兄様から贈られた、その豪奢な衣は
天の羽衣のように美しくて
その完璧な鮮やかさに息が詰まった。
清廉に区切られた空の中、
私はヒラヒラと頼りない羽音をたてながら
どこへとなく
留まるべき花さえ見当たらず
ただ
夏の終わりの羽虫が、そうするように
死に場所を求め
あてもなくヒラヒラと、零度の空を飛び続けた。
誰かはやく、私のこの身を貫いて
標本にでもしてはくれないだろうか。
休まる羽根でもないならば
いっそ捕えて箱にでもしまってくれればいいものを。
そうでなければ
握り潰してくれないか。
パリ、パリと無機質な羽の破れる音と共に
私の壊れる様を楽しんで。
指の間から落ちていく羽根のカケラの有り様を楽しんで。
それなら、せめて
この世に生まれ出た甲斐もあったと
せめて嘲笑えもしましょう。
れ・ん・じ……
その牙は
その爪は
もう届かないものと思った。
甘い痛みを蜜のように、いつも与えてくれた。
永く焦がれた
かつて私だけのものだった空。
赫く燃え上がる雲と
舞い上がる熱風の旋律を宿した
あの空に今
私は生まれ帰るのだと
恋次の牙が、爪が、この肌に伝えていた。
私の体から
青い蝶が飛び去ろうとヒラリと舞った、その刹那
恋次は咄嗟のことにも見逃さず
その蝶を片手で捕えて
カシャリとあっけなく潰した。
恋次の手の中からハラハラ堕ちる羽根のカケラを見て
私は
ひんやりと美しかった空に別れを告げた。
Mary Magdaleneの亞兎さんから頂きました!
「空が高すぎる」のルキアバージョンです。
文章と共にイラストまで!
ありがとうございます!!!
幸せです、ありがとうございます…(感涙)
私は亞兎さんのこの世界が大好きなのです。