「おい、いい加減てめえの足で歩け」
恋次は背中のルキアにそう声をかけると、ルキアは即座に「うるさい」と切って捨てた。
「私がここまで疲労しているのは誰のせいだ、この体力莫迦」
「うっ……」
「もう少し加減というものを覚えろ、莫迦者」
「莫迦莫迦言うな」
「莫迦だから莫迦と言っているのだ。いいから黙って歩け」
二人の頭上には円い月があり、冬の夜の空気は身を切る冷たさがある。
寒いな、という言葉を言い訳のように口にして、ルキアは恋次の背中に身を寄せた。
「そこを左だ」
「あぁ?遠回りじゃねーか」
「私がお前の有り余ってる体力を減らしてやろうと言うのだ。今日みたいな事は御免だからな」
数刻前までの自分を省みて、流石に反省しているのだろう、恋次は表立って反論せずにルキアの言うままに左へ道をとる。
―――本当は。
もう少し一緒にいたいのだ―――そう素直に口に出来ればいいのだろうが、生憎ルキアは素直ではなかった。
ただ、恋次の背中に頬を寄せる。伝わる熱が暖かい。
心が満たされていくのが解る―――自分の居場所はここだと。
身体に残るけだるさと、暖かさと安心感で、自然瞼が重くなる。
幸せな夢が見られそうだった。
えっち後の二人。恋次の家からの帰り道。
恋次は体力有り余ってそうだから、ルキアは大変だ……(笑)
この「空」は夜空で。あ、やっぱり強引?ごめん!