探していた長身の影を見つけて、あたしは駆け寄ろうとして―――その前に立つ別の影に気付いて足を止めた。
剣ちゃんの前に立っていたのは、四番隊、卯ノ花隊長。その卯ノ花隊長が、剣ちゃんを見上げながら何かを言っている。剣ちゃんは黙って聞いていて―――最後、何か言葉を発した。卯ノ花隊長はそれを聞いて、笑って。
あたしはそこで後を見ずに、元いた場所へと駆け戻った。
見たくなかったから。
剣ちゃんと女の人が、仲良くしてる所なんて見たくない。
どうしてあたしは子供なんだろう?
どうしてあたしは剣ちゃんと吊り合う年齢じゃないんだろう。
もうあたしは子供じゃない、だってたった一つの、何より大事な自分よりも大切なものを見つけたから。
この激しい想いは、決して子供が持つものじゃない。
それなのに、心に反して身体は幼い子供のままで。
剣ちゃんが何より大事。
あたしよりも、この世の中の何よりも。
あの、血の色しか存在しない世界の中から、あたしを救い上げてくれた人。
その時からあたしの心総てを占める人。
貴方はあたしの世界そのもの。
なら―――あたしは貴方の、何だろう?
大人になりたい。
貴方に吊り合う大人になりたい。
貴方の横に、共に歩いていける女になりたい。
「何してんだ」
ちりんちりんと鈴の音。
低い声、あたしの頭に乗せられた大きな手。
振り返れば、そこに。
大好きな、大切なあたしの「世界」。
「剣ちゃんを待ってたんだよ」
今はまだ追いかけることが出来ないから。
待っている事しか出来ないから。
答えたあたしに、「悪かったな」と返して。
剣ちゃんはいつものようにあたしの前を歩く。
届かない気がして、追いつけない気がして、あたしは一瞬目を閉じる。
はやく、はやく。
大人になって、貴方を捕まえたい……。
:冒頭の、やちるが見た剣八と卯ノ花隊長は、十一番隊の隊員が中央救護室に入院した時、暇で暴れて施設の備品を壊した事で剣八が卯ノ花さんに笑顔で怒られている所です。
「……後で請求書回しますから」
「いや、俺ん所も予算なくてよ、何とかならねーか?そっちで」
「うふふ、なりませんわv」
こんな場面を見て嫉妬してしまったやちる。
心配するような艶っぽい事実は何もないのです。
がんばれやちる!