放映されました

 「太田和彦のバーのある街へ #14 東京銀座の老舗と世界的カクテル」 旅チャンネル 2010年10月7日(木) 午後10時放映


太田和彦のバーのある街へ

 太田和彦さんは昨2009年、銀座のバーを網羅した「愉楽の銀座酒場」という本を文藝春秋社から出版され、 更に同様の趣旨の特集が、文藝春秋の2009年8月号に「愉楽の銀座バー」というタイトルで掲載されました。 その両方でルパンのことを取上げて下さいました。
 放映は10月7日を皮切りに何回か行われました。御覧になりましたでしょうか?

→「愉楽の銀座酒場」はコチラからどうぞ。
→「愉楽の銀座バー」はコチラからどうぞ。


太田和彦のバーのある街へ

「太田和彦です。バーのある街へ、今週来週にわたって東京、銀座のバーを歩きます。 今立っているのは数寄屋橋公園ですね。この左右に走っているのは東西の晴海通り。 銀座晴海通りを挟んで向こうの一丁目から四丁目。 こちら側の五丁目から八丁目までに大きく分かれますけれども、今日は五丁目から八丁目の方をを歩いてみましょう」
太田和彦のバーのある街へ

太田和彦のバーのある街へ

太田和彦のバーのある街へ

「銀座といえばバーの街ですね。一説には世界一のバーの街、一丁目から八丁目まで200ではきかないんじゃないかな……。 古い店、新しい店がぎっしりあります。 その中から数軒を選ぶのは本当に辛いところでした。 今日はその中でも代表的なお店に行ってみましょう」
太田和彦のバーのある街へ

「2軒目はお馴染み赤い看板、怪盗アルセーヌ・ルパンのルパンです」
太田和彦のバーのある街へ

太田和彦のバーのある街へ

「なんともそっけない扉ですが、バーの入口というのはこういうもの」
太田和彦のバーのある街へ

「どうも」
「いらっしゃいませ」
「今年の夏は本当に長くて暑くて」
「そうですね」
「ここは地下だからちょっとひんやりして」
「そうですね。入ってくると結構ひんやりしていますね」
「えっとね、暑気払いだからモスコミュールを」
「はい、わかりました」
太田和彦のバーのある街へ

「ここが銀座のバー好きで知らぬ者は誰もないルパンですね。開店はなんと……昭和3年か」
「はい、そうです」
「昭和3年ということは80年……」
「82年目に」
太田和彦のバーのある街へ

「82年目になる。まさに老舗中の老舗ですね。 やっぱり古い店だけあって、例えば漆喰の壁のこういう細工なんかは今はなかなか出来ないし。 出来たとしてもこれだけの色合いになってくるには時間がかからなければ出来ないから、ここのバーは本当に貴重ですね。」
太田和彦のバーのある街へ

「どうぞ」
「夏の暑気払いモスコミュール」
太田和彦のバーのある街へ

「…………あぁ美味しい。今年はモスコミュールよく出たんじゃないんですか?」
「良く出ます」
「冷たいし」
「皆さん5、6人でいらして全員モスコミュール」
「生姜をもっと入れろとか」
「そうですね。スーパーハードって」
太田和彦のバーのある街へ

「ここのバーを有名にしたのは、林忠彦の撮った太宰治のあの写真ですよね」
「そうです」
太田和彦のバーのある街へ

太田和彦のバーのある街へ

「太宰と……安吾と織田作之助の3人ですね。 特に太宰の写真が有名だけど、あそこに座りたがる人もいるんじゃないんですか」
「結構いらしゃいます」
「太宰ファン多いものね」
「お客様がいらっしゃらない時は、座って同じポーズで、同じ角度から写真を撮られる方もいらっしゃいますね」
「やりたがる人もいるんだ。靴をあげて」
「そうですね」
太田和彦のバーのある街へ

太田和彦のバーのある街へ

「この間知ったんだけれども、この絵はフジタの絵なんだって?」
「はい、藤田嗣治さんの絵で。 昭和4年に9月くらいに日本に一時帰国なさった時にいらした」
「ふーん。開店してすぐですよね」
「そうですね。次の年になりますね」
「カウンターの絵みたいだけれども、ここで描いたとか?」
「ええ。その当時はまだカウンターが無くてテーブル席で。昔のカフェ……」
「カフェの時代、そっかそっか」
「それで自分の周りを描いて、そのまま置いてらっしゃった」
「置いていった。へぇ……」
「はい」
太田和彦のバーのある街へ

「古いお客さんも多いんでしょ?」
「そうですね。最近は皆さんネットとかホームページとか調べていらっしゃるんで、若い方多いですね」
「若い人、来るようになった?」
「メニューとか入っていますので、ある程度の予算がつきますのでね」
「ふーん……。昔はルパンなんて敷居が高くって、なかなか若造では入りにくくって。 そういうのも僕はいいもんだと思うんだけどね」
「年配の方は結構そういうことおっしゃいますね。昔は来れなかった。 やっと来れました、ということはおっしゃっていますね」
「お金が無くて来れないんじゃなくて、あったにしても、そこの席に座って様になるかどうかという、こちら側の人の問題でね」
「そうですね」
太田和彦のバーのある街へ

「こういうシャンデリアというのかな。こういう古い物はやっぱり良いですね」
「結構創業当時から使っている物がありますね」
「へぇ……。もう1杯作ってもらおうかな」
「はい」
「僕は初めて飲むと思うんだけれど、坂口安吾が好んだというゴールデンフィズ」
「はい、わかりました」
太田和彦のバーのある街へ

「ゴールデンフィズということは黄身ですよね、卵の」
「そうです。ジンフィズに卵の黄身が入ったものですね」
「白身だとシルバーフィズ、黄身だとゴールデンフィズ」
「そうです。で全卵だとロイヤルフィズ」
「全卵だとロイヤルフィズ。あぁそうなんだ。……基本はジンフィズ」
「そうです、ジンフィズです」
太田和彦のバーのある街へ

「最近また良い卵が出回っていますんでね」
「あぁそうですか」
「ええ。以前はブロイラーの卵ばかりだったので、ちょっとそれで廃れてきたということですね」
太田和彦のバーのある街へ

「はい、どうぞ」
「作家坂口安吾が好んだというゴールデンフィズ」
太田和彦のバーのある街へ

「思ったほど卵卵してないですね」
「そうですね。黙っていると卵が入っているというのが分からないですね」
「色はわずかに黄色くなって」
「ミルクシェーキですね」
「ミルクシェーキね。…………少し元気が回復するかも」
太田和彦のバーのある街へ

「まぁたまたま安吾さんが疲れてみえて、これをお出ししたら気に入って。 その日4、5杯飲んでお帰りになったと」
「これを4、5杯飲んだの?」
「ええ、らしいです」
「それはちょっと飲み過ぎ」
「まぁ……これを作って出した先代のマスターからお聞きしたんですけど。 お飲みになったのはその日1日だけらしいんですけど。 それ以来いつの間にか好んで飲んでいらっしゃったと。 まぁ気に入ってはいらっしゃったらしいですね」
太田和彦のバーのある街へ

太田和彦のバーのある街へ

太田和彦のバーのある街へ

「2軒目のルパンでした。このルパンは昭和3年の開店といいますから、80年ですか。 昔ながらの銀座のバーの風格を残している。 銀座のバーの歴史というのは日本のバーのメインストリームと言っていいと思うんですけれども、 数々の文士、著名人が座った席と同じ所で同じカクテルを飲める。 これまた銀座の奥深いところですね。 来週もお楽しみに」