こんな筈じゃあなかった。
俺の未来予想図(笑)ではこんな予定はなかったのだが。
現実には、ルキアと俺は離ればなれ。この真央霊術院は課題が多すぎて、放課後に会うことも出来ず、男子寮はそうでもないが女子寮の門限は厳しく、夜に会うこともままならない。
 つまり、ルキアと居る時間が圧倒的に減ってしまった。
…ここに来た事は失敗だったか。
 俺はいじけて夜空を見上げた。空には満点の星、最高のロケーション。
 横にルキアがいれば。
 ルキア、ルキア。俺のスウィートハート。俺が夜空に浮かぶ小船なら、お前は遠く眠る夜明けの光。おーまいらああああぶ。
「何を歌っているのだ」
 ほらみろ、幻聴まで聞こえてきた。
「というか、歌とは思えない代物だな、今のは……」
 星空が影って視界一杯にルキアが広がった。
 ……本物だ!
「ルキア!」
「何だ?」
 俺の驚きにルキアも吃驚したのか、目を見開いて俺を見ている。
「どうしてここに?」
「男子寮に行ったら、お前はここだと胃の弱そうな者が教えてくれた」
 ……イヅルだな、そりゃ。
「どうしたよ?何か用か?」
「用が無いと会いに来てはいけないのか?」
 少し怒ったような声でルキアはそう言うと、俺の隣に腰を下ろした。
「いや別にそんな事は」
「しばらく会っていなかったからな」
 ……つまり。
 俺に会いたかったと。用は無いけど。
 ………。
 空には満点の星。隣にはルキア。
 最高のシチュエーション。
 エンジン絶好調。
「る、るきあっっ」
 がばあっ!と押し倒した俺の目の前に色とりどりの星が舞った。赤、青、黄色。
「だから何故お前はそうなのだ、莫迦者っ!」
 思いっきり頬を張り飛ばされた俺は、お星様に取り囲まれている。痛ぇ。
「もうちょっと物を考えろ、阿呆!」
「も、物……?」
 薄れゆく意識の中、「ムードを考えろと言っているのだ、莫迦者」と呟くルキアの声を聞いたような聞いていないような。
 まあとりあえず。
 俺が気付くまでルキアは横にいてくれるだろう。
 目が覚めたらルキアが横にいる。
 それは俺にとって最高の目覚めだ。
 ……頬は痛いけど。
 次は怒られないよう、もう少し勉強してみよう。