恋次は真っ赤なケースのCDを拾って
「こればっか聴いてんだな」
と歌詞カードを開いた。
パラパラと捲りながら
「どこが好きなんだ」と言うので
私はうーんと首をひねって
「地獄の花を摘んでるみたいなところが」
と言ったら恋次の指がピタリと止まった。
「それで?」
と続きを催促されて私は益々言葉を捻り出すのに苦労する。
「摘まれた赤い花が彼女の声で天に帰る感じがして
彼女は泣きながら笑いながら震えながらソレをしていて
ガラスがいっぱい体中に突き刺さってるのに
それでも歩くのを止めなくて
だから硝子片の音も彼女の声になってて
倒れて動けなくなってもまだ歌ってるみたいな声が」
と一生懸命に紡いだら恋次の腕が伸びてきて私の頭を抱いた。
「お前にも歌えるぜ」
変に切なそうな恋次の声音の方が余程、彼女の声に近いと思った。