「おったんじょうびおめでとう、阿散井君!!」
「うわ、なんだお前!!」
突然現れた藍染惣右介に、二人でささやかに誕生日を祝っていた恋次とルキアは飛び上がった。
「何でこんなとこに居るんだ、あんた虚圏に居るはずだろう!」
背後にルキアを庇いながら恋次は藍染に向き合うと、藍染はちちち、と人差し指を一本立てて左右に振って見せた。
「いやほらここ(裏創作日記)は設定無視のトワイライトゾーンだし」
「それにしてもちょっと無視しすぎじゃあ……」
後退る恋次を無視して、妙にハイテンションな藍染は、
「今日はチェリーな君にチェリーな君が一番喜ぶ物をプレゼントするよ、チェリー阿散井君!」
「3回も言いやがったな手前!」
「はい、現世虚圏尸魂界、三国一の催眠術師藍染がお贈りするイッツ・ミラコー!」
「こっちの話聞け!」
「それでは朽木ルキア嬢に歌って頂きましょう、『時には娼婦のように』!!」
「古っ!!って、ルキア、下がれ!!」
「……っ!」
恋次がはっと気付いた時には時既に遅く、恋次の背後に震えながら隠れていたルキアの身体は、何かに弾かれたようにぴくっと跳ね上がり、くたりと慌てて手を差し伸べる恋次の腕の中に倒れこんだ。
「ルキア!!」
「では、楽しい誕生日を〜」
「こら手前、帰るな!待てこの野郎!!」
藍染の後を追おうとした恋次の身体が、くい、とルキアの手に引き止められた。
「……ルキア?」
ルキアの様子がおかしい。
半分瞼を落とした目、軽く開いた唇。
心なしか赤さを増した唇を、尖った舌がぺろりと舐めた。
つ、とルキアの手が伸びて恋次の背中に回された。背中をつつ、と撫で上げながら、ルキアは恋次の腕の中に身を投げる。
「おい、ルキア?」
狼狽する恋次の胸元を開いて、露わになった肌を見ると、ルキアの唇が笑みを浮かべた。いつもの見慣れた笑顔ではなく、どこか淫猥な、笑み。
ルキアの舌がちろりと覗くと、ゆっくりと恋次の肌を舐め上げた。焦らすように、味わうように丹念にルキアの舌は恋次の肌を濡らしていく。
「ちょっ、おい、ルキア……っ」
慌ててバランスを崩した恋次を押し倒すと、上にのしかかる様にルキアは恋次の腹の上に跨った。
「……ふふ」
妖艶に笑って、ルキアは髪をかきあげる。
「いや突然こんな事になっても俺にも心の準備ってもんが、ってか俺たちキスすらしたことないのに一気に行っちゃいますか!嬉しいような悲しいような、って本当にいいんですかルキアさん!!」
自分の分身を弄られて、昇天しそうになって恋次は必死に耐えた。
「あーもうダメだ!理性の糸切れたし!!」
がばっと起き上がった恋次は、ルキアの身体を掴むと今度は逆に押し倒す。床にルキアの黒い髪が広がって、ルキアの瞳が恋次を見上げた。
ルキアの胸元に顔を埋め、切れた理性のままに行動しようとした恋次の腕を、ルキアの白い腕が掴んで引き止める。
赤い唇が動く。
「……金は持ってるだろうな?」
「……は?」
「持っていないのか?金も払わずに私を抱くと……?」
「え?金いるのか?」
「当たり前だ、こっちも商売だからな」
はっと先ほどの藍染の言葉を思い出す。
『娼婦のように』
「……金もない奴が私に触れるとは無礼千万……っ!!」
ぎろりと睨んだルキアのその目の凄まじさ。
「誰か!こいつを放りだせ!」
「誰かってここには誰も……」
「……居るのだが」
突然聞こえた低い声に、ルキアを押し倒した状態の恋次は、ひい!と息をのんだ。
固まる恋次の背後から、淡々と声が続く。
「巨大な霊圧が感じられた故来てみれば……貴様、余程その命要らぬらしい……」
「いや、ちょっと、これには訳がありまして……」
ごごごごごご、と霊圧が上がっていく朽木家当主に、ルキアを押し倒した姿勢のまま恋次は弁解をしてみる。
「藍染が、ですね、ルキアに妙な術かけて……うわ、ちょっとまじっすか!!」
「動くなよ、動けばルキアに当たるからな」
「いやそれはまずいでしょ、ちょっと隊長!」
「従業人A!こいつを放り出せ!」
「はい、ルキア様」
「ってあんたも術かかってんですか!?」
「千本桜」
桜の花弁が。
舞い遊び、舞い乱れ、舞い散り、………
昇天。
いやさっきとは別の意味で。
ってか本当の意味で。
全てが終わって、血塗れの恋次が倒れ伏したその身体の下で、ルキアは目を見張った。
「恋次?どうしたのだお前?」
「元に戻ったか……?」
「血塗れではないか!どうしたんだ恋次!」
「いや何でもないです…」
「自業自得だ、ルキアを襲おうなどと考えるからだ莫迦者」
「……あんたしっかり正気だったんじゃないっすか……」
がくり、と意識を失う恋次だった。
お誕生日おめでとう。
2005年8月31日、恋次お誕生日に書いた話。
裏に置く必要もないのですが、表は表で書いたものがあったので一応こちらに(笑)