絶して。
ルキアの、何の感情も浮かべないその白い顔を恋次は見下ろした。
子供の頃から見続けた、何よりも大事な存在。
決して手に入らぬと知って、自ら破壊したその存在。
離さない、手に入れたい。
―――俺はルキアを手に入れたのか。
唇を重ねる。
ルキアは何の反応もしなかった。
切望し、渇望し、絶望し、非望し、やっと手に入れた唯一つのもの。
二度と離さない。
二度と離れない。
誰もいない部屋の中、月明かりの差し込む青い空間の中、
その瞳に狂気を内包したまま、恋次は一人微笑んだ。
NEXT “近い身体、遠い心”
久々の最深部更新です!
前回は11月に、1万ヒット直後に書いたんですね。3ヶ月で2万ヒットという事になるんですね、ありがとうございます(感涙)
で。
ラスボス恋次です(笑)
前回「闇色の狂欲」の恋次バージョンです。なので話は進んでいないのですが。
拍手かアンケートで、「逃がさない、逃げられない」の恋次とルキアが未遂でよかった、と書いて下さった方がいたのですが、すみません今回は完遂です(笑)
こっちの二人も、というより恋次はまたひとりで勝手に誤解してます。「闇色の〜」を読んで頂ければお解りの通り、ルキアはちゃんと恋次の事が好きでした。海燕への好意は海燕という人間への好意で、恋次への愛情とは全く別物だった訳なのですが。
あ、あくまでもうちのサイトの話ですよ。
今回は話が進んでいませんが、次は進みます。奥様劇場で味をしめた(笑)鬼畜恋次に活躍して頂きましょう!!言葉責め!小道具使用!!(笑)
ついて来られる方はついて来て〜!!(笑)これでも隠しじゃないので一応セーブして書いてるのですが。
一度リミッター解除して書いてみたいものです…。いや書く予定ありますがね!(笑)
さ、こっちの恋次はいつ誤解に気づくでしょうか。
私の書く恋ルキなので、恋次は鬼畜のまま終わりません。
基本はらぶらぶだもーん。
では、次の最深部更新はいつかわかりませんが、次回「近い身体、遠い心」でお会いしましょう〜!
2005.2.25
司城 さくら