「太宰治と田中英光展」が開幕しました

 「太宰治と田中英光展」 2011年11月26日〜2012年1月15日 高知県立文学館 500円(高校生以下無料)


太宰治と田中英光展

太宰治と田中英光展

太宰治と田中英光展

太宰治と田中英光展

太宰治と田中英光展

 先月御案内しました「太宰治と田中英光展」が高知県立文学館で無事開幕となった御様子で、 学芸員の永橋禎子さんが、展示の様子をお知らせ下さいました。


 先日は、写真撮影と使用の許可を頂きましてありがとうございました。 お陰様で無事「太宰治と田中英光展」を開幕することができました。
 撮影した写真を使用したパネルと、その風景を写したものをお送り致します。 またフォトコーナーの横に、バー・ルパンの紹介文をパネルにして設置しましたので、 そちらも御覧下さればと存じます。 フォトコーナーでは、ジャズを流して雰囲気を出すようにしております。 お客様にも職員にも好評です。
 ルパンで過ごした時間は、本当に素敵なものでした。 また近くを訪れる機会がありましたら、ぜひ立ち寄りたいと思っております。
 お店の皆様にもどうぞよろしくお伝え下さい。

高知県立文学館
永橋禎子


 このお手紙のように、ルパンの店内のカウンター前の写真が大きなパネルになって入口付近に飾られました。 その前で太宰治が愛用したようなトンビを着て、来館者が写真を撮影されたようです。
文士の時代

林忠彦写真全集


<展示リスト>
太宰治と田中英光展

太宰治と田中英光展

太宰治と田中英光展

太宰治と田中英光展

太宰治と田中英光展

太宰治と田中英光展

 この展覧会の主役は、両親の故郷が高知である作家・田中英光ですが、この方も林忠彦撮影の写真が残っています。 太宰治の弟子と言われていますが、師匠に比べると一般には余り知られておりませんので、林忠彦が書いた撮影時の逸話を御紹介します。


 僕は田中英光という作家を知らなかった。まったく知らないで撮るわけにはいかないから調べてみると、太宰治の弟子で、二メートル近い大男で、第十回ロサンゼルス五輪の ボート選手だったという。最近はかなり薬の中毒にやられているともいう。
 会ってみると、たしかに大男だったが、どこか純情な笑顔が印象的だった。
「太宰さんと同じルパンの椅子で撮ってくださいよ」
 僕はどうしても気がすすまない。すでに太宰も織田作も「ルパン」のカウンターで撮ったあと次々に亡くなっていた。「いや、僕はもう作家を酒場で撮りたくないんですよ 。縁起がわるいからかんべんしてほしい」。
 と、断ったが、田中英光は思いつめたように「じゃあ、ルパンでなくてもいいから、とにかく太宰さんのようにカウンターで飲んでるところを撮ってほしい」ときかなかった。しかたなく、新橋の鳥森あたりの、「ルパン」にちょっと似ているスタンドバーを探してきて、そこで撮った。
 太宰治のように足は組まなかったが、同じ向きにして撮ったら、「あっ、これでもういつ死んでもいいや」といって、目の前の酒は一滴も飲まず、ポケットからなんかの薬瓶をひょいと出して、その瓶の半分ぐらいの粒をコップの水の中にどさっと入れて一気にあおった。僕はぎくりとした。やがて、へべれけになって、口調もしどろもどろになり、「ああ、もういつ死んでもいいや」と呟いていた。太宰の墓前で自殺したのは、それからまもなくだった。