「おっさん、何してんだよ」
 突然かけられた言葉に、茶渡は瞑っていた目を開く。
 青い空を背景に、視界一杯広がっているその少女の顔には見覚えがあった。
「一護の妹」
「何だよそれ」
 途端、一護によく似た風貌の少女は、怒りを満面に湛えて茶渡を睨みつけてきた。その視線は小学生が持つ物にしては、鋭くきつい。
「失礼だぞ、おっさん。あたしは一兄の付属品じゃないぞ。ちゃんと黒崎夏梨って名前がある」
「ああ、……すまない」
 素直に謝る茶渡に、「で、何してんだよおっさん?」と夏梨は再び問いかける。
「俺の名前は茶渡泰寅だが……」
「ん、知ってるよ。一兄がよく話してる。チャドって呼ばれてるだろ?おっさん」
 どうあっても「おっさん」と呼ぶつもりらしい夏梨に、茶渡はそれ以上追及することなく「まあこの子から見れば俺は『おっさん』だしな」と納得して、「一護を待っている」と答えた。
「ふーん、一兄とか」
 夏梨はそう呟くと、「じゃ、あたしは帰るわ」とくるりと背中を向けた。
「一護に会わなくていいのか?」
「どーせ家帰ったら会うんだし。あんたと一緒にいるところ見られたら、一兄にあんたと知り合ったきっかけを話さなきゃならなくなりそーだし。だからいーや」
 肩を竦めて夏梨は肩越しにひらひらと手を振る。
「じゃあな、おっさん」
「ああ、……黒崎……夏梨」
 どう呼んでいいか解らずに、フルネームで呼んだ茶渡の声を背中に聞いて、夏梨は一瞬呆れた顔をして振り向いた。
 そこに困惑した顔の茶渡を見て、思わず夏梨は笑い出す。
「ま、いいか」
 けらけらと笑いながら、夏梨は家へと向かって走っていった。







茶渡と夏梨、好きなんです。
茶渡ってどんな事も受け止めてくれそうじゃないですか?
夏梨もどーんと受け止めて欲しい。