突然、それは現れた。
 思いがけなく、唐突に。―――けれどそれは酷く彼女に似つかわしい。
 いつも、そうだ。彼女は突然に、気紛れに行動する。
 そう、あの時も。
 突然姿を消したあの時。
 ―――100年前の、あの時も。
 あの時からずっと、私はこの瞬間を待っていた。


 その褐色の肌、猫科の獣を思わせるしなやかな身体を一目見ただけで、私の心が身体が熱くなる。
 100年の間、ずっと求めて焦がれて捜し求めていた存在が―――今。
 私の目の前に、在る。


 これを歓喜と言わず何と言おう。
 全身が悦びの声を上げる。瞳は一瞬たりともその姿を逃さない。
 ああ、と私は吐息を溢す。
 やっと、やっと逢えた。
 この瞬間を待っていた。


 天を裏切り、地を裏切り、家系を裏切り、仕事を裏切り、任務を裏切り、責任を裏切り、同胞を裏切り、部下を裏切り、友を裏切り、信頼を裏切り、愛情を裏切り、友情を裏切り、想いを裏切り、願いを裏切り、夢を裏切り、言葉を裏切り、


 私を裏切った。

 
 全てを裏切り選び取ったのがあの男。
 許す事が出来るはずもない―――あんなに自由だった貴女が、何か一つに囚われる事など。
 それは既に貴女ではなく、存在すら唾棄すべき醜悪なシロモノ。


 お前を壊して崩して倒して辱めて―――殺して滅ぼす。
 その瞬間の為に生きてきた。


 身体と心が昂揚する。
 激しい愛にも似たこの憎悪。

 
 許さない、許せない、
 二度とあの男の元へは還さない。





「行くぞ――――夜一!」




 壊して崩して倒して―――殺して。
 貴女を私のものにする。


 それが、私の100年の―――貴女への想い。








最近すっかり夜砕な私。いや浦原さんも夜一さんのお相手に相応しいのですが。
夜一さんは両刀使いなんだよ…!(笑)

このSSを拍手で上げてた時、他に「達者でな」と「ヘソで茶ァ沸かすわ!」を同時にアップしていて、このシリアスさが明らかに笑えますね。ぜひセットでお読みください(笑)