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ルパンには、有名なレオナール藤田嗣治のスケッチが飾られています。
1929(昭和4)年にパリから帰国した際に、ルパンに立ち寄られ、目の前のテーブルの情景を描かれたものです。
今でも使われているショットグラスやタンブラーの姿があります。
この絵のことを美術ライターの水上睦男さんがお知りになり、
「月刊美術」誌の2010年9月号で「銀座、絵のある名店」という特集をするので是非掲載したい、というお申出を頂きました。
水上さんのお話をいろいろ伺って、フジタが描いたルパンの主人・高崎雪子と、同じく東郷青児が描いたものも
併せて掲載して頂くことになりました。
これらの3点の絵は、いずれも色紙用の紙に描かれたもので、美術的な価値があるとは思えませんが、
画壇の巨匠がルパンにお出でになった間違いない印として大切にして参ります。
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(左)フジタが描いた高崎雪子、(右)東郷が描いた高崎雪子
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水上さんから「月刊美術」2009年1月号を頂戴しました。
この号の中で、水上さんは「作家たちと歩く画廊街&イチ押しアートスポット」という記事を書かれておられます。
この中の「銀座5〜8丁目」の部分で、ルパンに触れて下さいました。この時既にフジタの絵も東郷の絵も御覧になっていたのですね。
以下、その全文を御紹介いたします。
バーと稲荷と裏路地の風景
バーの話をついでに。文藝春秋画廊の横手から路地を入り右手の扉。
ここは老舗のバー、ルパンの入り口だ。宮崎次郎さんや中堀慎次さんといった画家たちのお薦めスポットでもある。
扉を開けて目の前の階段を下り、1935(昭和10)年来のヤチダモ製のカウンターに座ったとたんに昭和の香りに包まれる。
壁にはこの店で描いたという藤田嗣治の素描が飾られて、1929(昭和4)年のサインがある。
そしてカウンターに置かれた一枚の葉書。東郷青児の描いた開店以来の主人、故・高崎雪子さんの似顔絵を元にした年末の挨拶状だ。
その文面は「歳末の御挨拶を申し上げます。ちと、お出かけくださいまし」。
古き良き時代のエスプリがにじむひとこと。昭和初期の山の手婦人の言葉遣いなのだろうか。
古ければ何でも良いわけではない。良いものは古くなっても良いというだけのこと。
そして良いものは大切にしたい。ましてや乱暴なこの時代の荒波に、得てして良貨は駆逐されがちだから……。
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