大昔の新聞小説の一部分です

 朝日新聞「人間復活」 1948年7月12日
 「人間復活」 1949年1月20日発行 実業之日本社 150円
 朝日新聞「光る海」 1960年頃


人間復活

人間復活

人間復活

 いずれも古い話ですが、新聞小説に登場し、しかも挿画に描かれたルパンを御紹介します。
 一つは、1948年7月〜10月に朝日新聞に連載された、船山馨・作「人間復活」の何と第1回に登場します。
 この小説はまた曰くがあって、太宰治の「グッド・バイ」が自殺で中断し未完となってしまったため、 急遽予定が繰り上がって起用されたものです。 タイトルが太宰治の「人間失格」と対をなすようなのは、そんな理由からでしょうか。 この挿絵に描かれているスタンドを見れば、まさしくこの場面がルパンと判りますし、 この場面のバーは「グロスター」と言って、この名前は店名を「ルパン」に決める前に候補だった名前なのです。
 本作は、1949年に単行本として実業之日本社から出版されました。 当時の世相を覗わせるひどい紙質の本ですが、反って少ない情報に飢えていた時代を思い出させてくれるようです。

光る海

光る海
※挿絵部分拡大
 もう一つは、石坂洋次郎が1960年頃、朝日新聞に連載した「光る海」です。 石坂は、終戦間もない1950年代には「青い山脈」や「若い人」でブームを引き起こし、「百万人の作家」と呼ばれるほどになりましたが、 この作品は「陽のあたる坂道」や「あいつと私」と並んで、その次の時代に創作された作品です。 この3作品は総て日活映画で映画化されました。「光る海」は1963年に映画化され、主演は吉永小百合でした。
 新聞連載の第137回で、主人公の石田美枝子(映画では吉永小百合)が、銀座でバーを開いている母親の雪子(同・高峰三枝子)を訪ねます。 この回、挿絵として描かれているのがまさにルパンなのです。 店の主人の名前もルパンと同じ「雪子」ですし、はっきりした話としては残っていませんが、 多分、石坂洋次郎氏も何度かルパンに足を運ばれたのだと思います。