本当は、その手を離したくはなかった。


 
 あいつの俺を見上げる瞳が、今まで見た事もないくらい不安気で―――いつも傲岸不遜な奴なのに、その時の瞳は小さな子供のようで。
 だから、元気付けるように俺は「やったじゃねえか!」と言った。
 笑いながら「羨ましいぜ」と肩を叩いた。


 あいつにやっと家族が出来ると。
 約束された未来が開けるとわかったから。
 邪魔をしてはいけないと、―――それがあいつの幸せだと思って、だから、俺は。


 
 その瞬間、あいつは驚いたように目を見開いて。
 そのあと、瞳に浮かんだ悲しそうな色を隠すようにすぐに目を伏せ。
 「ありがとう」と呟き、肩に乗せた俺の手をそっと振り解いてその場から去ったあいつが。 


 本当は止めてほしかったのだと、俺に「行くな」と言って欲しかったのだと―――。
 気がついた時には、全てが遅かった。
  

 俺はあいつを行かせてしまったのだ。


 あれから何度考えた事だろう。
 あの時、本当の気持ちを伝えていれば。
 あの時、あいつが心を打ち明けてくれたのなら。
 あの時、あの一言を言う前に、俺があいつの瞳を見ていたのなら。
 


 今この瞬間はなかったはずなのに。

 

 本当はその手を離したくはなかった。
 一人で行かせたくはなかった。
 

 けれども、全ては遅い。
 俺はあの時、あいつを失ってしまった。
 



 けれど、それでも。
 俺があいつを助ける資格がなくても。
 俺が二度と、あいつを取り戻す事が出来なくても。
 それでも―――俺は。



「……ルキアを……ルキアを助けてくれ……!!」


  
 あいつに、此処に、いて欲しい―――。







初めて書いたBLEACH創作です。
はまって、どうにも想いを抑えきれなくなって、で、試しに書いてみました。
手習い、見たいな物です。
なのでストーリーではないですが、書きやすいのはこういうものなので。
で、書いてみて、もっと書きたい!と思ったので、こうしてサイトができました。


ところで。
この話を別のところで読んだ!と言う貴女!!
またお会いできて光栄ですv

実はこれは別サイトで、別名義でアップしていたものです。
そこは他ジャンルのサイトだったのと、諸事情がありまして…ちょっと悲しい事がありまして(笑)
別にBLEACHサイトを立ち上げる事にしました。それがこの「MOON AND THE MEMORIES」です。

これが初めて書いたBLEACHのSSです。
原点ですね(笑)


2004.9.7 (2004.7.17)  司城さくら