私には妙なクセがあって 思いなやんでいるというのでもなくもちろん元気ハツラツといったような境地とはほど遠いような気持で昼の日中からほの暗い酒場のカウンターに坐りこんでウイスキーを飲み じっとしているようなことがたびたびある。
物静かな空間のなかでさんさんとした太陽の輝きと 人のうごきを空白の時間の中で物憂く思い出しているのがたまらなくたのしいのだ。
こんなときふと何か自分の好みの言葉を思いだしてくるのだがこの頃ではいつか チャンドラーの「人間強くなければ生きられない。やさしくなければ生きる資格がない」―――というようなことになってしまった。
いつこの言葉が刻みこまれたのか記憶はないし なんの脈絡もなくこのような言葉が思い出されてくる。年の故なのかもしれないが この頃はとみにやさしさが好まれるようだ。