期末テストの勉強会、と称して集まったルキア(と恋次)の家で、恋次が持ってきた「森伊蔵」(レア焼酎)を味わいつつ飲んでいると、井上が「あたしもあたしも―――っ!」と欲しがった。
 その勢いに、言われるままに猪口を差し出すと、井上はぐーっと一気に飲み干して、「ぷはーっ!」(ベタ)と息を吐き出し、
 ばたりと倒れた。
「マ、マジかよっ!?」
 たった猪口一杯で倒れるか、フツー。
 焦る俺の目の前で、井上は突然むくりとゾンビのように起き上がった。
 目が、……据わっている。
「黒崎君」
 つつつ、と俺によって来た井上は、「眠いっ!」と掴みかかってきた。
「一緒に寝よう、黒崎君」
「寝られるかっ!!」
「そ、即答!?酷い、朽木さんとは一緒に寝てたくせに、私とは即答するほど厭なんだ!酷おおいっ!」
「こら、勝手に話を捏造するな!」
 視界の隅で、血相を変えた恋次が一升瓶を持って立ち上がるのが見えて、俺は慌てて「してないしてない」と首を振る。
「こら井上、誤解を解け!」
「いいもん、無理矢理だもん、強硬手段だもん」
 そのままドカッと圧し掛かられて押し倒された。
 胸の辺りに、なんとも言えない柔らかな感触。
 慌てる俺の耳に入るのは、既に夢の世界へと旅立った井上の安らかな息遣い。
「マジかよ……」
 成行上、井上の下敷きになったまま、俺は途方に暮れてもう一度呟いた。