『諦めるな』

 それがルキアの口癖だった。

『諦めたらそこが“終わり”だ。だから、絶対に諦めるな。最後の最後、限界の限界、果ての果てまで、意識のある限り生命のある限り絶対に』

 それを聞いた時、俺は強い奴だと思った。この最低の世界、最低の大人しかいないこの戌吊で、子供の身でそう言い切れる強さに目を見張った。

 けれどそれは誤解だと今なら解る。

 ルキアは怖かったのだ。
 直ぐにも崩れそうになる心を、自らの言葉で叱咤していた。
 共に暮らす子供達を励まし、支えながら。
 自分の弱さを見せず、心の弱さを見せず、前を見据え、後ろを振り向かず。

『諦めるな』

 ルキアは自分に言い聞かす。

『まだ終わりじゃない、終わりになんかさせない』

 何度も何度も。

 



 だから、俺も諦めない。
 
 幾度血を流しても、
 何度倒れようと、
 意識がなくなろうと生命が絶たれようと、
 決して俺は諦めない。




 もう一度、お前の手を取るために。
 もう一度、お前の笑顔を見るために。
 ―――もう二度と、お前を離さないように。



 




恋次に言って欲しかった言葉です。
決して諦めない。
必ずルキアを取り戻すと、そう信じて突き進んで欲しいです。