「千鶴、熱あるんじゃない?」
「うーん、あたしも何だかそんな予感はしてんのよね」
 朝起きた時から身体がだるかったし、時間が経つにつれ頭も痛くなってきたし。喉も痛いし、風邪決定って気がする。
「熱測ったの?」
「しないわよ、そんな事」
「何で?」
「測って熱あったら学校来る気なくなるでしょ」
「別に休めばいいじゃん。何でそんなに学校来たがるのよ」
 あんたに逢いたいからよ、と心の中で呟いきながら、口では「お勉強が好きなの」と手をひらひらと振ってみせた。
「ふーん」
 と、たつきは全く信じてない声で返事をすると、突然あたしの額に手を当てた。
「…………」
「うわ、すごい熱いよ、あんた」
 おかしい。そんな筈ない。ある訳ない。
 たつきの手があたしのデコに触れただけで、顔が赤くなるなんて事は絶対有り得ない!!
 そうよ、あたしは本匠千鶴よ?百戦連磨の女よ、そのあたしがたかがデコに触れられただけで赤くなる訳ないじゃない、童貞野郎じゃあるまいし!!
「……おかしい。そんな筈ないわよ、もう一度測ってみて」
「いーけど」
 さあ来いたつき。負けないわよ、本匠千鶴の名に掛けて!
 意気込むあたしのデコに、たつきが触れた。
 たつきの、額が。
「うわあ、あつぅっ!!何これ、あんた脳みそ沸騰してんじゃないの!?」
「……負けたわ、たつき……」
「何がよ」
「……今日は帰る……」
「うん、そーした方がいいよ」
 じゃーね、と手を振るたつきにあたしは気弱に笑うとフラフラしながら教室を出た。
 純情な自分にショックを受けながら。









好きな子の前では、流石の千鶴も純情で(笑)