「歴史に刻まれた名写真」第1回、ルパンでの太宰治が紹介されました

 「Hallo! フォト・ラバーズ」  2012年10月4日放映 BS朝日


 2012年秋から始まったBS朝日の新番組「Hallo!フォトラバーズ」は、プロのカメラマンと写真大好きのアマチュアが、一緒に街を巡り写真を撮り歩く、と言う番組です。
 その第1回に登場したのは、写真家・立木義浩さんと女優・新垣結衣さん。2人は東京スカイツリーとその周辺の押上や曳舟地区を撮影して廻ります。

 番組の途中にブレイクタイムとして、「歴史に刻まれた名写真」と言うコーナーがあります。この第1回では、林忠彦氏がルパンで撮影した太宰治の写真が紹介されました。

 
 お散歩写真はまだまだ続きますが、ここでちょっとブレイク。後世に残る一枚、その誕生にまつわるエピソードを御紹介しましょう。
今日の一枚は、1946年に撮影されたこちらの写真……
 「人間失格」や「斜陽」など、戦中戦後に多くの名作を生み出した作家・太宰治、そんな彼の素顔を写したポートレートです。
 39歳の若さで亡くなった太宰治、その死の2年前に撮影されたこの写真には、太宰が寛いだ姿が捉えられています。
 この写真が産み落とされたのは、東京・銀座にあるバー「ルパン」……
 昭和初期から、多くの文人たちが集う文壇バーとして賑わった場所でした。
 当時の様子を伝え聞いた、バーテンダーの開幾夫さんにお話しを伺いました。
− この席で胡坐をかくようにしてお飲みになっていた所が撮影されたのです。



 撮影したのは作家たちのポートレートで名を馳せた写真家・林忠彦。
− 林さんはここを事務所代わりにお使いになっていたそうです。この写真の撮影の時には面識が無かったようですが、太宰さんから「俺も撮れ!」と声を掛けられた。誰だ?と周りの人に訊いたら、最近売れ出した太宰治さんだというので撮ったそうです。
 いつものようにフラリと現われた林忠彦は、当時の人気作家・織田作之助にカメラを向け、シャッターを切ります。
 そこに声を掛けてきたのが、同席して織田と酒を酌み交わしていた太宰治、「俺も撮ってくれ」。
 そのチャンスを逃さなかった林は、太宰がスツールの上で胡坐をかく姿が撮りたくて、後ろに下がり、当時は突き当たりにあった洗面所の扉を開け、便器を跨ぎながら写したと言います
 今から66年前の運命的な出会い、こうして記憶に刻まれる名写真が誕生したのです。
 東京スカイツリー周辺を見て・撮って・歩き終えた立木さんと新垣さん、近くの曳舟にある「下町人情キラキラ橘商店街」へ脚を延ばし、ホッと一息入れました。
 これがお二人の今日の成果です。傑作が一杯撮れたようですね。