何処にいても、すぐにその姿を見つけてしまうのは…何処にいても無意識にその姿を探しているからか。
 今も。
 あいつの背中を見つけて私は立ち止まる。

 もう言葉をかわさなくなって何十年か。
 あの暖かい日々はもう遠い昔の出来事だ。
 それでもはっきりとした輪郭で、それらは私の中に色褪せる事無く存在している。

 変わらない胸の痛みと、ときめきと。
 
 こんなにもあの姿を求めている。
 あの暖かな毎日を求めている。


 遠ざかる背中を追いかけたい。
 もう一度あの声が聞きたくて。



 ……けれど私は一歩を踏み出せない。



 踵を返した私の身に、冬の冷たい風がぶつかり追い越して行った。








別離中の二人を。
たまにはこんなのもありかな?